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『情報未来』

当社の研究、コンサルティング、事例から厳選された、お客様の問題解決に役立つ情報誌です。

No.45(2014年12月号)

特集1:スマート時代の新しい社会づくり

オープンデータによる新たなサービス創出は
スマートシティ・スマートコミュニティで加速する

實方 裕真
實方 裕真
NTTデータ経営研究所 社会システムコンサルティング部門 社会・環境戦略コンサルティングユニット シニアコンサルタント

じつかた ひろみち
環境・エネルギー分野において行政、企業等のマネジメントの枠組づくりに取組む。2007〜2009年には、官民交流により中央省庁においてGIS(電子地図)政策に携わる。近年は、ICTを活用したオープンデータ、オープンイノベーション、スマートシティ、スマートコミュニティの推進等に従事。2002年4月より現職。

オープンデータはまちづくりの新しいプラットフォーム(基盤)となる

 「オープンデータ」とは、行政などの公的なサービスを提供している団体で取扱われる公益性の高い情報(データ)を、インターネットを通じて広く公表し、また提供する取組である。民間の創意工夫により、地域のニーズ等に応じて情報を自由に活用することが促されている。公開して問題となりうるプライバシーに関する情報等は、注意深く除かれて取扱われていることは言うまでもない。公益性の高い情報であることから、通常、創作者に認められている著作権の不行使があらかじめ宣言される。誰でもが安心して商用を含め二次利用することが可能となっている。

 オープンデータには、さまざまな情報(データ)が該当しうる。例を挙げれば、電子地図上(GIS)で表示・編集できる病院や学校の場所に関する情報(ポイントデータ等)などが分かりやすいだろう。単なる情報に過ぎないとはいえ、例えば、公道や公園、あるいは公的な図書館と同じように、誰もが利用でき、その便益を享受可能な「公共財」とも捉えることができる。

 従前から人口などの統計情報については広くインターネット上でも公表されているところであった。近年では、より他分野にわたり、かつユーザー本位の利便性の高い情報の提供が行われ始めている(図表1)。

 オープンデータを用いた具体的なサービスとしては、例えば、インターネット上のアプリケーションを通じて、図書館で現在借りることが可能な本の情報を全国的に網羅し、どの図書館で借りることができるかを瞬時に検索することができるものなどがある(図表2)。ここでオープンデータは、機械的な処理をされることを前提に、全国で6000カ所以上の図書館から公開されている。API(アプリケーション プログラミング インターフェース)を共通化することにより、誰でもが各図書館のデータベースにアクセスして、リアルタイムにデータを利用することが可能だ。

 この「オープンデータ」というキーワードは、もともと米国で始まった「オープンガバメント」において、行政情報を積極的に公開する取組の中で使われてきた。近年、マーケティング分野などで注目されるようになった「ビッグデータ」とも並行して、さまざまな取組が進められている。今後例えば、エネルギーに配慮したスマートシティ・スマートコミュニティにおいて、電力・エネルギーの需給のリアルタイムな把握に応用される可能性がある。エネルギーを賢く生み出し、賢く使うことを促す取組の中で、オープンデータは重要な要素になる。エネルギー需給に大きく関連する気象、気温、湿度、CO2排出などは、既にリアルタイムでのモニタリングが始まっている。これらを有効に組合わせ、まち全体で共有することに成功すれば、地域ごとに最適なエネルギーの需要と供給をマネジメントできるだろう。

図表1:オープンデータ活用の進展

オープンデータ活用の進展

出所:NTTデータ経営研究所にて作成

図表2:国内最大の図書館検索サービス「カーリル」

国内最大の図書館検索サービス「カーリル」

出所:カーリルHP http://calil.jp/

データは公表し二次利用を促すことでその価値を高める

 オープンデータは、提供の形態や使われ方により、図表3のように分類して捉えることができる。近年では、ユーザーとのリアルタイムなインタラクション(相互作用)を前提としたダイナミック(動的)なデータ配信が始まっている。ユーザーごとの要求に応じて適切なデータを適切に加工して表示させるといった活用のされ方だ。一方、情報自体はスタティック(静的)だとしても、例えば行政として、基礎的な統計情報の提供を充実させることや、各種施策の効果等の分析・シミュレーション結果を定期的に公表することなどは依然として重要だ。なお、オープンデータの提供主体は、行政に限らず、電力会社や鉄道事業者など公共的な役割を果たす民間企業にも広がっている。

 情報は誰もが知るところになることで陳腐化し、その価値をなくす種類のものがある。その一方、誰もが知ることでむしろ日常生活上の不可欠のプラットフォーム(基盤)となり、よりその価値を高めていく種類のものがある。オープンデータの取組は、情報の後者の性質に立脚している。

 オープンデータが先述した「公共財」として体系的に利用可能になることで、例えば、その時の天気、自動車や鉄道など交通の流れ、災害や事故の発生状況、大気汚染の状況、河や海の状況、騒音、CO2排出量などが適切に把握できる。さまざまな事象のリアルタイムなモニタリングを通じて、都市や地域の現状が把握しやすくなるのだ。生活者は、こうしたプラットフォームを利用することで、これまで以上に生活上のさまざまな判断を容易に行うことができるようになる。現在、同種の取組は既に一定程度開始されており、今後、このオープンデータ活用の流れは止めることができない。

図表3:オープンデータの類型

オープンデータの類型

出所:NTTデータ経営研究所にて作成

さまざまな切り口で都市・地域の今が見えてくる

 オープンデータの取組は、各国において、国、地方などさまざまなレベルで進められている。特に都市・地域レベルの取組がその効果の点で分かりやすい。地方自治体が地域住民と連携する形で、少しずつデータの提供範囲や提供形態を拡張し、効果をあげている。

 一例として、アメリカのボストン市では、「Citizens Connect: Making Boston Beautiful(市民をつなぐ:美しいボストンへ)」というサービスがある(図表4)。

 これは、市民にスマートフォンでも使えるアプリを配布し、まちの「目や耳」になってもらうことを促す取組だ。道路にできた穴、雨による洪水の発生、ごみの不法投棄、違法駐車…。まちで起こるさまざまな問題をアプリ上で報告してもらい、地図上でもそれを表示させる。これにより行政等の迅速な対応を促すとともにTwitterでも拡散して広く市民同士で問題を共有することができる。

 市民自らによる手軽な活動を通じて、自発的かつ低コストでまちの問題が共有される。このサービスを通じて注意が喚起され、例えば道路の補修工事の間は迂回路が選択されるなど、未然にトラブルが回避される。ボストン市のCIOは、「このサービスにより、市民と行政との間の低コストで効果的なコミュニケーション・チャネルが構築された」としている。仕組みはシンプルであるが、とても分かりやすく、かつ強力なオープンデータの取組だ。

 ここ数年でインターネット、スマートフォン等のICTが広く一般市民にも普及した。そのことで、ハード整備が中心だったまちづくりのあり方にも大きな変化が生じている。オープンデータを公共財の一つとして位置付けることにより、リアルタイムにまちの問題が共有されるプラットフォームが備わる。まちの問題が早期に共有され、適切な主体により解決される。そして、より快適で安心できる生活が享受される。オープンデータを使ったスマートなまちづくり。市民が共有すべき状況をオープンに見渡すことができる賢いまち。まちづくりは新しい局面に入った。

図表4:ボストン市 Citizens Connect 画面イメージ

ボストン市 Citizens Connect 画面イメージ

出所:ボストン市HP http://www.cityofboston.gov/doit/apps/citizensconnect.asp