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(「環境新聞」2013年10月30日より)

リサイクルビジネス進化論(5)
「廃プラスチックリサイクル」進化の方向性

是非や妥当性問われる試金石

株式会社NTTデータ経営研究所
社会・環境戦略コンサルティング本部
シニアマネージャー 林 孝昌

 廃プラスチックほど、そのリサイクルの是非や手法の妥当性が議論になる素材はない。化石燃料由来であることに加え、特にペットボトルやPSトレイなど単一樹脂の製品が、「もったいない精神」に訴えることも要因であろう。ただし、現実には単一樹脂のまま流通する品目は限られており、汎用プラスチックやエンジニアリングなど、再生可能な熱可塑性樹脂に限っても、直感的な分別排出に頼って高度な再生を行うことは困難な素材なのである。

一方、廃プラスチックほど多彩なリサイクル手法が実用化された素材も他にない。破砕・洗浄・押し出し成型による原料化、化学分解によるモノマー化、RPFを含む燃料化などを通じて、有効利用率は排出量の8割弱に至り、技術的な差別化要素はほぼ枯渇したとも言える。今後の進化の方向性は、コストメリット創出を軸に据えつつ、既存技術の組み合わせにより、回収・リサイクルシステムを高度化することにある。

高度化を見据えた「原料利用」の目玉が、水平リサイクルである。その前提は製品の設計段階から流通・廃棄・回収・再生のライフサイクルを制御することにある。したがってメーカ主導の拡大生産者責任の裏打ちが必要となり、リサイクラーとの連携や指導も不可欠となるため、メーカ自社が出資した子会社などでのクローズドループが理想となる。設計段階の情報はそのまま各社の技術やノウハウに直結することから、メーカ間の情報共有の範囲は限定される。家電製品のようにプラスチック部品の表示に係る業界標準を作っても、PP、PS、ABSなど材質単位が限界であり、添加剤の含有状況といった詳細なスペックまで開示・共有されることはあり得ない。完全な水平リサイクルの普及は困難であり、実質的なカスケード利用となる材質単位で、自社製品向け利用または国内市場での再生利用拡大を目指すことが現実解となる。

次に、高度化が急がれるのが「燃料利用」である。廃棄物の発熱量低下を理由に、「分けずに燃やせ」との主張は暴論に過ぎない。発熱量の調整は安定焼却や発電の必要条件であり、RPFなりフラフなり、品位を安定化させることが有効利用の前提となる。石炭並みの発熱量を目安に、塩素分の混入をできるだけ減らしつつ、安価で安定的な燃料供給を行う体制の構築は、エネルギー対策としても重要な課題に位置付けられる。今後発電燃料としての利用が拡大する以上、単なる廃棄物発電との違いを客観的に示す指標の開発も重要な課題となる。

「廃プラスチックリサイクル」進化の方向性

図:「廃プラスチックリサイクル」進化の方向性

 最後に、複合素材の場合、廃プラスチックを「リサイクルしない」という選択肢もある。いわゆる「シェールガス・オイル革命」により、短期的な化石燃料の枯渇リスクは遠のいた。廃プラスチックの単位当たり付加価は安価で、その希少性は低い。例えば希少金属との複合製品として発生した場合、熱処理や化学処理等により鉱物資源のみを回収する方が合理的かもしれない。今後普及が見込まれる炭素繊維強化プラスチックも、その回収ターゲットは炭素繊維であり、廃プラスチックではない。

廃プラスチックは、リサイクルの合理性が問われる象徴的な素材であり続ける。だからこそ、経済性や資源回収の優先順位を度外視した「見せかけのゼロエミッション」に陥ってはならない。



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