NTTデータグループのコンサルティング会社である株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:谷口 和道)と株式会社クニエ(本社:東京都江東区、代表取締役社長:井上 英也)は、このたび共同で「IT組織の成功要因に関する調査」を実施しました。
IT組織に関する調査は各調査機関でも実施されておりますが、本調査では、とくに「事業のグローバル対応」「IT子会社を含めたアウトソーシングの最適化」等の課題にも着目し、IT組織運営における成功要因を明らかにしました。
【主な調査結果】
1. IT組織 4つの成功要因
「事業に寄与するIT資産を導入・活用し、ITの経営貢献を実感している企業」と「事業に寄与するIT資産を導入・活用できておらず、ITの経営貢献を実感できていない企業」を分析したところ、以下4つの成功要因があることが分かりました。
- IT投資への積極性
ITの経営貢献を実感できている企業では、IT投資姿勢が積極的であることが分かりました。経営課題を解決するための積極的なIT投資は、価値創出の源泉であると考えられ、IT投資姿勢とITの経営貢献には一定の因果関係があると説明できます。また、この傾向は非製造業において強く見受けられました。これは、ITが非製造業の提供する“サービス”の価値向上に対して、貢献できる余地が多いことが理由と考えられます。
- IT組織の企画・提案力の具備
ITの経営貢献を実感できている企業では、IT組織の企画・提案力を具備できている割合が比較的高いことが分かりました。IT組織運営におけるさまざまな施策のなかで、とくに『コア/ノンコアの見極めと企画機能の内部留保』、『ナレッジの共有・活用』という施策が、企画・提案力の具備の実現手段として効果的であると考えられます。
- IT組織と経営・業務部門との関係強化
ITの経営貢献を実感できている企業では、IT組織と経営・業務部門との関係強化(コミュニケーション強化)ができている割合が高いことが分かりました。IT組織運営におけるさまざまな施策のなかで、とくに『IT業務の見える化/標準化』、『IT組織運営の成果(KPI、SLA、等)の可視化・測定・改善の仕組み整備』という施策が、IT組織と経営・業務部門との関係強化の実現手段として効果的であると考えられます。
- ユーザのITリテラシの確保
ITの経営貢献を実感できている企業では、ユーザのITリテラシの確保ができている割合が高いことが分かりました。ユーザのITリテラシ確保の実現手段としては、ユーザ教育の実施、ユーザ支援体制の整備(業務部門へのIT担当の設置、ヘルプデスクの設置、サポートポータルの構築、マニュアルの整備など)のいずれも重要であると言えますが、とくに業務部門へのIT担当(リエゾン担当者)の設置という施策は、ITの経営貢献を実感できている企業とできていない企業での差が大きかったため、改めて検討してみる価値があることが伺えます。
2. IT子会社の成功要因
「親会社からの期待に応えている企業/応えられていない企業」という観点より分析した結果、IT子会社の成功要因として下記事項への取り組みが重要と考察しました。
- IT子会社のミッション明確化
親会社の評価が高いIT子会社においては「IT子会社のミッション明確化」および「IT子会社自身による自立的な施策策定と運営」に対する達成度合いが高い傾向が見られました。本来「自立的な施策策定と運営」は「ミッション達成」を目的としたものであり、IT子会社全体を対象とする改善施策を自立的に策定するには、「IT子会社のミッションを明確にする」ことがIT子会社活性化の第一歩として必要と考察します。
- マネジメント・スキル強化
親会社によるIT子会社のスキル(ノウハウ)評価は、調査対象とした7領域(戦略、企画、設計・開発、維持・運用、マネジメント、業務知識、IT技術力)いずれにおいても期待値を下回る結果が見られました。とくに親会社からの期待値と現状の満足度の格差が大きいスキル領域が『マネジメント』領域です。『マネジメント』が単独遂行可能な業務として成立し難い業務であること、IT子会社への期待が「設計・開発~維持・運用」領域で高いこと等から推察するに、同領域におけるマネジメント・スキル向上が要求されているものと推測します。
- 設計業務の内製化
『業務再委託』(外部ベンダー利用)の観点における「成功/失敗」の傾向差異は、「設計」業務の再委託の領域で傾向差異が見られました。「成功」企業の設計業務再委託率が「失敗」企業の委託率の半分以下であることから、利用者評価に直結する「設計」業務については、「業務知識」スキル領域で一定の評価を受けているIT子会社にて遂行して欲しい、というのが親会社の要望ではないかと推量します。
3. グローバル対応の実態
グローバル事業拠点を保有する企業において認識される「グローバルIT課題」の傾向分析を通じ、IT組織としてグローバル対応への整備には下記事項に対する考慮が重要であると判断しました。
- 組織/統制系課題への取り組み
グローバルIT課題として上位認識されるものは、『グローバルIT戦略の策定』および『グローバルITガバナンス構築』という組織/統制系の課題でした。『IT子会社の活性化』においてもIT子会社の『ミッション明確化』が最優先課題となっており、企業グループ全体を対象としたIT戦略策定が必要と考察します。
- 事業部門とIT部門との認識共有
今回の「グローバルIT対応課題」調査結果より、『現地とグローバル拠点間のコミュニケーション強化』に対する課題意識が非常に高いことが判明しました。『コミュニケーション強化』に強い課題意識を抱いているのは事業部門と想定され、これは『IT投資判断を担う部門』視点での分析結果に如実に現れています。一方、IT部門側では先の「組織/統制整備」系への課題意識が強い傾向が現れています。経営層からの要求内容・様式が異なると想定されるIT部門と事業部門では「課題」として認識するポイントもレベル感も異なることが多いことから、『本当の課題内容/レベル』を把握するために現場レベルを含めた事業部門とIT部門との課題認識の共有化を進めることがまずは重要と思量します。
- 外部リソース活用箇所の再確認
「成功/失敗企業」視点からの分析においては、失敗と区分けされた企業におけるIT課題認識として、『グローバルIT人材の育成・確保』という課題が上位に挙げられています。「開発」や「保守・運用」のグローバル化が進み、「国外拠点での開発」や逆に「グローバル運用の国内提供」等が進む現状と併せて考慮すれば、この課題認識状況と対応施策としていくつかの可能性が想定され、多様なサービス形態が存在する外部支援の利用可能性を併せて考慮されることが有用と考察します。
なお、本調査結果の詳細について、2011年3月9日(水)開催のセミナーにて公表いたします。
「 変革コンサルティングセミナー 2011春 ~競争力をもたらすIT経営~ 」
日 時:3月9日(水) 15:00-17:30
場 所:経団連ホール
主 催:株式会社 NTTデータ経営研究所、株式会社 クニエ
セミナーご案内URL:http://www.b-forum.net/event/jp278a.htm
■ プログラム
1.『今こそIT経営で変革を ─情報戦略の重要性』
慶應義塾大学 理工学研究科 教授 横溝 陽一 氏(元ローソン 常務執行役員 CIO)
2.『IT経営の実現に向けて ─「IT組織の成功要因に関する調査」結果から』
NTTデータ経営研究所 パートナー 三谷 慶一郎
3.『現状のIT戦略・マネジメント課題に対するNTTデータコンサルティンググループのアプローチとソリューション』
クニエ マネージングディレクター 原田 龍一 |