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2009年3月30日

貸金業法改正が資金需要者等に与える影響

~中小企業・個人事業主の資金繰りはさらに悪化の可能性~

株式会社NTTデータ経営研究所

株式会社NTTデータ経営研究所(東京都渋谷区、代表取締役社長:佐々木 崇)は、日本貸金業協会(東京都港区、会長:小杉 俊二)からの委託に基づき、貸金業法改正が資金需要者等にどのような影響を及ぼすのかについて把握するため、対象者を一般消費者、借入経験のある経営者・個人事業主に分け、「資金需要者等の現状と動向に関するアンケート調査」を実施いたしました。

主な調査結果は、2009年2月25日に日本貸金業協会より公表(※1)の通りですが、今回、当社にて、貸金業法改正が、特に、中小企業や個人事業主の資金繰りに与える影響を追加分析いたしましたので、その結果を公表いたします。

(※1)http://www.j-fsa.or.jp/ を参照を参照。

【主な調査結果】

Ⅰ.企業経営者・個人事業主向け調査より

1.貸金業者からの借入先比率は13%、規模が小さくなるほど比率は高くなる傾向

日本貸金業協会でも公表の通り、企業・個人事業主における事業資金の借入先は、「銀行」が54%で最も多く、次いで、「信用金庫・信用組合」が34%、「日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫、旧中小企業金融公庫など)」が31%で続く結果となった。

「貸金業者」から借入を行っている先の比率は13%であったが、資本金2,000万円未満の中小企業では、その比率が16%に上がり、個人事業主では更に23%となるなど、事業規模が小さくなるほど、「貸金業者」から借入を行う比率が高くなる傾向にあることが分かった。 

(1)事業資金の借入先

2.貸金業者からの借入の74%が「無担保・無保証」の形態

銀行からの借入形態は、「無担保・無保証」が43%、「無担保・保証人あり」が36%、「担保あり」が30%となった一方、貸金業者からの借入形態は「無担保・無保証」が74%と圧倒的で、「無担保・保証人あり」が13%、「担保あり」が7%という結果になった。

また、貸金業者を利用している理由についても、「無担保で借入ができたから」が60%で最も多く、次いで、「手続きが簡単だから」(56%)、「保証人を立てる必要がなかったから」(54%)が続く結果となった。

(2)担保・保証人の有無

3.企業経営者・個人事業主の46%が最近の銀行の融資姿勢が「厳しくなった」と回答  

直近1年間での銀行の融資姿勢について、「大変厳しくなった」「厳しくなった」の回答が合わせて46%となり、「非常に緩和した」「緩和した」の6%を大きく上回る結果となった。信用金庫・信用組合についても、「大変厳しくなった」「厳しくなった」が45%で、「非常に緩和した」「緩和した」の8%を上回った。

貸金業者についても、銀行や信用金庫・信用組合の比率は下回ったものの、「大変厳しくなった」「厳しくなった」が32%で、「非常に緩和した」「緩和した」の7%を上回る結果となった。
企業の資金調達を取り巻く環境は総じて厳しく、特に、中小企業や個人事業主にとっては、貸金業法改正3条施行・4条施行に向けて、これまで「無担保・無保証」を中心に融資を行ってきた貸金業者の与信厳格化が進むことも併せ、今後の資金繰りが懸念される状況にあることが分かった。

(3)直近1年間の融資姿勢

4.「金利が下がる」よりも「借入額を従来通り確保できる」方が優先順位が高い  

「金利」と「借入額」について、企業経営者や個人事業主にとって、最も優先度が高いのは、「これまで通り必要額の融資を受けられ、かつ、金利は従来よりも下がる」であったが、次に優先度が高いのは「借入額が従来通り確保でき、金利も従来通りの水準」という回答であった。

貸金業法改正により、今後、「金利は従来より下がるが、借入額も減少する」状況が想定されるものの、企業経営者や個人事業主が考える優先順位では、「金利」よりも「借入額」が上回る結果となった。

(4)事業資金の借入に関する優先順位

5.企業経営者・個人事業主の22%が事業資金以外の名目で借りた資金を事業資金として利用

企業経営者・個人事業主の22%は、事業資金以外の名目で個人として借り入れた借入金を事業資金に転用中であることが判明した。過去に転用した経験者を含めると約4割が転用している結果となった。

また、今後、個人としての借入が一切できなくなったと仮定した場合、事業の資金繰りに影響がある(支障が生じる)とした回答率は58%に上っており、企業経営者や個人事業主における個人の資金繰りが事業の資金繰りに大きな影響を与えていることが分かった。

(5)個人の資金繰りが事業の資金繰りに与える影響

Ⅱ.消費者向け調査より

6. 消費者金融利用者のうち44%が総量規制(※2)に抵触する見込み

借入総額の年収に占める割合を調査したところ、消費者金融の借入利用者(現在残高あり)の44%が年収の1/3を超える借入がある(総量規制に抵触する)と回答した。

職種別では、「経営者・個人事業主」や「主婦」が、既に年収の1/3を超えた借入を抱えている比率が高く、業法改正4条施行により総量規制が導入されると、借入枠内での反復利用も含め、追加での借入ができなくなる可能性があるため、特に、「経営者・個人事業主」に関しては、事業の資金繰りへの影響も懸念される状況であることが分かった。

(※2) 貸金業者に借り手の返済能力を超える貸付を禁止する規制(一部の例外的な契約を除き、総借入残高が借り手の年収の3分の1を超える貸付を禁止したもの)。
総量規制に抵触した場合、新たな借入はできなくなり、借入金の返済のみとなる。

(6)総量規制の影響

7. 貸金業法改正の認知率は21%にとどまり、79%が「理解していない」「知らない」と回答

一般消費者の貸金業法改正の認知率は2割程度にとどまり、借入利用者(現在残高あり)に限定しても4割程度にとどまる結果となった。

また、そのほとんどは「上限金利の引下げ」をもって貸金業法改正と認識していることが窺え、業法改正4条施行を控え、貸金業者各社が与信厳格化に向けて、融資停止等の本格的な措置を講じる前に、貸金業法改正を利用者に広く普及することが待たれる状況であることが分かった。

法改正の認知状況については、企業経営者・個人事業主に対しても同様の調査を実施したが、全般的に認知が進んでいないという状況に変わりはなかった。

(7)貸金業法改正の認知状況

以上

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  金融コンサルティング本部
     佐藤哲士・小出俊行・小林レミ   TEL: (03)5467-8879

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