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持続可能性から見た復興まちづくり

パートナー 村岡 元司
『情報未来』No.37より

はじめに

本年3月11日に発生した東日本大震災は、マグニチュードの大きさが9.0と国内観測史上最大であり、地震に引き続く津波、原発事故と相まって戦後最大規模の被害が発生する事態となった。現在、国においても被災地域においても、災害を乗り越え、単なる復旧ではなく長期的な発展につながる復興を目指して、緊急対策から復興計画づくりまで精力的な活動が進められている。

例えば、被災地においては、福島県復興ビジョン提言(案)、宮城県震災復興計画、岩手県東日本大震災津波復興計画 復興基本計画(案)等が検討されている。各ビジョンや計画の内容は地域の特性を踏まえて異なったものとなっているものの、復興の主役が地域であり、地域の住民一人ひとりの力と地域内の各主体、さらには地域外の主体との連携・協調が不可欠であると指摘している点は共通している。また、「真に持続可能な社会モデルを国内はもとより世界に対して発信していく」(福島県復興ビジョン提言(案))、「環境面での持続可能な社会の構築や持続可能な地域社会実現に向けた未来を担う人材の育成が復興のポイント」(宮城県震災復興計画)、「緊急的、短期的、中・長期的な取組を重層的に進めていくことが必要」(岩手県東日本大震災津波復興計画)など、長期的な視点に立ち、持続可能な地域社会を目指す点も共通している。

本稿では、復興計画においてもキーワードの一つとなっている長期的な持続可能性という点に焦点を絞り、持続可能性に関する既存の検討の概要と今回の震災・原発事故から得られる示唆を取りまとめ、情報が持続可能性にどのように貢献できるのか、そのポイントを探ることとしたい。

持続可能性に関するこれまでの検討の概要

持続可能性という言葉には、永続的に文明等が存続する可能性といった意味があるが、復興計画においてこの言葉が特に環境面で用いられていることには訳がある。1987年に「環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)」が公表した報告書「Our Common Future」において、中心的な概念として取り上げられたのが「持続可能な開発(sustainable development)」であり、その意味するところは、「将来世代のニーズに応える能力を損なうことなく、現在世代のニーズも満足させるような開発(※1)」というものであった。当時、各種開発に伴う環境破壊等が課題となっていたことから、環境保全と開発を両立させるために生み出されたコンセプトが、持続可能な開発であり、世代間で公平性を保つことが重要なポイントとして指摘されたのである。このように、持続可能性という考え方は環境分野において幅広く認知されるようになってきたものである。ちなみに、我々、現在世代で利便性の高い化石燃料を消費し尽くしてしまうと将来世代は利便性の高い燃料を利用することができなくなってしまう。同様に、我々の世代で多くの土地を放射能や化学物質で汚染してしまうと、将来世代の利用可能な土地が制限を受けることになる。すなわち、世代間の公平性の背景には、資源や自然環境の容量の有限性の問題があり、有限な資源・エネルギー等を人工的な代替技術も含めその許容の範囲内で利用していく仕組みも、持続可能性を確保するための重要な要素となっている。

ところで、持続可能性という言葉は現在、実に多方面で活用されるようになっている。例えば、参議院調査室が作成している「立法と調査」の2011年3月号では、「社会保障の持続可能性とは何か」(第二特別調査室 小林仁)という論文が掲載されている。持続可能性の概念を社会保障という制度に適用したもので、給付と負担の均衡、負担に値する社会保障、社会保障を支えようとする意志と能力の3つの視点が持続可能性を実現するための要素として紹介されている。第一の視点は経済的な持続可能性、第二は制度への支持という点から見た持続可能性、第三は制度維持のための国民の意志と能力の面から見た持続可能性といえる。その他、“持続可能な漁業”として水産資源の再生可能な範囲内で漁業を行う考え方も一般的になりつつある。

持続可能性という考え方の普及に伴い、制度や産業、国や地域等を持続可能性の面から評価しようという動きも活発化してきた。分かりやすい持続可能性指標を開発し、同指標を参考にして持続可能性を高めるための活動の展開を図る試みもある。例えば、環境分野を中心に活動を展開しているジャパン・フォー・サステナビリティ(Japan for Sustainability:JFS)は、持続可能性を(1)資源・容量、(2)時間的公平性、(3)空間的公平性、(4)多様性、(5)意志とつながりという5つの縦軸と、(1)環境(Nature)、(2)経済(Economy)、(3)社会(Society)、(4)個人(Wellbeing)という4つの横軸で評価し、その発展度を指標化している。

こうした持続可能性に関する各種の取り組みや研究を包括的に取りまとめ、「持続可能な発展」の理念・概念や持続可能性指標の現状と課題等を取りまとめたものとして“「持続可能な発展」理念の論点と持続可能性指標(農林環境調査室 矢口克也、国立国会図書館調査および立法考査局レファレンス 2010.4)”がある。同論文において、「持続可能性」とは、環境的持続可能性・経済的持続可能性・社会的持続可能性という3つの持続可能性が均衡した定常的状態であるとされている。3つの持続可能性は、それぞれ図表1のとおりである。

図表1:3つの持続可能性
社会的持続可能性 人間の基本的権利・ニーズおよび文化的・社会的多様性を確保できる社会システム(生活質・厚生の確保)
経済的持続可能性 公正かつ適正な運営を可能とする経済システム(効率・技術革新の確保) 環境的持続可能性
環境的持続可能性 自然および環境をその負荷許容量の範囲内で利活用できる環境保全システム(資源利活用の持続)
出所:「持続可能な発展」理念の論点と持続可能性指標
(農林環境調査室 矢口克也、国立国会図書館調査および立法考査局レファレンス 2010.4)

なお、同論文における定常的状態とは、GDP成長をゼロとする経済成長を否定するようなものではなく、技術開発やイノベーションとその社会への適用等による経済および生活上の「質的発展」を想定するものとされている。また、3つの持続可能性は並列ではなく、環境的持続可能性は前提条件であり、経済的持続可能性を一つの手段とし、社会的持続可能性を最終目的・目標とする関係性を持つとされている。このように、持続可能性の概念は、環境分野にとどまらず幅広く制度や社会全体に適用が拡大されつつあり、まちづくりや国づくりの目標、目標の実現手法、そのための基盤のすべてを持続可能性の観点から検討することも行われているのである。

※1:Developmentという言葉を開発と邦訳するか発展と邦訳するかの議論がなされ、最近は、“開発”の代わりに“発展”を用いる場合の方が多い。

得られる示唆

今回の災害や事故は、前述した持続可能性の考え方に影響を与えている。ここでは次の3点を指摘したい。

図表2:持続可能性の実現に向けたコンセプト
出所:“「持続可能な発展」理念の論点と持続可能性指標”等を参考にNTT データ経営研究所にて作成

第一は、持続可能性の重要な要素として、災害・事故への対応システムやリスク対応力を加えなくてはならないということである(図表2)。企業のレベルで見れば、訓練に裏付けられた実効性の高いBCP(事業継続計画)が重要になるであろうし、製造拠点の分散や災害発生に備えた一定の戦略的な在庫を確保することも重要になろう。地域社会で見れば「防災から減災へ」、「防波堤等のハードだけでなくソフトも」等の考え方を含め、災害の発生を早期に検知し被害を回避するシステムや仕組み、住居は高台に移し、そもそも被害の確率を最小化する社会ルールなどが重要になってくるであろう。いずれも、個別の企業や復興計画等においてすでに検討されていることではあるが、持続可能性という点から見れば、新しいルールや仕組みを、技術開発等による効率化やイノベーション等を継続し経済的にも持続可能なものとしていくこと、さらには、個人や組織が常に災害対応の仕組みに参加・連携協調し続けること等によりリスク対応型の文化を社会システムの中に構築していくことも重要である。

 

第二は、経済的活動と社会的活動の近接が持続可能性を高めるということである。今回の震災では国内のみならず国外からも多くの支援が集まり、社員のボランティアに対する企業の組織だった支援も際立っていた。さらに、被災地の方々の優先的な雇用、被災地の商品の首都圏等における優先的な購入等の活動も展開された。これらの活動に共通しているのは、経済的活動と社会的活動の距離感が縮小し、近接してきたという特徴である。その特徴は、社会的意義の高い活動をビジネスの手法を用いて実践するソーシャルビジネスやコミュニティビジネスにも通じるものがある。ソーシャルビジネスが盛んなイギリスでは、リーマンショック後の世界的大不況の中でも社会的な課題を解決するだけでなく、雇用の維持拡大にまで貢献するソーシャルビジネスに対する期待が一層高まり、「ソーシャルビジネスはリセッションバスターである」との見方もなされている(※2)。わが国においてソーシャルビジネスやコミュニティビジネスが注目され始めてすでに10年程度が経過しているが、今回の震災は、経済的活動と社会的活動の融合を一層、促進させることにつながる可能性がある。事実、岩手県東日本大震災津波復興計画では、「各地から寄せられる支援や参画の広がりをきっかけとして人と人、地域と地域のつながりを拡大し多様な参画による開かれた復興を目指す」等の目標が掲げられている。また、各種団体や協議会等と連携してNPO法人環境エネルギー政策研究所が展開する「つながり・ぬくもりプロジェクト」は、太陽光発電システム・太陽熱温水器・薪かまど・ボイラー等を避難所などに設置して、被災された方に電気・お湯・お風呂を届けるプロジェクトである。Webサイトで公開されているデータを見ると、2011年7月初旬時点ですでに同プロジェクトに対して2,400万円を超える寄付が寄せられている。マネーゲームとは無縁の暖かいお金が、社会の中で着実に流通し始めているのである。

以上の活動も含め、社会的活動は、どちらかと言えば社会的弱者の支援や世代間での不公平等を埋める方向に働くことが多い。世代間の公平性を保つだけでなく、同世代内の公平性を確保することも持続可能性を発展させるものとされている。すなわち、社会的活動の活発化は社会的持続可能性を高める可能性を秘めており、継続する被災地支援活動やソーシャルビジネス等に象徴される経済的活動と社会的活動の近接・融合は、持続可能性を高めると言えるのである。

 

第三は、コミュニケーション等を通じた創発が持続可能性を高めるということである。各地の復興計画等では、「住宅再建に向けた各種支援制度の創設及び充実」、「長期にわたり子どものこころのケアを推進するため、被災児童に対する学校教育と連携した継続的な支援体制を整備」、「伝統文化等地域資源を生かした地域づくり活動の支援」、「農地の集約化や経営の大規模化等に向けた制度創設、規制緩和及び税制優遇措置の実施」、「水産業復興特区の創設」など、復興に向けた新しい制度や仕組み等の検討も積極的に行われている。緊急的に整備すべき制度等もあるが、なかには長期的に維持していくことが必要な制度等も存在する。当然のことながら、長期的に維持しなくてはならない制度等については、その持続可能性を高めていくことが重要になる。

 

新しい制度等を構築するのは人や企業や地域等である。従って、新しい制度等を長期的に維持していくためには、何よりも国民や住民一人ひとりが意志をもって制度等を守り、育てていくことが重要になる。前述した「社会保障の持続可能性とは何か」においても、社会保障制度に対する“支持”や社会保障を支えようとする“意志と能力”の重要性が指摘されている。ただ、人が創りだした制度等にはどこかに欠陥があることのほうが多い。絶対安全が世の中には存在しないように、絶対完全な制度等も存在しないと考えた方が現実的である。したがって、制度等については時の変遷とともに必要な修正を加え、必要に応じて抜本的な改革を行っていくことが必要になる可能性は高い。特に、長期にわたり運営される制度については、変更を加えていくことが不可欠であろう。

新たに制度等を創設する場合においても、必要な変更を加える場合においても、制度等への支持と参加、支えるための意志と能力を獲得していくためには、関係者の意見を集約し合意・納得を醸成していくプロセスが重要になる。異論や対立意見を有するステークホルダーが相互の意見を交わし、互いの立場を理解した上で一つの結論を導出すること、特に、異論を足して2で割るような結論ではなく、異論の集合体を越えた次元の高い結論を創りだす(創発する)ことが重要になる。こうしたコミュニケーション等を通じた創発は、社会分野におけるイノベーションにつながり、制度等の持続可能性を高めることが期待されるのである。

※2:イギリスにおいて、ソーシャルビジネスは、ボランタリーな活動とも一般の経済活動を行っている中小企業活動とも明確に区分された新しい存在として分類されている。

持続可能性に貢献する情報とは?


持続可能性を高めるために情報はどのような役割を果たすことができるのか。また、持続可能性と情報には何らかの関係があるのか。本稿の最後に、その点について前項に沿って3つの仮説を紹介したい。

まずは、安全・安心と情報について考えることとしたい。地震・津波に引き続いて発生した原子力発電所の事故は、住民の方々の緊急避難という事態を引き起こすこととなった。その際、当初の避難が発電所を中心とする同心円に従って行われたことに異論が相次いだことは記憶に新しい。当然のことながら放射性物質の拡散は地形や風向・風速、当日の天候等に左右されることから、同心円状に広がる訳ではない。前項で指摘したリスク対応の点から見れば、事故発生時の気象データと排出放射性物質データを入力し、地形も勘案したシミュレーションを行えば、より精緻な避難誘導は可能であった可能性がある。また、今後、住民の方々がふるさとに帰る場合にも、精緻なシミュレーションが必要になろう。

ところが、100億円を超える予算を投じて開発された緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)は、放射性物質の飛散状況の予測のみならず避難区域や周辺の避難所を検討する機能を保有していたにもかかわらず、インプットデータが不足していたためにその機能を発揮できなかったという。また、インプットデータについては、収集されている放射線モニタリングデータのメッシュが粗かったという指摘がある。このため、よりメッシュの細かいデータを取得するため、地元の福島大学は、被曝リスクを背負いつつ計測器を持参して詳細データを把握した。リスク覚悟の地元大学の活躍には賛辞を送りたいが、心ある人々に過度なリスク負担を強いる仕組みは持続可能ではない。放射線量計測器は定点設置し、データ取得は自動化すべきであろう。加えて、放射線モニタリングデータは文部科学省、気象データは気象庁と管轄が異なっており、データの有効な連携・加工が必ずしも容易ではなかったとの指摘もある。このように、個別要素的にみれば放射線モニタリングも気象データ観測も行われていたものの、緊急事態発生時に必要なデータ連携まで視野に入れた仕組みは不十分であった可能性が高い。リスク対応力を備え持続可能性を高めるためには、緊急事態を想定したデータ収集・関連データの連携とシミュレーション・避難等の一連の活動を社会システムの中に組み込んでいくことが重要であると考えられる。

以上の放射線リスクに対する対応は、安全に関する科学的な考え方に基づくものである。一方、各地で子供を持つ主婦等が自らの居住地周辺の放射線量を計測する例も増えている。リスクに関する正確な情報が必ずしも普及していない状況下において、子供を守るために防衛活動に走るのは当然のことである。感情も含めた防衛活動に対応するためには、人の心理にも配慮した安心対応が求められる。すなわち、リスク対応型の社会システムを構築していくためには、安全と安心、科学と心理学の双方に対応したモニタリングやデータマネジメントが重要になると考えられる。

 

続いて、経済的活動と社会的活動の近接を支える情報について考えてみたい。これまで企業の経済活動については主として財務情報により評価されてきた。ところが、2006年4月、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP-FI)と国連グローバルコンパクト(UN Global Compact)が中心となって「責任投資原則(Principles for Responsible Investment, PRI)」を策定し、その中で、投資分析や意思決定過程にESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治))問題を組み込むことなどが明記された。こうした動きをきっかけとして、欧米の資産運用関係者の間でESG情報の開示に関する認識が急速に広まってきた。特に、欧州では開示の基本的枠組みとして、年次報告書の公表に際して財務情報に限定せずに企業経営におけるESG側面からの分析や、環境保護や従業員に関するデータなどの非財務KPIを記載することなどを要請している。これを受けて、ドイツ、フランス、イギリスなどにおいて法制化が進んでいるとされる。また、公認会計士団体や非営利組織が中心となって、情報の透明性や投資家の利便性を考慮するために財務情報と非財務情報を統合した報告書フレームワークの検討も始まっている。非財務情報開示の強化は、企業への投資に際し、財務情報以外の情報を勘案することを意味している。その際、勘案されるESG情報は環境的持続可能性と社会的持続可能性に合致しており、まさに企業の持続可能性が投資評価の対象となりつつあることが分かる。今後、経済的活動と社会的活動の近接は、ESG情報という形で支えられることになろう。

ところで、ESG情報の開示が求められるのは一定規模の投資資金を必要とする企業であることが多く、そうした企業は比較的、規模が大きい企業であることが多い。一方、ソーシャルビジネス等の担い手企業の規模は、現状では、まだまだ小さい場合が多い。したがって、財務情報と非財務情報としてのESG情報の開示等はソーシャルビジネスには、必ずしも当てはまらないかもしれない。ただし、ソーシャルビジネスは、名前のとおり社会的な活動をビジネスとして展開するものである。したがって、企業活動の紹介そのものが財務情報とESG情報の開示と同等と見なすことも可能かもしれない。そして、Webサイトによる情報公開やソーシャルメディアを利活用した情報発信やコミュニケーション等により、経済活動と近接した社会活動の一層の活発化が期待される。

 

最後に、つなぐことの価値や意味について考えてみたい。大地震が発生した3月11日、首都圏でも多数の帰宅困難者が発生した。その後も交通機関の混乱は続いたが、ツイッターで交通状態をリアルタイムに近い形で把握することができたという声を多く耳にした。このツイッターに限らず、最近のソーシャルメディアの発達には目を見張るものがある。新聞・雑誌等の従来型メディアもデジタル化が進み、人が誰かとつながることは、以前よりも格段に容易になった。つながることでコミュニティが生まれ、ある種の世論が形成されることもある。コミュニケーションを活発化する道具は、十分に揃いつつある。

では、コミュニケーション等を通じた創発も活発化しているのだろうか。残念ながら筆者の知る限りでは、コミュニケーションの活発化が創発の活発化にはつながっている例は必ずしも多くないものと考えられる。ただし、いくつかの従来にない新しい動きは生まれている。例えば、内閣官房(情報通信技術(IT)担当室)・総務省・文部科学省・経済産業省が共同で開始した「ネットアクション2011」は、基礎となる公共データを公開し、同データ等を利用して震災からの創造的な復興を支援するためのアイデアを募集している。現在、「被災地復旧復興支援サービス」、「節電支援サービス」、「節電アイデア」が募集されている。誰とでもつながることができるというネットの特徴を生かし全国各地から知恵を集約する仕組みで、関連する公共データを提供することで利便性の向上を図っている。昨今、流行のオープンイノベーションの手法を取り入れた活動と言えよう。

利活用可能なデータは共有し知恵の集約を図るだけでなく、知恵の相互作用を促し、今までにない新しい技術や仕組み等を創り出していくこと。それが、コミュニケーション等を通じた創発と言える。どのような条件を整えれば創発が生まれるかは非常に難しい問題で、その答えは必ずしも明確ではない。ただ、ヒントはある。会議の生産性をあげるためにあえて考え方の異なる人々を集めることがあるが、この背景には多様性が創造性につながる可能性があるものと考えられる。開放系を保ち、多様性を許容しながら、利便性やインセンティブを高める仕組みを設けつつ、各地に分散する知恵を集約し、さらに新たなものに高めていくこと。進化し続けるソーシャルメディア等のツールを創発のために利用することが、持続可能性を高めるのである。

 

復興は息の長い活動になる。環境的な持続可能性のみならず、持続可能性という観点から復興まちづくりそのものを考えることは、少子高齢化・財政危機・各種制度の疲労等に悩むわが国にとっても意味のあることではなかろうか。各地に存在する知恵の集約に期待したい。

(参考文献)

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