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マルチチャネルカスタマーサポート高度化に向けた取り組み

コンサルタント 小林 大介
『情報未来』No.35より

はじめに

近年、業種・業態を問わず、多くの企業が多様なチャネルを通じてお客さまの用件(問題/疑問等)を解決していく活動「マルチチャネルカスタマーサポート」を行っている。これはサポートを利用するお客さまのライフスタイル等の変化による、サポートの形態(対面/非対面、人による応対/PC・携帯電話で対応等)、サポートの時間帯(早朝・深夜等)などに対するニーズの多様化、という流れを受けてのことであると考えられる。しかしながら、各企業においては必ずしもこのマルチチャネルカスタマーサポートが思うように展開できていない、というのが実態ではないだろうか。

そこで、本稿ではこれまでご支援させていただいたコンサルティング経験から、マルチチャネルカスタマーサポート活動の高度化に向けた取り組みをご紹介する。

なお、本稿では誌面の都合上、代表的なサポートチャネルであるコールセンター(以降CC)と、PC・携帯電話で利用するWebサイト(以降Web)の2つのチャネルを中心に議論を進めていく。2つのチャネルに絞って議論を展開するが、基本的なアプローチは他チャネルにも応用できるため、参考になると考えられる。

また、本取り組みは本号のレポート「顧客接点を強化する顧客情報基盤の在り方」における図表1「(1)フロントエンド業務」を強化する取り組みという位置付けになっているため、必要に応じてそちらもご参照いただけると幸いである。

マルチチャネルカスタマーサポートにおける一般的な問題と解決のアプローチ

1. マルチチャネルカスタマーサポートにおける一般的な問題

先ほど述べたサポートの形態や時間帯に対するお客さまのニーズは、「チャネルに依らない利便性の高いカスタマーサポートを求めている」と言い換えることができる。これをもう少しかみ砕いて考えると、お客さまはカスタマーサポートに対して、「自分の都合に合わせて、いつでも、どのチャネルにアクセスしても、迅速かつ、適切に用件が解決する」ことを期待しているとも言うことができる。一方でサポートを提供する企業にとっては、まず優先すべきは(1)「お客さまの期待に応える」ことであり、次に(2)「マルチチャネルカスタマーサポートを低コストで実現する」ことであろう。さらにその上で(3)「サポート活動を通じた新たな販売機会の創出と刈り取りをする」ことがサポート活動に期待することだと言える。しかしながら、これら3点をすべて同時に満たすことは難しく、いかにしてこれら3点を満たすかが解決すべき一般的な問題であると言える。

2. 問題を引き起こす要因

では、なぜこのような問題が起こっているか、その要因について考えてみる。

(1)「お客さま都合に合わせたサポートが実現できていない」という問題は、

(ア) CCではサポートを提供できる時間に限りがある(例.CCの営業時間が日中のみで、仕事が終わった後には問い合わせられない等)、
(イ) CC営業時間外にWebにアクセスしても用件を解決できないことが多く、簡単な用件でも結局電話をしなければならない、
などが要因として考えられる。

(2)「カスタマーサポートに多大なコストを掛けている」という問題は、

(ア) 定型的で簡単な用件でもCCでしか対応していない(例.エラーコード:××が出たがどう対応するのか/詳しいサービス説明資料が欲しいので送って欲しい等)、
(イ) Webで対応していても必要な情報まで到達し辛いために、結局CCへ連絡が来てしまう(例.サイトの説明やリンクなどが分かりづらい/サイト内検索機能が弱い等)、
(ウ) CCにおいて口頭だけでは用件が一度に短時間で解決することが難しいために、お客さま/企業側双方の負担が増える(例.操作方法の説明/複雑なエラー対応方法の説明等)、
などにより対応人員コストが増加することが要因として考えられる。

(3)「サポートを通じた販売機会の創出/刈り取りができていない」という問題は、

(ア) 用件の内容を踏まえた上でのセールス活動が行えていない(例.利用履歴の問い合わせを受けた際によりお得になるプランやオプションを勧める等)、
(イ) 購入・申込手続きが面倒で顧客が途中離脱してしまう(例.CCでの確認項目が多い/Web申込画面で不明点が発生してしまう等)、
などが要因として考えられる。

3. 問題解決のアプローチ

前述の問題は、一言で言い表すと「各チャネルがお客さま/企業側が期待する役割・サービス・機能を保持・提供できていない」ことに起因していると考えられる。そのため、次のようなアプローチによりこの問題の解決を図っている。

  • 「企業側の意図」と「お客さまの期待」とのギャップを明らかにする
  • お客さま/企業側が期待するサポートチャネルの役割・サービス・機能を再設定する
  • 再設定したチャネルの役割に応じて顧客応対のサービス・機能を実装する

以降では、具体的な取り組み内容・ステップについてご紹介する。

マルチチャネルカスタマーサポート高度化に向けた取り組み


図表1:マルチチャネルサポート高度化に向けた取り組み
出所:NTT データ経営研究所にて作成

マルチチャネルカスタマーサポート高度化に向けては、大きく3つのステップで取り組みを行っていく(図表1)。

1. Step1:チャネル可視化(「企業側の意図」と「お客さまの期待」とのギャップを把握)

このステップでは、企業側が意図している思惑とお客さまの期待とのギャップを次の手順により定量的に把握する。

CCにおいては、「誰から、いつ、どのような用件で、どれだけの問い合わせがあったか?」を可視化すべく、CCに蓄積された「顧客の声(VOC=Voice Of Customer)」などを分析する。その際には、商品/サービス、価格/料金、サポートチャネル、キャンペーン別にどの程度、どのような問い合わせがあったかを整理・分類する。その後、お客さま/企業側にとってWebでの対応が望ましい問い合わせを抽出する。それとともに、CCでの対応が望ましい問い合わせに関しては迅速・適切に解決できていないものを抽出する。例えば、頻繁に発生して定型的な対処方法となるエラーの問い合わせなどはWebでの対応が望ましいはずである。

Webにおいては、「誰から、いつ、どのような用件で、どれだけのアクセスがあったか?」を可視化すべく、Webアクセス解析などを実施していく。その際には、Webにおける用件未完了アクセス(申込途中離脱/問題未解決等)の整理・分類を行う。その後、Webサイト自体の問題で発生している未完了アクセスとCCに誘導すればお客さまの用件が解決する未完了アクセスを抽出する。例えば、料金・プラン説明画面で長い時間滞留しているユーザーはCCへ誘導し適した料金・プランを提案することで受注につなげることが可能となるはずである。

2. Step2:チャネル設計(サポートチャネルの在り方を定義)


図表2:サポートチャネル設計(イメージ)
出所:NTT データ経営研究所にて作成

このステップでは可視化した各チャネルの状況とカスタマーサポートに対する期待から「誰の、どんな用件に対して、どのチャネルで、いつ、どのように対応すべきか?」を設計する。具体的には、(1)各チャネルの役割/サービス/保有すべき機能を定義し、(2)チャネル内/チャネル間における顧客動線の設計、という活動を行う(図表2)。

(1)に関しては、例えば「若年ユーザーの定型化できる用件(利用サービス/利用履歴の問い合わせなど)に関しては、Webを主なサポートチャネルと位置付け、お客さまが自ら用件を解決するのに必要となる各種情報の照会機能を提供する」といった設計を行う。

(2)に関しては、例えば「現在利用しているサービスと利用状況から最適なプラン/オプションをWebでレコメンドし、そのまま変更できるように変更画面へ誘導し、さらに詳しい説明が必要となるような場合にはCCへ誘導する」といった設計を行う。

3. Step3:チャネル実装(サポートチャネルの構築・実現)

最後のステップとして、チャネル設計の結果から、より具体的に「どのような手段・手順で対応していくか?」というサポートのプロセス/オペレーションを実現させていく活動を行う。

例えばCCにおいては、業務フロー、トークスクリプト、システム、社内関連部署との情報連携、などの変更を行う。

またWebにおいては、サービス・機能(利用状況照会/サービス変更等)、サイト構成(導線/画面遷移など)、掲載内容(商品・サービス説明画面/FAQ画面等)、などの変更を行う。

おわりに

ここまででご紹介した取り組みが、お客さま/企業側双方の期待に応えるマルチチャネルカスタマーサポートを実現させるものであると考えている。本取り組みで重要なのはチャネルを可視化し、その上でチャネルを横断的にとらえた設計を行うStep1、2の部分である。このような取り組みができているか否かが、重要なターニングポイントとなることをご理解いただきたい。

なお本取り組みは事前に自社顧客のセグメンテーション/顧客戦略の立案(顧客育成シナリオ立案等)を実施することで、よりターゲットを絞った効果の高いカスタマーサポートを実現することができる。こちらに関しては『情報未来』 NO.27(2007年3月号)「顧客セグメンテーションの目的を再認識する」をご参照いただきたい。

今回は誌面の都合上、一般化した内容であり、かつ言及できなかった部分も多くある。そのため、より具体的・詳細な話に関してご興味を持たれた方がいらっしゃれば、お声掛けを賜りたい。

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