デジタルコグニティブサイエンスセンター

 デジタルコグニティブサイエンスセンター

人間情報データベースの匿名加工情報の取り扱いに関する有識者検討会の開催

株式会社NTTデータ経営研究所
情報未来イノベーション本部
デジタルコグニティブサイエンスセンター
シニアコンサルタント 松崎 友和

1.はじめに

近時、我が国における情報通信技術の飛躍的進展とそれに伴う周辺環境の変化により、人々の生活のあらゆる場面において、事業者が個人の情報を取得することが技術的に可能となった。事業者には取得した個人の情報について適正な取扱いが求められる一方、大量に収集したパーソナルデータを利活用し新たなビジネスの可能性を求める動きも急速に高まっている。

このような現状において、人間情報データベースを所管している株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所(以下、弊社)は、弊社が実施している匿名加工情報に関する対応、検討すべき課題について、今般、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(以下、JIPDEC)主催の下、全3回にわたる有識者検討会を実施した。

2.有識者検討会概要

①有識者検討会開催に至る経緯及び目的

弊社は、自社で取扱う「人間情報データベース」に関する倫理的、法的、社会的な対応を強化し、安全性・信頼性の向上を図るため、有識者検討会の開催及び運営をJIPDECへ委託し、「人間情報データベースの匿名加工情報の取り扱いに関する有識者検討会」(以下、本検討会)の開催に至った。

本検討会で議論を行う対象は、弊社が従前よりアンケートモニターを有する調査会社を通じて取得を委託する個人情報、並びに取得した個人情報の匿名加工情報が蓄積される「人間情報データベース」に係る一連の事項とする。「人間情報データベース」の個人情報、匿名加工情報は、公益に資する活用を行うほか、「人間に聞き、人間を知り、人間に寄り添う」ことをミッションとして究極のパーソナライゼーションサービスを目指すことを最終目標とし、懸念される法的論点の検討や想定される加工上のリスク分析等を行い、弊社が自ら適正かつ有用性のある匿名加工情報を作成し、ELSI※1の観点で「人間情報データベース」の安全性・信頼性を示すための知見を得ることを目的とするものである。

※1 ELSI:ELSIとは、倫理的(Ethical)・法的(Legal)・社会的(Social)課題(Issues)の略称で、1990年にアメリカで始まった「ヒトゲノム計画」の中で登場した概念である。

②有識者検討会委員一覧

〔敬称略、五十音順、委員長:◎〕
森 亮二 弁護士法人英知法律事務所 弁護士
菊池 浩明 明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科 教授
高橋 克巳 NTTセキュアプラットフォーム研究所 チーフ・セキュリティ・サイエンティスト 主席研究員
古谷 由紀子 サステナビリティ消費者会議 代表

③各回の開催概要

有識者検討会 第1回会合 2020年9月14日(木)
議題 ■各種契約・法令遵守
①モニターに対する「人間情報データベース」のビジネス利用への同意文
②データ取得に関する調査会社との業務委託契約書
③データ提供に関するクライアントとの契約書
④匿名加工情報の取り扱い関するインターネット公表内容
⑤委託先(調査会社)に対する安全管理チェックシート
有識者検討会 第2回会合 2020年10月30日(金)
議題 ■第1回の振り返り、持ち帰り事項の確認
①本人同意(個人情報の取得主体)
②調査会社との委託契約(個人情報の取得とモニター管理)
③人間情報DB安全管理措置チェックシート
■データ処理
①匿名加工処理をする項目について
②匿名加工処理をする項目の組み合わせ
③データを一意とするキーの取り扱い
④匿名加工処理をするタイミング
有識者検討会 第3回会合 2020年12月16日(水)
議題 ■第2回の振り返り、持ち帰り事項の確認
①安全管理措置(個人情報取扱いチェックシート)
②匿名加工処理(対象項目:5号加工)
③匿名加工処理(処理タイミング)
■データ拡張・ELSI対応
①個別案件
②パートナー連携
③今後のELSI対応

3.今後について

情報の利活用を進めるべく匿名加工情報という概念を新設した平成27年改正法制定から3年が経過し、令和2年改正法が成立した。その中には、新たに個人情報と匿名加工情報の中間的な制度である「仮名加工情報」が加わり、これまでの匿名加工情報も含め情報の利活用を推進するための環境整備が進んでいる。

このような状況下において、適正にデータを利活用する安全な運用を人間情報データベースに活かすべく、全3回に及ぶ検討会を開催した。様々な立場の有識者から非常に多くの貴重な御知見や忌憚のない意見交換をさせていただいたことにより、匿名加工情報という概念を実務に落とし込む際に多くの事業者が直面するであろう疑問点や課題を、具体的な事例をもって整理することができた。なお、本検討会において頂戴した有識者のご意見や留意点は、「人間情報データベース」の匿名加工情報の在り方や運用に順次適用していく方針としている。※2

弊社では、令和4年に全面施行される改正法への対応も視野に、今後も定期的に検討会等で議論を重ね、人間情報データベースの安全性・信頼性の向上に努めていきたい。

※2:今後の弊社の対応方針や内容を含めたすべてが有識者検討会で承認されたわけではない。