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「環境新聞」2015年10月14日より

本格化する廃棄物処理・リサイクルビジネスの海外展開(4)
フィリピンの廃棄物処理・リサイクルの行方/サーマルリサイクルに脚光

NTTデータ経営研究所
社会・環境戦略コンサルティングユニット
マネージャー 加島 健

 これまで2回に亘りインドネシアの廃棄物処理・リサイクルビジネスの展望を示した。今回からは、ここ数年の経済成長率が6~7%とアジア諸国の中でも比較的高いフィリピンの廃棄物処理・リサイクル事情について、「廃プラスチック類」と「E-Waste」に焦点を当てて紹介する。本稿では「廃プラスチック類」について述べる。

 フィリピンでは、2001年1月に公布された「固形廃棄物管理法:Ecological Solid Waste Management Act of2000(RA9003)」にて廃棄物を資源として扱い、3Rの促進による埋め立て処分量の削減を目指している。具体的には、地方自治体に対して、法施行後5年間にて最終処分されている固形廃棄物の少なくとも25%をリサイクルなどにより有効利用し、その後3年ごとにリサイクル率を向上させることを命じた。なお、この法律では、プライベートセクターによる固形廃棄物管理への参加の促進を明記している。

 固形廃棄物管理法を踏まえ、地方自治体ではプライベートセクターを巻き込みながら様々な3Rの取り組みを進めている。例えばセブ州の州都であるセブ市では、2015年1月に市内のイナヤワン最終処分場を完全に閉鎖するなど、埋め立て処分量の削減が喫緊の課題となっている。セブ市は、処分量削減対策の一つとして、現在最終処分場にて大量に埋め立て処分されている軟質系廃プラスチックなどを対象とし、MRF(Material Recovery Facility)と呼ばれる中間処理施設にて廃プラスチックを選別・破砕し、セメント工場にて利用する代替燃料を製造する取り組みを進めている。この取り組みは、JICAの資金や民間企業の技術協力を得ながら進めている。セブ市と同じくメトロセブ(都市圏)に属するナガ市においても、地元の民間廃棄物処理企業が一般家庭から排出される混合ごみを自社MRFに持ち込み、廃プラスチック類を選別し代替燃料を製造するなど、廃プラスチック類のサーマルリサイクルが3Rの有効な手段の一つとして機能している。

 一方、現在フィリピン政府は日本政府と協力し、廃棄物発電(WtoE)に関する基準やガイドラインの策定を進めている。廃棄物発電の導入は、最終処分場での埋め立て処分量を10分の1程度に減らすことが可能となり、フィリピン最大の都市圏であるマニラ首都圏など廃棄物の発生量が急増し、埋め立て処分場の逼迫が著しい地域などでは特に効果的だ。

 このように、3Rを推進するための民間企業の参画や環境基準・技術基準の整備が政府主導で進められており、サーマルリサイクルに関しては、民間企業がビジネスに参画するための必要条件である「法制度の整備」、「行政支援」、「資金確保」、「現地事情の把握」のうち、「法制度の整備」と「行政支援」は揃いつつあるといえる。

 廃プラスチック類の選別・燃料化技術や廃棄物発電技術を有する日本企業は、現地の実態に即したビジネスを展開するために現地の信頼できるパートナー企業を確保し、「資金確保」の一環として日本政府の様々な助成制度を活用して積極的に打って出る絶好の時期ではないか。

挿入写真

軟質系廃プラスチックから製造した代替燃料の写真



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