現在ご覧のページは当社の旧webサイトになります。トップページはこちら

「環境新聞」2015年9月9日より

本格化する廃棄物処理・リサイクルビジネスの海外展開(3)
インドネシア リサイクルと産廃処理/官民の連携により、新しい市場を切り拓く

NTTデータ経営研究所
社会・環境戦略コンサルティングユニット
マネージャー 東 信太郎

 前回は、インドネシアの一般廃棄物処理を対象とした「PPPを活用したごみ発電事業」が有望であることを示した。今回は、同国における「リサイクル」と、「産業廃棄物処理」について、展望を示したい。

 一般廃棄物、産業廃棄物を問わず、リサイクルといえば、まず思い浮かぶのが、プラスチックなどの有価物の再資源化である。石油を原料とする製品の場合、再資源化後の販売価格は国際的な原油価格に影響を受けるが、新興国の物価水準を鑑みると比較的高値で販売することができる。このため、インドネシアに限らず、新興国でも有価物は、回収から再資源化に至る「リサイクルチェーン」が確立されつつある。インフォーマルセクターが回収を担うことも多く、ここに他社が割って入るのは容易ではない。今後、有価物の再資源化について、許認可制や組合制度などが導入され、「参入可能なビジネス」となれば、日本企業にもチャンスは訪れるだろう。

 他のリサイクルの例として、有機ごみ(生ごみ)の処理を挙げることができる。インドネシアの一般廃棄物のうち、半分以上を占める有機ごみを堆肥化などによってリサイクルできれば、最終処分場に搬入される一般廃棄物の量を大幅に削減することができる。

 この効果に注目し、インドネシアで有機ごみのリサイクルを支援しているわが国の自治体がある。福岡県北九州市だ。同市は、同国第二の都市スラバヤで、2004年より一般家庭から排出される生ごみを堆肥化させる「高倉式生ゴミのコンポスト化協力事業」を実施し、スラバヤ市における有機ごみの発生量を削減させることに成功した。この事業をきっかけに、北九州市は、12年にスラバヤ市と「環境姉妹都市」関係を結ぶとともに、市内の企業が有する環境技術を活用して、スラバヤ市の環境問題の解決に貢献する取り組みを始めた。

 その一環として、同市で廃棄物のリサイクルを手掛ける西原商事が、スラバヤ市で一般廃棄物の分別と有機ごみの堆肥化の事業化に取り組んでいる。事業化には課題があるものの、北九州市と西原商事が連携してスラバヤ市にアプローチすることで、事業環境を改善しようとする努力が続けられている。

 最後に、産業廃棄物処理について述べたい。インドネシアでは、有害な産業廃棄物を「B3廃棄物」とし、ジャカルタ南郊のボゴール市にある、同国唯一の施設で最終処分が行われている。今後、産業廃棄物の発生量がさらに増加し、その処理に関する法規制が厳格化されれば、日系などの外資系企業を中心に、産業廃棄物の適正処理に関する需要が高まることが考えられる。そうなれば、日本で培われた有害な産業廃棄物の最終処理、非鉄金属のリサイクル、セメント原燃料化などの技術を有する企業に大きなビジネスチャンスが訪れる。

 リサイクル、産業廃棄物処理ともに、ビジネスチャンスを拡大していくためには、制度や事業環境の改善をインドネシア側に提案していくことが必要である。日本の官民セクターが連携してインドネシアにコミットし、「同国の問題解決」と、「日本企業のビジネスチャンスの拡大」を両立させるような事業環境を構築していくことが期待される。

挿入写真

JICAや北九州市の支援を得て、西原商事がスラバヤ市に建設した一般ごみの中間処理施設。分別された有機ごみは、同社が試験運用する堆肥化センターで再資源化される



Page Top