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「環境新聞」2015年7月8日より

本格化する廃棄物処理・リサイクルビジネスの海外展開(1)
海外展開を考える上でのポイント/基礎情報を踏まえてビジネスモデルを検討

NTTデータ経営研究所
社会・環境戦略コンサルティングユニット
パートナー/ユニット長 村岡元司

 「2020年に約30兆円のインフラシステム受注」という目標を掲げ、わが国企業の活発な活動が続いている。廃棄物処理・リサイクルビジネスも例外ではない。インフラ輸出を成長戦略の柱とした13年以降、英国・中国・アイルランド等で、わが国企業のごみ焼却プラントのEPC受注が続いている。

 人口減少時代に入り、国内では廃棄物やリサイクル対象品の発生量が減少している。加えて、関連制度の整備が進み、ビジネスは成熟化している。成熟市場では、革新的なイノベーションがビジネスを一変させる可能性はあるものの、革新が起こらない限り、パイの奪い合い状態が続くことになる。一方、目を海外に転じると、経済力が向上した新興国では人口増加が続き、1人当たり廃棄物量も増加傾向にあり、廃棄物処理・リサイクルに資金が回り始めている。ここにビジネスチャンスがある。ただし、新興国にはそれぞれの歴史やビジネス慣行、特有の業界構造等があり、法制度も千差万別である。ビジネス展開を考える場合、こうした基礎情報を把握することが不可欠になる。

 今回の連載では、本格化し始めた我が国の廃棄物処理・リサイクルビジネスの海外展開について、その現状と課題、関連法制度、ビジネス動向等の最新情報を具体的な事例も交えながら紹介することとしたい。その第1回として、本稿では廃棄物処理・リサイクルビジネスの海外展開を考える際のポイントを提示することとしたい。

挿入図

 第一は基礎情報の把握である。把握すべき情報は、大きく3つある。一つは現地で求められている技術(のレベル)である。ここで注意すべきは適正技術という考え方だ。「最先端の技術なら、必ず現地で受け入れられる」訳ではない。先端的過ぎる技術が現地にマッチしないこともある。現地ニーズを把握し、適正技術を把握することが重要である。次に現地の制度・規制を把握する必要がある。例えば、「リサイクルのためには費用が必要であり、それを消費者が負担する」わが国の家電リサイクル法のような仕組みを新興国で普及させることは、容易ではない。廃家電など全てが有価で引き取られることの多い新興国では、法制度もそれを前提にしたものになっていく。制度づくりからビジネス創出を図る場合でも、新興国に根付いた慣行の変更は容易でなく、その点を踏まえたビジネス検討が求められる。最後に、需供両面からの市場や業界構造の把握が必要となる。サービス対価は幾らか、新事業者に対する許認可の構造と実態等の情報の整理が重要になる。

 以上の基礎情報を踏まえた上で、どのようなビジネスモデルでの海外展開を図るのかを検討することになる。部品やパーツの供給者となるのか、EPCコントラクターとなるのか、あるいは現地にサービス提供会社を提供し廃棄物発電サービスやリサイクルサービスを提供する事業者になるのか、実現可能性を踏まえた判断が必要になる。

 最後に、事業実現のための体制検討である。許認可を取得した企業と戦略的に連携するのか、新しい事業会社を設立するのかなど、基礎情報とビジネスモデルを踏まえた検討が必要になる。ハードルは高いが、今後の関連企業の奮起に期待したい。(原則毎月第2水曜掲載)



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