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2017年8月28日

TOKACHI とかち  Grand  ぐらん  Nuts  なっつ”プロジェクト
-落花生を軸とした高付加価値農業の実践と地域内バリューチェーンの創出-

株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:川島祐治)と国立大学法人帯広畜産大学(本部:北海道帯広市、学長:奥田潔)、帯広信用金庫(本店:北海道帯広市、理事長:髙橋常夫)、株式会社NTTデータ北海道(本社:北海道札幌市、代表取締役社長:逵本秀久)、木野農業協同組合(本部:北海道音更町、代表理事組合長:清都善章)、ニュウテックスラボ(会社:北海道帯広市、代表:田中一郎)は、今後、十勝において落花生を軸とした地域振興事業を目指し、地域内バリューチェーンを創出していきます。また、十勝産落花生、およびその加工品を“TOKACHI Grand Nuts” (注1)の名のもと国内外に普及するブランド戦略を展開します。
 長期的な達成目標として、10年後を目処に十勝を落花生生産日本一にすることを旗印に、落花生の国内消費量を高め落花生に対する食文化の革新を目指します。

【背景】

 十勝は北海道東部に位置し、農家数が6000戸、一戸あたりの経営耕地面積約38haに達し、小豆、小麦、甜菜、ジャガイモの4作物を基幹とした輪作が行われ、日本最大の食料生産基地となっています。
 一方、農家は貿易協定に伴う市場激化の懸念、農業従事者の高齢化に伴い、「中規模高収益型農業」への生産体系の転換を指向してきています。
 落花生は世界各地で栽培され生産量は豆類の中で大豆に次いで多く、その消費の約半分が食用オイルです。また、加工適性が高く、ペーストにした上で多様な用途で利用されています。さらに近年では、機能性栄養食品としても注目を集めています。一方、国内の年間消費量は小豆に匹敵する約9万トン(内自給率10%)で、世界的に見ると著しく低く、国民1人当たりに換算した消費量は米国の1/10に満たない数値です。とりわけ落花生オイル、ペーストなどの加工品の消費が少なく新たなマーケティング戦略を展開することで、一層の規模拡大を推し進めることが可能と考えています。(下部参照:「なぜ、十勝で落花生か」)

【概要】

 国立大学法人帯広畜産大学と株式会社NTTデータ経営研究所は落花生栽培試験の3年間の共同研究を行ってきました。その結果、移植栽培や不織布による被覆などを取り入れることにより、十勝において全国平均を上回る単位面積収量が得られる成績を収め、十勝が落花生の生産地として適性があることを実証しました。
 同時に検討を進めてきた本プロジェクトメンバーは、十勝で栽培された落花生をオイル、ペーストに一次加工し、市場展開・食卓開発するため、研究機関、生産者、加工業者、流通業者、コンサルティング会社、IT企業、金融機関、福祉法人等が連携して農業を基盤とする地域振興事業を目指し、地域内バリューチェーンを創出していきます。個々の農家や生産団体によるものではなく、地域全体をひとつの母体とした地域6次産業化の取り組みとして、他地域に先駆けたモデル事業になると考えています。
 また、十勝産落花生、およびその加工品を“TOKACHI Grand Nuts” (注1)の名のもと国内外に普及するブランド戦略を展開します。
 長期的な達成目標として、10年後を目処に十勝を落花生生産日本一にすることを旗印に、落花生の国内消費量を高め落花生に対する食文化の革新を目指します。

(注1) “TOKACHI Grand Nuts”(とかち ぐらん なっつ)
“TOKACHI Grand Nuts”は株式会社NTTデータ経営研究所で商標登録申請中です。
落花生の英語名は“Ground Nuts”ですが、将来の発展・可能性を秘めて「偉大な・母なる」という語彙をもつフランス語の“Grand”と英語の“Nuts”を組み合わせて造語にしました。アルファベット表記は、国内外で同一ブランドにて展開することを意味します。

【今後3年間のプロジェクトの取り組み】

 本プロジェクトは、落花生を軸とした地域内バリューチェーンを構築するため、今後3年間で以下を実施して参ります。

図2 地域内バリューチェーンの構築
 
  • ⑴ 十勝の風土に適した落花生栽培法の確立
    • ① 栽培法の改善による作業の省力化
      • 栽植方法や施肥方法の違いが落花生の生育に及ぼす影響を評価し、収量を維持しつつ作業の省力化を図れるような栽培方法の確立
      • 落花生栽培に適し十勝農業に合う農業機械の開発
    • ② 適性品種の選抜
      • 十勝の冷涼な気候に適した優良品種、落花生オイル、ペースト加工に適した優良品種の選抜
      • 品種間の交雑により、新品種の育成
    • ③ 気象情報の活用による栽培の安定化
      • 栽培地において取得した気象データ等のビッグデータの解析により、落花生の生育予測や気象の短期予測を可能とした落花生栽培の安定化
    • ④ 一般農家による落花生の試作・拡大
      • 上述で得た知見をもとに一般農家に落花生を試作してもらい、そこで得られた意見を帰納的に課題に反映
  • ⑵ 生産された落花生の品質に適合した加工技術の確立
    • ① 成分や機能性を指標とした十勝産落花生の品質評価
      • 収穫された落花生子実について、タンパク質量や脂質量、糖含量など基本栄養成分の定量実施
      • 脂肪酸組成やビタミン組成、抗酸化作用物質組成など食品機能性に関与する物質の組成を分析
    • ② 利用用途に合わせた落花生加工技術の確立
      • - 落花生の搾油工程、「焙煎→搾油→貯蔵」
      • - 落花生のペースト加工工程、「焙煎→磨砕→貯蔵」
      • 十勝産落花生の風味と機能性を活かすための焙煎法(焙煎の温度や時間)、搾油法(搾油の温度や圧力)、および磨砕法(磨砕サイズ)を開発
      • 得られた落花生オイルやペーストの品質を長期間維持するための貯蔵法を開発
  • ⑶ 十勝産落花生の市場競争力の獲得
    • ① ブランド化
      • “TOKACHI Grand Nuts”ブランド戦略の展開
    • ② 流通と連携した市場開拓
      • 地産地消の有力チャネルとの連携による、十勝産落花生、落花生オイル(搾油後落花生含む)、ペーストの一次加工品を活用した新商品の開発
      • まずは、北海道内をターゲットに市場開拓と商品の浸透
    • ③ 食卓開発による市場の拡大
      • 十勝産落花生、落花生オイル(搾油後落花生含む)やペーストを用いた料理レシピを開発
    • ④ とかちSCM(注2)センター構築に向けたパイロットの実施
      • 生産、加工、販売/消費のバリューチェーンを構築するには、ICTインフラの構築が必須
        まずは、生産、加工、流通の約9割がFAXである受発注機能に対し、既存のVAN(注3)サービスを活用しパイロットを実施

(注2) SCM( Supply Chain Management ) 供給連鎖管理。供給者から最終消費者までの業界の流れを統合的に見直し、プロセス全体の効率化と最適化を実現するための経営管理手法。

(注3) VAN( Value Added Network ) 付加価値通信網。業界毎にデータや帳票、商品コードを標準化しメーカ、卸、小売等の情報伝達を円滑にするクラウドサービス。

  • ⑷ 落花生生産を通じた人材育成と雇用創出
    • ① 人材育成のための指導書の作成
      • 栽培試験や加工試験によって得られた知見をもとに、十勝で落花生を栽培するための技術、および落花生を加工するための技術を指南する指導書を作成
    • ② モデルファームの整備
      • 国立大学法人帯広畜産大学内に、落花生栽培を実演するためのモデルファームを作り、農家や就農希望者、学生等に対する指導を実施
    • ③ 落花生を通じた雇用の創出
      • 社会福祉法人慧誠会帯広ケア・センターと連携し、障害者が主体となって落花生の生産、加工、販売を実践することにより、地域障害者の雇用機会の創出を行う。
      • 農業高等学校などに情報の提供と支援を行い高校生に栽培を体験してもらうことにより、将来の落花生農家育成のための支援を行う。

【各社の役割】

株式会社NTTデータ経営研究所
全体構想、プロジェクトマネジメント、知的財産戦略、市場競争力の獲得・強化を推進。

国立大学法人帯広畜産大学
全体構想、栽培方法研究、農業機械改良、搾油技術・ペースト技術の確立、機能性食材研究を推進。

帯広信用金庫
地域の経済振興のファンダメンタルとして全体構想、コーディネートを推進。

株式会社NTTデータ北海道
全体構想、生産地の気象データ等のビックデータ活用、SCM等のIT化を推進。

木野農業協同組合
先駆的JAとして今年度より試験栽培を開始。オイル、ペースト加工も視野に推進。

ニュウテックスラボ
代表者は今年3月まで帯広信用金庫にて本プロジェクトを担当。全体構想、コーディネートを推進。

【参照】「なぜ、十勝で落花生か」

⑴日本最大の食料生産基地
十勝は北海道東部に位置し、雄大な十勝平野を拓いてつくられた日本有数の農業地帯です。地域内の農家数は6000戸、畑の総面積は25.4万haと実に全国の畑の約12%を占めます。農家一戸あたりの経営耕地面積は38haに達し、十勝全体の食料自給率は1200%を超え、国内に類を見ぬ日本最大の食料生産基地となっています。(注4)
十勝では、小豆、小麦、甜菜、ジャガイモの4作物を基幹とした輪作が行われており、いずれの作物についても生産量は日本一です。また、十勝には農業に関連する大学や試験研究機関、企業が多数集まっており、「フードバレーとかち」構想のもとそれらが連携協力を行うことで農業の振興や地域内バリューチェーンの構築、安全で良質な十勝ブランドの確立を推し進めています。
一方、EPA(注5)や FTA(注6)の発効に伴う市場のグローバル化により、国産作物と輸入作物との価格競合が生じており、今後、この傾向の激化が懸念され、農家からは既往の作物に代替可能な新規作物の導入を求める声が上がっています。また近年では、農業従事者の高齢化に伴い、これまでの広大な畑を用いた大規模生産型農業から、市場価値の高い換金作物を中規模で栽培し収益を得る「中規模高収益型農業」へと生産体系の指向に転換してきています。
また、十勝の農業生産物は作物のまま出荷することが多く、加工して域外に出荷する食品加工率は残念ながら全国最下位となっています。

⑵希少換金作物である「落花生」
落花生は世界各地で栽培され、生産量は豆類の中で大豆に次いで多くなっています。日本ではテーブルナッツとして消費される印象がありますが、世界的には約半分が食用オイルとして消費されています。また、加工適性が高く、ペーストにした上で、ピーナッツクリームやピーナッツバター、菓子原料などと多様な用途で利用されています。さらに近年では、タンパク質や脂質、糖質、ビタミン類など栄養が豊富であることに加え、抗酸化作用を持つレスベラトロールや神経細胞の活性化作用を持つレシチンなどを含むことが明らかになり、機能性栄養食品としても注目を集めています。
落花生は日本人にもなじみの深い食材で、国内の年間消費量は約9万トンと、同じ豆類の小豆に匹敵する規模になっています。一方で、この落花生の消費量は世界的に見るとまだまだ低く、国民1人当たりに換算した消費量はアメリカ合衆国の1/10に満たない数値です。とりわけ日本では、落花生オイルの加工・流通が立ち後れているため、油糧としての消費が諸外国に比べて極めて少なくなっています。このことから、落花生の国内市場に関しては、オイル、ペーストに着目した新たなマーケティング戦略を展開することで、一層の規模拡大を推し進めることが可能と考えています。
一方、落花生の国内生産は1960年代を境に減少の一途をたどっています。作付面積と生産量はここ25年で1/3以下にまで縮小しました。現在、国内における落花生の約90%は千葉県と茨城県の2県において生産されています。しかしながら、両県とも就労者の高齢化や生産コストの高騰から栽培を諦める農家が後を絶たず生産量は激減している状況です。その結果、落花生の国内自給率は2016年時点で約10%と極めて低く、国産落花生は慢性的な供給寡少になっています。
農水省統計資料によると平成28年度の落花生の庭先取引価格は、60kg当たり5.8万円です。国立大学法人帯広畜産大学の圃場における栽培試験では、10a当たり300kg程度の収量が得られており、それをもとに試算すると粗収入は10a当たり20万円~30万円程度にもなります。比較のために、北海道の主要作物である小麦の粗収入の3倍程度となります。

⑶十勝における落花生生産の可能性
十勝をはじめ北海道では節分に大豆ではなく落花生を撒いて厄払いを行う習慣があり、落花生が食材としてだけではなく文化的にも広く市民に浸透しています。人々の落花生に対する関心は高く、2016年には「北海道ラッカセイサミット」が開催されており、生産者や流通業者、一般消費者が交流し落花生についての情報交換を行っています。
十勝における落花生の生産例は少ないですが、個々の農家や生産団体による小規模の商業栽培が行われており、栽培自体は可能であることが証明されています。昼夜の寒暖差が大きい十勝で育った落花生は品質に優れ、換金性が高く小規模な栽培であっても生産者にとって貴重な収入源となっています。また、十勝の農家は農業機械の所有率が高く圃場の基盤整備能力に長けているほか、大豆や小豆、金時など多くの豆類作物を栽培してきた経験や実績から豆類の栽培に対する技術的素養が高く、今後栽培規模を拡大していくことで、十勝は国産落花生の新たな生産基地になり得ると期待を寄せる食品企業も多くあります。

(注4) 十勝地域の数値は十勝総合振興局(2016十勝の農業の情報)、フードバレーとかち推進協議会の情報を元に記載

(注5) EPA (Economic Partnership Agreement) 経済連携協定

(注6) FTA (Free Trade Agreement) 自由貿易協定


【本件に関するお問い合わせ先】

■ 報道関係のお問い合わせ先
株式会社NTTデータ経営研究所
コーポレート統括部 経営企画部
広報担当
Tel:03-5213-4016(代)
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■ 内容に関するお問い合わせ先
株式会社NTTデータ経営研究所
ビジネスインキュベーション推進室
熊田 総佳
Tel:03-5213-4180(直通)

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