2016年7月11日
糖尿病発症予防には、ICTの継続活用が効果的
~広島で実証事業に100名参加、個々の取り組み状況に応じたフィードバックで健康指標が改善~
株式会社NTTデータ経営研究所
三原テレビ放送株式会社
公立大学法人県立広島大学
広島県三原市
株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:佐々木康志)、三原テレビ放送株式会社(本社:広島県三原市、代表取締役社長:勝村善博)、公立大学法人県立広島大学(所在地:広島市、理事長・学長:中村健一)、広島県三原市(市長:天満祥典)は、総務省より受託した「ICTを活用した効果的な予防・医療サービス提供の調査事業」において、健康サービスの利用有無やフィードバック機能による効果の差を実証しました。その結果、検査データや食事・アルコールの摂取状況、運動量等の個々の取り組み状況に応じたフィードバック等の情報提供(以下、「個別的情報提供」という)を継続することによって、腹囲、BMI、HbA1c値※などの健康指標改善をはじめ、糖尿病の発症予防につながると期待される成果を得ましたのでお知らせします。
※HbA1c値:赤血球中のヘモグロビンのうち、糖と結合している割合を示す値であり、過去1~2ヶ月の平均血糖値を示す。
【背景】
超高齢社会を迎え、今後も社会保障費の増加が見込まれる中、医療費適正化のために生活習慣病に対する予防の取り組みを普及させることは国の重要課題となっています。生活習慣病を予防するためには健康維持・増進から重症化予防まで幅広い取り組みが必要であり、個人の努力だけではなく、生活者に密着したサポート体制が必要となります。そのためには医療機関以外に地域の様々な資源を効率的・効果的に活用し、質の高い予防・医療サービスを提供できる仕組みをつくることが求められています。今回、総務省の調査事業では、ケーブルテレビやスマートフォン等のICTツールを用いた健康増進サービスを提供することによる健康意識の向上、健康的な生活習慣改善の効果、及び健康指標の改善状況等を調査しました。
【実施概要】
本事業は、2015年10月から半年間、広島県三原市をフィールドに実施し、三原テレビ放送を中心にケーブルテレビ、スマートフォン等を用いた健康増進サービスを構築しました。
調査では、健康状態等に応じて住民100名を3群に割付け、サービスの効果検証を行いました。各群の特徴は下記の通り※※となります。
- ア)コントロール群( 生活習慣改善への介入を行わない群(本実証の健康増進サービスを受けない群 ))
- イ)記録・閲覧のみの群( 食事・血圧・体重・運動量等データを登録し、データの閲覧が可能な群 )
- ウ)記録・閲覧+指導群( イ)のサービスに加えて取り組み状態に対するフィードバックが加わる群 )
ア)とイ)・ウ)の比較により、サービス利用有無の効果測定を行い、イ)とウ)の比較によってフィードバック機能の効果測定を行いました。効果検証にあたり、健康意識や健康行動の変容、健康指標の推移を確認するため、2015年10月・12月、2016年2月の3時点でHbA1c値、体重、腹囲の測定、サービス、フィードバック機能に関するアンケートを実施しました。(次頁の図表「実証参加者の割付と効果測定について」を参照)
※※参加者の属性は、30歳以上の男女で、HbA1c値が5.6%以上6.5%未満の方100名を対象として無作為に3群に割り付けたため、3群の間で性別・年齢についての偏りはありません。
実証参加者の割付と効果測定について
【主な成果】
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健康意識・健康行動の変容
生活習慣病予防サービス対象者の健康に対する意識は全体的に改善し、特にイ)記録・閲覧のみの群で有意に改善しました。健康行動について、運動頻度は3群間で差はみられませんでしたが、週当りの飲酒量(g/week)は、ウ) 記録・閲覧+指導群のみ事前・事後で有意に減少しました。
(「健康を意識した生活を送っているか」という質問に対して「そう思う」、「どちらかと言えばそう思う」と回答した人の割合)
健康意識の変容に関するアンケート結果
週当りの飲酒量 [g/週] の群別比較
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健康指標の改善
腹囲及びBMIは、ウ)記録・閲覧+指導群でのみ12月から2月の期間に有意に減少しました。HbA1c値は、イ)記録・閲覧のみの群、ウ)記録・閲覧+指導群で12月から2月の期間で変化がなく、ア)コントロール群のみ同期間で有意に上昇しました。これらの結果より、個別的情報提供サービスの対象者は、生活習慣の改善の重要性を認識して適正化に努め、また飲酒や食物繊維の摂取に積極的に取り組んだことが伺えます。なお、ウ)記録・閲覧+指導群ではHbA1c値が5.6以上から5.6以下に下がった利用者が10%増加(23%⇒33%)し、一部の参加者では本実証期間中にHbA1c値の改善がみられました。
健康指標(腹囲・BMI・HbA1c値)の群別比較
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利用者の購買行動への影響
実証に参加した店舗が取扱う食物繊維を多く含む商品などのうち定期レコメンドを出した曜日(火曜日と土曜日)・及び翌日にお勧め商品の購入が増加しました。レコメンド商品の配信がユーザの購買行動に影響を与えた可能性があると考えられます。
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医療費適正化効果の試算
日本人対象の大規模長期コホート研究結果を基にして、実証前から実証後にかけてHbA1c値が5.6以下になった人数から導くことのできる医療費適正化効果を試算しました。「2.健康指標の改善」において、ウ)記録・閲覧+指導群でHbA1c値が5.6以上から5.6以下に下がった利用者が10%増加(23%⇒33%)したことを述べましたが、HbA1c値が5.6以下に下がることで、糖尿病発症リスクが10%下がるという研究結果※から、三原市における5年後の医療費適正化効果は3,900千円/年になると期待されます。
※Yoriko Heianzaら: HbA1c 5·7–6·4% and impaired fasting plasma glucose for diagnosis of prediabetes and risk of progression to diabetes in Japan (TOPICS 3): a longitudinal cohort study. Lancet, 378, 147-155, 2011.
推計は、下記の条件を用いて行いました。
- ある条件の群の参加者の内、a%の方が終了後にHbA1c値5.6%以下に低下しました。
- 2,584名が本アプリを使用しました。(以下対象者のうち10%が本アプリを利用したとします。)
- 三原市の20歳以上の人口81,257人のうち31.8%が、HbA1c値が5.7-6.4%と推計(出所H25年 国民健康・栄養調査報告[厚労省])されます。
- 本調査事業の対象者の糖尿病予備軍の方が糖尿病と診断された場合は、初期段階の治療になると考えられることから定期の診察、検査、運動・食事指導、1剤の服薬として年間医療費は、年間約15万円とします。
- 上記の条件から、5年半後の削減可能と予測される年間医療費は、[2,584*0.1-{(1-a/100)* 2,584*0.1}]*150,000円と推計されます。
【まとめ】
三原市における事業は、住民の生活インフラとなっている地域の民間サービス事業者である三原テレビ放送が主体となり、ICTを活用した魅力あるサービスを提供することで住民の健康維持・増進を促進する新たな予防のあり方を検討するモデルです。本事業で検討した健康増進サービスである個別的情報提供サービスを日常的に継続利用することを通じて、利用者の健康意識・健康行動の変容、健康指標の数値改善がみられました。また、個人の健康活動の取り組み状態に対するフィードバックが健康行動の変容効果、健康指標の改善効果により大きな影響を与えました。本システムにより配信された情報提供は、個人の購買行動に影響を与えた可能性があり、個人の健康情報に即した情報提供サービスの有効性が期待されます。
【本件に関するお問い合わせ先】
■ 報道関係のお問い合わせ先
株式会社NTTデータ経営研究所
コーポレート統括部 経営企画部
井上、伊達、松浦
Tel:03-5213-4016
E-mail:
三原テレビ放送株式会社
中村
Tel:0848-63-8600(代)
公立大学法人 県立広島大学 保健福祉学部
細川
Tel:0848-60-1276
E-mail:
広島県三原市 総務企画部 経営企画課
藤井
Tel:0848-67-6270
■ 内容に関するお問い合わせ先
株式会社NTTデータ経営研究所
ライフ・バリュー・クリエイションコンサルティングユニット
北野、諸井
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三原テレビ放送株式会社
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公立大学法人 県立広島大学 保健福祉学部
細川
Tel:0848-60-1276
E-mail:
広島県三原市 総務企画部 経営企画課
藤井
Tel:0848-67-6270