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「小規模市町村における移住・定住の要因と生活状況に関する調査」

調査概要/調査結果

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調査概要

  1. 調査対象: NTTコム リサーチ クローズド調査(*1)
          20代~50代以上の男女、町村または4万人以下の市居住者
  2. 調査方法: 非公開型インターネットアンケート
  3. 調査期間: 2014年1月27日~2014年2月6日
  4. 有効回答者数: 1,050人
  5. 回答者の属性:
    <年齢性別>   <地域別>
    男性 女性   北海道 109
    20~24歳 10 10   東北 180
    25~29歳 22 41   関東・甲信 135
    30~34歳 32 59   北陸 93
    35~39歳 88 77   東海 77
    40~44歳 122 88   近畿 101
    45~49歳 126 69   中国 119
    50~54歳 118 54   四国 108
    55~59歳 94 40   九州・沖縄 128

    合計

    612 438   合計  
    <市町村規模>
    市町村規模 実数 %
    全体 1,050 100.0
    町村 28 2.7
    市(~1万人未満) 60 5.7
    市(1万人以上~2万人未満) 319 30.4
    市(2万人以上~3万人未満) 366 34.9
    市(3万人以上~4万人未満) 277 26.4

注意)本調査では大規模な全国調査で見落とされがちな小規模市町村の住民の意識を調査することを目的とした。そのため、サンプル取得にあたっては、(1)町村、(2)市(1万人以下)、(3)市(2万人以下)、(4)市(3万人以下)、(5)市(4万人以下)と人口規模の小さな市町村から規模の大きな市へと対象を広げて、その数が1000を超えるまで回収を行った。よって、全データを総合したグラフでは、4万人以下の市町村の住民に対する無作為抽出のデータとは異なり、やや小規模市町村の住民の回答が強調される結果となることに注意されたい。 また、回答者のうち男性が女性の1.5倍になっていること、35歳未満の回答者が全体の17%であり、少ないことにも注意が必要である。

【補足】
(*1)NTTコム リサーチ http://research.nttcoms.com/
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(http://www.nttcoms.com/)が提供する、高品質で付加価値の高いインターネットリサーチ・サービスである。 自社保有パネルとしては国内最大級のモニター基盤(2014年7月現在 200万会員)を保有するとともに、「モニターの品質」「調査票の品質」「アンケートシステムの品質」「回答結果の品質」の4つを柱とした「クオリティポリシー」に基づく徹底した品質確保を行い、信頼性の高い調査結果を提供するインターネットリサーチとして、多くの企業・団体に利用されている。



調査結果

1. 移住定住を推進するために必要な施策

 人口減少時代を迎えている中で、消滅自治体と言われる指標も出ており、各地域は今後の人口維持について早急な対応に迫られている。本調査は特に小規模市町村が人口維持をするために必要な移住・定住対策を評価・検討することを目的とした。

1.1. Iターン・Uターンのきっかけと状況

◆小規模自治体ほど同じ地域で暮らしている人の割合が少ない

 全体の傾向としては地域から長期間出て生活したことはない人が40%前後であり、Uターン者の割合は30~40%であるが、とくに小規模市町村になるほど地域から長期間出て生活したことがない人の割合が少なく、Uターン者の割合は小規模市町村になるほど多い傾向がみられる。一方で、町村部ではやや遠方からのIターン者の割合が多いのが特徴的である。

 小規模市町村では高等教育機関が少ないため、進学・就職等による転出も多いことが要因として考えられるが、Uターンして戻る割合が高いことも要因として考えられる。【図1-1-1】

【図1-1-1】居住市町村規模別UIターン割合

【図1-1-1】居住市町村規模別UIターン割合
◆Iターン・Uターンのきっかけは「仕事」、「勧誘」、「自然環境」

 Iターン・Uターンのきっかけを全体的に見ると、「希望する仕事の募集があったから」が20.5%で最も多く、次いで「地域(自治体・住人・家族等)からの勧誘」が18.2%、「自然環境などに惹かれて自ら希望した」が13.2%であった。地域の移住定住施策によるものとしては「子育て住宅・定住住宅・公営住宅などの整備」が2.2%、「子育て施策や福祉施策の充実を知ったため」が1.2%であり、これらが大きな移住理由にはなりえていない様子が伺われた。また、「地域おこし協力隊」、「新・田舎で働き隊!」、「集落支援員」、「緑のふるさと協力隊」が合計1.7%となっており、少ないながらも地域の中にこのような施策により移住している人が表れてきていることが認識できた(※1)。【図1-1-2】

 Iターン・UターンのきっかけをIターン・Uターンの種別に見てみると、近隣地域からのIターン者は「希望する仕事の募集があったから(19.7%)」に次いで「地域(自治体・住人・家族等)からの勧誘」が17.9%で高かったが、遠方地域からのIターン者は「希望する仕事の募集があったから(20.3%)」と同率で多いのは「自然環境などに惹かれて自ら希望した」が多い。また、通学時に一時転出したUターン者は「希望する仕事の募集があったから」が33.1%であり、Iターン者やそれ以外のUターン者と比較しても多い。また、通学時以外にも仕事・結婚などで一時転出していたUターン者は、「地域からの勧誘(24.0%)」が多いのが特徴的で、「親との同居(介護・経済的な理由・その他)(13.5%)」も多いほか、他にはない「病気療養・都会での生活に疲れたから」などの理由が多い。 【図1-1-3】

 Iターン・Uターンを増やすためには、地域における「仕事」の受け皿が必要なのは言うまでもないが、地域側からの熱心な勧誘や、自然環境の良さなどもその引き金になっていることを認識し、Iターン・Uターンを増やそうと考える地域はその熱意や自然の豊かさなどを伝えていくことも重要である。

【図1-1-2】UIターン者の地域への移住きっかけ(SA)(N=599)

【図1-1-2】UIターン者の地域への移住きっかけ(SA)(N=599)

※1:町村および4万人未満の市の人口は約1,700万人であるが、地域おこし協力隊、田舎で働き隊、集落支援員、みどりのふるさと協力隊の現役隊員および卒業生の合計はその1%である10万人に遠く及ばないため、1.7%の回答はやや多く表れている。

【図1-1-3】UIターン種別地域への移住きっかけ(SA)

【図1-1-3】UIターン種別地域への移住きっかけ(SA)

1.2. 移住定住施策

◆移住定住施策として最も効果があると回答されたのは、「子育て支援(保育園整備、保育料軽減、医療費支援、出産祝い金等)」

 居住地域において現在実施していると認識している「移住・定住」促進施策、および現在実施している有効だと思う・今後推進すると良いと思う施策について質問をした。【図1-2-1】

 移住定住の施策として最も効果があると回答されたのが「子育て支援(保育園整備、保育料軽減、医療費支援、出産祝い金等)(29.8%)」であったように、子育て支援策を充実させることにより、移住者の獲得や住民の定住につながる。さらに、これは、出生数を増やすことにも直結しており、地域の人口維持には大変重要な要素である。移住者の獲得は自治体間の競争ともなり得るため、出生数を増やす取り組みは他地域との関係性を考える上でも大変望ましい人口維持の方法である。

 次いで、効果が高いとの回答が多かったのは、「医療機能整備」であった。本調査の対象となっている人口の少ない自治体では、高齢化が進んでいる傾向が強いが、一方で人口減少などにより医療機関が減少し、高齢者が地域に住み続けることができなくなるケースが多くみられるため、定住促進のためには医療機能整備が重要だと回答されているのだろう。これは子育て世代の移住定住への要因としても大きい。

 一方で、観光・交流産業の促進は29.0%が現在実施していると回答しているものの、有効・今後推進すべきとの回答は25.6%程度となっており、その効果があまり認識されていないものと考えられる。さらに、地域コミュニティ活動(自治会、青年部、婦人会、消防団、その他の活動)などは18.4%が現在実施しているが、有効・今後推進すべきとの回答は13.4%と効果が低いとの認識が強いことが伺われる。

 逆に、現在実施している割合が少ないが、有効・今後推進すべきとの回答が多いのが「芸術家・ITビジネス・クリエイター等場所を選ばない職業の誘致」、「レストラン、カフェ、スィーツなど飲食店の振興」、「情報発信(メディア、WEBサイト、ポスター、移住フェア等への出展など)」であり、これらの施策に対する地域への期待が大きいことが分かった。

【図1-2-1】現在実施されている移住定住施策および有効・今後推進すべき移住定住施策

【図1-2-1】現在実施されている移住定住施策および有効・今後推進すべき移住定住施策

1.3. 地域への想い

◆「幸せ」と感じる人は市町村規模が大きくなるほど増加傾向

 「あなたは今幸せですか」の問いに対し、「幸せである」と回答したのは町村部では3.6%だったのに対し、市町村損規模が大きくなるほどその割合は高くなり、3~4万人市部では18.1%であった。ただし、「幸せ」と「まあまあ幸せ」を合わせた割合や、「あまり幸せでない」と「幸せでない」の割合は市町村規模には影響されなかった。【図1-3-1】

 また、「現在住んでいる地域が好きですか」という問いに対しては、市町村規模ごとの傾向は見られなかった。【図1-3-2】

 市町村規模が小さいほど「幸せである」の回答者が少なくなるということは、事前に予想していた結果とは逆であった。その要因については年齢や収入等との相関分析が必要だが、要因を分析して、どのような市町村でも「幸福感」を感じられるような地域づくりをしていくことが重要だと考える。

【図1-3-1】市町村規模別幸福度

【図1-3-1】市町村規模別幸福度

【図1-3-2】市町村規模別地域愛

【図1-3-2】市町村規模別地域愛
◆女性より男性の地域愛が強い

 「現在住んでいる地域が好きですか」という問いに対し、女性よりも男性の方が「とても好き」、「まあ好き」の割合が10%以上多く、「あまり好きではない」と「まったく好きではない」の割合が10%近く少なかった。【図1-3-3】

【図1-3-3】男女別地域愛

【図1-3-3】男女別地域愛
◆20代前半から後半への移行時期が地域愛に対する思いが二分される時期

 「現在住んでいる地域が好きですか」という問いに対し、20~24歳は「とても好き」との回答がなく、「まったく好きではない」との回答も見られなかった。しかし、25~29歳になると「とても好き」や「まあ好き」の割合が55.6%と高くなるが、「あまり好きではない」と「まったく好きではない」を合わせた割合も27.0%と増加しており、20代の中頃が地域愛に対する分かれ目になる可能性が示唆される。これも詳細な要因分析が必要となるが、「20代前半」が主体となった地域活動といった若者の地域愛が醸成される場づくりなど、地域で可能な支援を検討していくことも地域の定住者を増やす要因になるのではないかと考えられる。【図1-3-4】

【図1-3-4】年代別地域愛

【図1-3-4】年代別地域愛
◆年収が高いほど、地域愛が強い

 「現在住んでいる地域が好きですか」という問いに対し、年収が高いほど「まあ好き」の割合が多く、地域愛が強い傾向が見られた。しかし、「とても好き」の割合は年収に関わらず10%弱であった。つまり、「地域がとても好き」な人は世帯年収の額には左右されないが、傾向としては世帯年収が高いほど地域愛が強く、世帯年収の低い人は「地域がまったく好きではない」割合が高くなる傾向が見られた。【図1-3-5】

【図1-3-5】世帯年収別地域愛

【図1-3-5】世帯年収別地域愛
◆世帯年収が高いほど幸福度も高い

 「現在幸せですか」という問いに対し、世帯年収が高いほど「まあ幸せ」の割合が多く、幸福度が高い傾向が見られた。しかし、「とても幸せ」の割合は世帯年収に関わらず10%弱であった。【図1-3-6】

 つまり、世帯年収が高いほど幸福度が高く、世帯年収が低いほど幸福度が低い傾向が見られた。これは、一般的な傾向と変わらないが、近くに田畑や海がある地域では野菜を自給したり漁をしたり、知り合いから安く譲ってもらえるという“経済的な指標では見えない豊かさ”について、評価のできる分析が必要である。

【図1-3-6】世帯年収別幸福度

【図1-3-6】世帯年収別幸福度


2. 生活について

2.1. 満足度

◆食事や居住環境や睡眠時間などの満足度が高く、交通や収入・経済的なゆとりについて不満が多い

 食事、居住環境など各項目について、5段階での満足度調査を行った。最も満足度が高いのは「食事」で90%が満足から普通であった。また「家族との時間」、「睡眠時間」、「居住環境」、「生活全般」、「地域とのつながり・関係」なども概ね80%以上が満足から普通であり、満足度の高い傾向が見られた。一方、「近隣都市への交通」、「地域内交通」などの交通面や、「経済的なゆとり」や「収入」など経済面では不満からやや不満が半数以上となっており、満足度の低い状況が浮き彫りとなった。【図2-1-1】

【図2-1-1】生活における満足度

【図2-1-1】生活における満足度

2.2. 生活状況

◆買物は 地域内の大型スーパーやコンビニが多く、個人商店や直売所・道の駅は少ない

 買い物先としての平均的な利用状況を聞いたところ、「市町村内の大型スーパー」の利用者が最も多く、85.3%が月に1回以上利用している。次いで「コンビニエンスストア」の利用者も多く、77.3%が月に1回以上の利用者であった。

 また、「インターネットで購入」は60.6%が月に1回以上の利用者であったが、本調査はインターネットによる調査であるため、平均的な値よりも多く出ている可能性がある。

 一方で直売所はコンビニエンスストアの店舗数よりも多いというが、コンビニエンスストアと比較すると直売所や道の駅の利用者・利用頻度は非常に低い傾向がみられる。地域住民の利用ニーズを満たす道の駅・直売所が良いという動きもあるが、現状では地域住民の生活ニーズにあった直売所や道の駅が少なく、利用頻度は低いということが推測される。【図2-2-1】

【図2-2-1】日常的な買物の店舗種類と頻度

【図2-2-1】日常的な買物の店舗種類と頻度
◆一か月の世帯出費は10~20万円未満が約半数

 一か月の平均出費額は「10~15万円未満」と「15~20万円未満」が24%で最多であり、合計すると全体のほぼ半数となっている。一方で「10万円未満」の割合は16%、「30万円以上」の割合は8%であった。【図2-2-2】

 また、出費項目の中で最も平均値が高いのが「食費」で37,495円、次いで「住宅費」で28,398円、「高熱水道費」23,050円であった。【図2-2-3】

【図2-2-2】あなたの世帯の平均的な一カ月の出費を教えて下さい

【図2-2-2】あなたの世帯の平均的な一カ月の出費を教えて下さい

【図2-2-3】一カ月の出費の内訳

【図2-2-3】一カ月の出費の内訳
◆世帯年収は400~600万円が28%で最多、200万円未満は10%、1000万円以上は7%

 世帯年収額は「400~600万円」が28.0%で最多であった。また、「600万円以上」は37.5%、「800万円以上」は17.6%、「1000万円以上」は7.3%であった。一方で「200万円未満」は9.8%、「400万円未満」は34.5%であった。【図2-2-4】

【図2-2-4】世帯年収

【図2-2-4】世帯年収
◆世帯収入が多いほど、自給自足・お裾分けなどの実施が多い

 世帯収入が少ない人も、自給自足またはお裾分けなどで生活が成立することを仮説としたが、収入が少ない人ほど自給自足やお裾分けの金額換算値が低い傾向が見られた。一方で、月額1万円分以上相当の自給自足・お裾分けがある割合は、全体の2割以上でありどの収入額でも大差はなく実施されていることが分かった。【図2-2-5】

【図2-2-5】収入別「自給自足・お裾分けの月額換算額」

【図2-2-5】収入別「自給自足・お裾分けの月額換算額」
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