調査結果
1. 貸付残高・貸付件数の推移と今後の見通し
貸金市場動向や規模を把握するため、【消費者向け/事業者向け】および【無担保/有担保】の2つの軸による4種類の貸付種類について、貸付残高および貸付件数(時期は、2006年9月から2008年3月までの4半期)を調査した。(*1) 【図1および図2参照】
その結果、貸付残高は合計で17.4兆円(2006年10月)から15.2兆円(2008年3月)へと12.6%減少し、なかでも、貸付残高シェアの大きい消費者向け無担保貸付が14.2兆円から12.3兆円へと13.8%、事業者向け無担保貸付が7,400億円から6,000億円へと18.7%減少した。一方、貸付件数は、2,456万件から2,167万件へと11.8%減少し、貸付残高と同様、消費者向け無担保貸付が2,397万件から2,122万件へと11.5%、事業者向け無担保貸付が39万件から26万件へと33.0%減少した。
(*1)ここでは、回答者全体のうち、4半期すべてに回答した回答者のみを集計している。
【図1 貸付残高の推移】
【図2 貸付件数の推移】
次に、消費者向け無担保貸付の貸付残高の今後の見通しについて尋ねたところ(【図3】)、今後も「減少する(見通し)」と回答した貸金事業者は、75%を占めており、依然として、市場全体が縮小傾向にあることが読み取れた。
さらに、「減少する(見通し)」と判断した根拠を追加分析したところ(【図4】)、「改正貸金業法の施行」(91%)を挙げる貸金事業者が最も多く、「利息返還請求の増加」(52%)、「利用者の借入意識の変化」(39%)、「自社における与信審査モデルの変更」(38%)が続く結果となった。
【図3 貸付残高の今後の見通し(消費者向け無担保貸付)】
Q:貸付に関する各項目の今後の見通しについて、それぞれ該当する番号1つに○印をつけて下さい。
【図4 貸付残高の減少見通しの判断根拠(消費者向け無担保貸付)】
Q:前の問でご記入いただいた、貸付に関する各項目の今後の見通しを判断する根拠として、あてはまる考え方をすべて選び、該当する番号に○印をつけて下さい。 (複数選択式)
2.改正貸金業法の施行内容と、貸付残高の減少見通しの関係
改正貸金業法の施行内容の具体的にどのような内容が、貸付残高の減少(見通し)を判断する根拠となっているか確認したところ(【図5】)、「総量規制の導入(過剰貸付の禁止)」(86%)が最も高く、「上限金利の引下げ(利息制限法の上限金利を超える契約の禁止)」(64%)が続く結果となった。
【図5 改正貸金業法の施行内容における貸付残高の減少見通しの判断根拠(消費者向け無担保貸付)】
Q:改正貸金業法の施行内容のどのような内容が、問4.3.でご記入いただいた、貸付に関する各項目の今後の見通しを判断する根拠となっておりますか。該当する番号すべてに○印をつけて下さい。 (複数選択式)
3.初期審査の今後の見通し
新規借入申込みに対する初期審査姿勢の今後の見通しについて尋ねたところ(【図6】)、「(今後)厳しくする」と回答した比率が61%にのぼり、改正貸金業法の完全施行を見据えた与信の厳格化が進むことが予想される結果となった(なお、直近1年間の審査状況においても、「厳しくした」の比率が59%であった)。
「厳しくする」と回答した比率を貸付残高規模別にみると、「5,000億円超」の大規模事業者が86%と最も高く、与信厳格化の影響が広範囲にわたると考えられる結果となった。
【図6 初期審査姿勢の今後の見通し(消費者向け無担保貸付)】 Q:貴社の初期審査(新規借入申込者に対する審査)の状況において、直近1年の審査状況および今後の審査状況の見通しについて、それぞれ該当する番号1つに○印をつけて下さい。
次に、前述の初期審査姿勢を「厳しくする」と回答した事業者について、与信対象先を各属性に分類した時の「改正貸金業法の完全施行による影響の可能性」に関し、追加分析を行った。 (【図7】)
その結果、初期審査姿勢を「厳しくする」と回答した貸金事業者は、「自営業」「パート・アルバイト・派遣」「年収400万円未満」「他社借入件数3件以上」に当てはまる個人の70%以上が法改正の完全施行の影響を受けると判断していたことが分かった。
「定職がなく所得も低く、他社借入件数の多い」資金需要者は、貸金業法改正によって資金調達が困難となる度合いを増す可能性が高い。
【図7 初期審査厳格化事業者による、完全施行に伴う与信姿勢の変化(消費者向け無担保貸付)】
Q:3条施行・4条施行による影響の可能性について、各属性の分類ごとに、それぞれ該当する番号1つに○印をつけて下さい。
4.上限金利引下げへの対応
上限金利の引下げが実施された場合の影響度を把握するため、「直近月末時点の新規貸付先(新規先)」における、「上限金利引下げに伴い対応が必要な貸付先比率」を調査した。 (【図8】)
消費者向け無担保貸付の場合、「対応済み(0%)」の回答割合は、貸付残高5億円超の貸金事業者で63%~68%となった一方、「5億円以下」の小規模事業者は33%となった。
また、事業者向け無担保貸付の場合、同じく「対応済み(0%)」の回答割合は、「5,000億円超」の大規模事業者が100%となった一方、「5億円以下」の小規模事業者が46%、「~500億円以下」の貸金事業者は56%となった。
【図8 上限金利引下げに伴い対応が必要な貸付先比率】
Q:上限金利の引下げによって、何らかの対応の必要がある貸付先比率は、直近月末の新規貸付先のうち、おおよそどのくらいですか。それぞれ、該当する番号1つに○印をつけて下さい。なお、貸付停止先を除いて、ご回答下さい。
次に、前述の「上限金利引下げに伴い何らかの対応が必要な貸付先比率」について、与信対象先の属性別構成比の追加分析を行った。 (【図9、図10】)
まず、消費者向け無担保貸付の場合、年収別では、「対応済み」の貸金事業者は、「中高所得者(年収300万円以上)」の割合が5.4割を占め、「過半が対応未済」の貸金事業者は、「低所得者(年収300万円未満)」が5.9割を占める結果となった。
また、職業別では、「対応済み」の貸金事業者は、「給与所得者」(5.3割)、「自営業」(1.4割)、「非正規社員(パート・アルバイト・派遣)」(0.7割)、「主婦(主夫)」(0.6割)の構成比となった一方、「過半が対応未済」の貸金事業者は、「給与所得者」(4.6割)、「自営業」(1.8割)、「非正規社員(パート・アルバイト・派遣)」(1.2割)、「主婦(主夫)」(0.9割)という結果となった。
【図9 資金需要者の属性別構成比-上限金利引下げ対応状況別 (消費者向け無担保貸付)】
Q:「直近月末時点における消費者向貸付の新規契約先」について、各属性の分類に従い先数比率を、概算でご記入下さい。
一方、事業者向け無担保貸付の場合、「対応済み」の貸金事業者は、「株式会社」(4.6割)、「個人事業主」(2.6割)の比率となったが、「過半が対応未済」の貸金事業者は、「個人事業主」(5.3割)、「株式会社」(2.0割)という結果になった。
貸金事業者が上限金利引下げに合わせて与信見直しを図った場合、その影響は、事業規模の小さい法人や個人事業主に生じる可能性が大きい。
【図10 資金需要者の属性別構成比-上限金利引下げ対応状況別 (事業者向け無担保貸付)】
Q:「直近月末時点における消費者向貸付の新規契約先」について、各属性の分類に従い先数比率を、概算でご記入下さい。
5.総量規制の導入への対応(消費者向け無担保貸付)
総量規制が導入された場合の影響度を把握するため、消費者向け無担保貸付について、「2007年度末時点で正常取引中の貸付先における総量規制に抵触しそうな貸付先比率」を調査した。 (【図11】)
「ほぼ対応不要(0%~5%)」の回答割合をみると、「5億円以下」の小規模事業者が22%となった一方、「5,000億円超」の大規模事業者は0%という結果であった。また、「過半が対応必要(60%超~100%)」の回答割合をみると、「500億円以下」の中小事業者が10%以下、「5,000億円以下」の事業者が18%、「5,000億円超」の大規模事業者が50%であった。
【図11 総量規制の導入時に規制に抵触可能性のある正常貸付先比率(消費者向け無担保貸付)】
Q:2007年度末の貸付先のうち、総量規制の導入によって、正常に返済しているにもかかわらず、借入残高が年収の3分の1を上回る利用者の比率は、おおよそどのくらいですか。該当する番号1つに○印をつけて下さい。
次に、前述の「2007年度末時点で正常取引中の貸付先における総量規制に抵触しそうな貸付先比率」について、与信対象先の属性別構成比の追加分析を行った。 (【図12】)
他社借入件数による構成割合をみると、「ほぼ対応不要(0%~5%)」の貸金事業者は、「他社借入件数0件」が4.1割、「3件以上」が2.5割となっている一方、「過半が対応必要(60%超~100%)」の貸金事業者は、「0件」が1.6割、「3件以上」が6.0割となった。
仮に、貸金事業者が総量規制の導入に合わせて、借入件数の多い申込み者から融資停止などの措置を講じると仮定すると、「4件以上」の借入申込者のほとんどが、その措置の影響を受けることが分かった。
【図12 資金需要者の属性別構成比-総量規制の導入への対応状況別 (消費者向け無担保貸付)】
Q:「直近月末時点における消費者向貸付の新規契約先」」について、各属性の分類に従い先数比率を、概算でご記入下さい。
以上
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