調査概要
【補足】 |
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<参考>分析軸について本調査では、「性別」、「年齢」、「役職」、「勤務先の従業員規模」の基本的な属性項目以外に、下記のような本調査独自の分析軸(2つ)を特別に設け、組織(会社)の中での相対的な位置づけの違いによる比較分析を行っている。 1. モチベーションの高さ(=仕事に対するやる気の程度)ビジネスパーソンが組織で働く上で「いかにやる気があるかどうか(モチベーションの高さ)」を分析軸の1つとした。その理由としては、例えば「仕事に対するやりがい」は、仕事(業務)自体の内容や職場の状況(上司とのかかわり等)によって大きく変化するものであり、また「仕事(会社)に対する満足度」は、その時々の状況や環境に応じて変化する、と考えたことに基づいている。ここでは「仕事に対するモチベーションが高いかどうか」を、「職場における相対的なやる気の違い(程度)」として位置づけた。仮説として、「職場における仕事に対するやる気の高さは、各個人の内面で変化することはあっても、組織全体の中で大幅に変化する(=顔ぶれが大きく変わる)ことは少ないのではないか」と考えたことを前提としている。 <付表>Q: あなたは、職場の中で「仕事に対するモチベーション」は高い方だと思いますか?
2. 評価の高さ(≒組織内で優秀な人材であるかどうか≒能力の高さ)組織で働くビジネスパーソンが、その組織内で「どの程度の優秀さであるか」、言い換えれば「能力の高さ」を、もう1つの分析軸とした。一般的に、どんな組織にも「2:6:2の法則」(*注2)が当てはまると言われているが、それぞれの意識や考え方がどのように異なるかを比較分析しようと試みている。実際の本人の評価結果に厳密に基づく必要はなく、あくまでも本人が自覚している「組織内での位置づけ」を前提とした。自己認識において「高いレベルにあると思っているか、低いレベルだと思っているか」という点こそが、当人の意識や行動に大きく影響を及ぼしているだろう、と想定したことに基づいている。 (*注2:組織を構成する集団において、「優秀な人が2割、普通の人が6割、優秀でない人が2割」という比率になりやすいという法則)
<付表>Q: 現在の会社(組織)における、あなたの評価(査定結果)はどのレベルですか?
調査結果(1)職場でのコミュニケーションの変化ビジネスパーソンが現在勤めている会社での仕事環境について、以前と比べてどのような変化が起こっているかを調べた。まず「職場でのコミュニケーション」について尋ねたところ、(以前よりも)「減ったと思う」(30.7%)の割合は「減ったと思わない」(38.2%)を下回っており、組織風土における健全な状況は保たれていると見ることができる。これを年代別に比較すると、「20代」において「減ったと思わない」の割合が高いが(51.2%)、これは彼らが職業人としてキャリアをスタートした時、既にeメール等のコミュニケーション手段が存在しており、それより上の年代のように直接対話によるコミュニケーションが中心であった時代を経験していないためであると考えられる。 特筆すべきは、モチベーションの高さによる違いであり、「モチベーション・高位」では(コミュニケーションが)「減ったと思わない」が過半数(52.6%)を占めているのに対し、「モチベーション・低位」では25.5%にすぎない。逆に「減ったと思う」は「モチベーション・高位」で24.5%、「モチベーション・低位」では40.7%と大きな開きが見られた。仕事に対するモチベーションの高い社員は、自ら主体的に働きかけて職場内でコミュニケーションをとっていることが予想され、逆にモチベーションの低い社員は、自らコミュニケーションをとりにいかないことが「コミュニケーションが減った」と思う要因になっているかもしれず、結果として仕事に対するやる気(モチベーション)の低下にも影響が及んでいるのではないかと想像できる。 <付表>Q: あなたは、「(以前よりも)職場でのコミュニケーションが減った」と感じていますか? (2)会社での人間関係の変化現在勤めている会社において、(以前よりも)「人間関係が希薄になった」と感じているかどうかを尋ねたところ、「希薄になったと思う」(35.8%)が「希薄になったと思わない」(33.1%)をやや上回った。これを男女別に比較すると、「男性」では「希薄になったと思う」(37.6%)の方が「思わない」(31.2%)よりも高かったのに対し、「女性」では「希薄になったと思わない」(42.1%)の方が「思う」(27.5%)よりも圧倒的に高かった。旧来の男性中心社会における人間関係が、現代の会社組織の中では次第に薄まってきている様子がうかがわれる。年代別に見ると、「20代」において「希薄になったと思わない」とする割合が高いが(46.5%)、これも前頁の結果と同様に、旧来型の会社組織での仕事経験を有していないことが理由として考えられる。 また、ここでもモチベーションの高さによる違いが顕著に表れている。「モチベーション・高位」では(人間関係が)「希薄になったと思わない」とする割合が48.3%と非常に高く、「希薄になったと思う」は28.1%にすぎないが、一方で「モチベーション・低位」では「希薄になったと思わない」が21.0%とかなり低く、「希薄になったと思う」は47.3%にも達している。モチベーションの高い社員は、能動的に職場での人間関係を構築していると考えられ、モチベーションの低い社員は受動的であるがゆえ、人間関係が希薄になったと感じていることが予想される。またこの傾向は、評価レベルの違いにおいても同様に見られ、「評価・下位」者の方が「評価・上位」者よりも(人間関係が)「希薄になったと思う」と感じている割合が圧倒的に高くなっている。 <付表>Q: あなたは、「(以前よりも)会社での人間関係が希薄になった」と感じていますか? (3)1人当たりの仕事量の変化現在勤めている会社において、(以前よりも)「1人当たりの仕事量が増えた」と感じているかどうかを尋ねたところ、「増えたと思う」の割合が約6割(58.7%)を占め、「増えたと思わない」(16.6%)を大きく上回った。少子高齢化社会の中で団塊世代が定年退職を迎え、生産年齢人口が急激に減少しつつあることも影響しているのではないかと推測される。「増えたと思う」とする割合を年代別に見ると、働き盛りの「30代」(62.5%)、「40代」(61.2%)において割合が高くなっており、また一般社員(57.9%)よりも管理職(62.2%)において高くなっている。管理職の仕事量増大については、高度化社会における管理内容の複雑化、管理項目の増加、フラット型組織の推進による管理人数(部下の数)の増加、等の理由も考えられる。企業規模別の比較では、少人数で数多くの業務を元々こなしていると思われる中小企業(300人未満)において、(仕事量が)「増えたと思う」とする割合が比較的低い(51.8%)のが特徴的である。 この「1人当たりの仕事量の変化」は、「モチベーションの高さ」や「評価レベルの高さ」にはほとんど関係しないことが明らかになった。「モチベーション・高位」の社員は、自ら積極的に仕事を取りにいっていることが予想されるため、結果として(仕事量が)「増えたと思う」とする割合が若干高くなっているが(63.1%)、「モチベーション・中位」、「同・低位」、また「評価・上位」、「同・中位」、「同・下位」のいずれも約6割の高い水準で(仕事量が)「増えたと思う」と答えており、社員の属性によらず(以前よりも)総じて仕事量が増えていることがわかる。 <付表>Q: あなたは、「(以前よりも)1人当たりの仕事量が増えた」と感じていますか? (4)他人への協力関係の変化現在勤めている会社において、(以前よりも)「他人を支援したり助け合う関係が減った」と感じているかどうかを尋ねてみた。その結果、「減ったと思う」が31.6%、「減ったと思わない」が31.5%と、ほとんど差は見られなかった。前述した「会社での人間関係の変化」と同様に、「男性」(28.8%)と比べて「女性」における「減ったと思わない」の割合が高くなっており(43.8%)、また「20代」においても「減ったと思わない」が48.0%と非常に高くなっている。旧来型の組織風土(≒男性中心社会)にあまりなじみがない属性においては、従来からの変化はあまり認識されていないが、年代が高くなるにつれて、(助け合う関係が)「減ったと思わない」の割合が低下しており、かつての日本社会における古き良き慣習が影を潜めつつあることがうかがわれる。 これをモチベーションの高さの違いによって比較してみると、「モチベーション・高位」では(助け合う関係が)「減ったと思わない」が43.2%に対して「減ったと思う」が26.6%、「モチベーション・低位」では「減ったと思う」が42.8%に対して「減ったと思わない」が21.0%と、明確な違いが見られた。モチベーションの高い社員は、他人への協力も惜しまず、何事にも積極的に取り組んでいる様子が見てとれる。言い換えれば、周囲の状況の変化には左右されず、絶えず主体的に考えながら仕事に取り組んでいるということだろう。評価レベルの違いによる比較においても似たような傾向は見られるが、モチベーションの高さによる違いほどには顕著な差異は見られない。モチベーションが低くても成績が上位である社員が存在するからであろう。 <付表>Q: あなたは、「(以前よりも)他人への支援や助け合う関係が減った」と感じていますか? (5)社内での議論時間の変化現在勤めている会社において、(以前よりも)「社内での議論が減った」と感じているかどうかを尋ねたところ、「減ったと思う」が28.1%であるのに対して、「減ったと思わない」が34.7%と、議論時間の減少を唱える者の方が少なかった。eメールによるコミュニケーションが普及し、遠隔地とのやりとりをはじめ、業務上の意思決定をメール上で行うケースも増えてきたと思われるが、前述した「職場でのコミュニケーション」がそれ程減少していないのと同様、「社内での議論」も決して減ってはいないことが明らかになった。以前よりも「仕事量」がかなり増えていることも影響しているのではないかと推測できる。ただし、これを年代別に比較すると、(議論が)「減ったと思う」は「20代」で19.7%、「30代」で25.6%、「40代」で33.9%と、やはり年代を追うごとに比率が高まっている。「以前」のいつと比較するかにもよるが、少なくとも中高年層が経験したかつての時代と比べれば、議論や討議の時間は減ったということが言えそうである。 この「議論時間の変化」は、評価レベルの違いによって大きな差が見られた。「評価・上位」者では(議論が)「減ったと思わない」が41.3%、「減ったと思う」が22.7%であるのに対し、「評価・下位」者では「減ったと思わない」が26.7%、「減ったと思う」が36.7%にも達した。評価(=成績)の良し悪しと議論時間の因果関係は厳密には判明しないが、少なくとも本調査の結果を見る限り、成績優秀者の方が議論・討議により多くの時間を投入していることがうかがえる。一方で、成績下位者は、社内での議論にはもともと加わっていないのではないかという仮説も考えられる。 <付表>Q: あなたは、「(以前よりも)社内での議論・討議が減った」と感じていますか? (6)仕事における充実感の変化現在勤めている会社において、(以前よりも)「仕事の充実感が減った」と感じているかどうかを尋ねたところ、全体で4割強(41.8%)が「減ったと思う」と答えており、「減ったと思わない」(25.0%)を大きく上回った。前述した「1人当たりの仕事量」が増えていることの一方で、その見返り(⇒賃金・処遇の上昇や個人の成長など)が期待したほど得られていないということが仮説として考えられる。これを男女別に見ると、(充実感が)「減ったと思う」の割合は「男性」で43.5%であるのに対して「女性」では33.7%と格差があり、この「女性」の「減ったと思わない」が32.6%を占めていることからも、女性の社会進出が近年進んでいることがうかがわれる。 これをモチベーションの高さによる違いで比較してみると、極めて顕著な差異が見られた。「モチベーション・高位」における(充実感が)「減ったと思う」の割合は3割弱(28.4%)程度であるが、「モチベーション・中位」では38.3%、「モチベーション・低位」では実に7割近く(66.3%)にも及んだ。仕事を通じて充実感を得る機会が減ったことが、仕事に対するモチベーションの高さに直接影響していることが十分見てとれる。また、評価レベル差による比較においても同様の結果が見られ、「評価・上位」者における(充実感が)「減ったと思う」の割合はわずか27.3%であるのに対し、「評価・中位」者は42.3%、「評価・下位」者は58.0%と顕著な差があった。「評価・下位」と自覚している者は、そのような状態にあること自体に対し「充実感がない」と思っているとも考えられる。
<付表>Q: あなたは、「(以前よりも)仕事で充実感を得る機会が減った」と感じていますか? (7)賃金・処遇格差に対する意識現在勤めている会社において、(以前よりも)「処遇格差が拡大した」と感じているかどうかを尋ねたところ、全体の40.0%が「拡大したと思う」と答えており、「拡大したと思わない」の21.4%を大きく上回った。年代別に見ると、「拡大したと思う」の割合は、「20代」(26.8%)から「30代」(36.1%)、「40代」(45.4%)、「50代」(46.6%)と年齢が高まるにつれて上昇しており、日本社会における処遇格差が従来よりも拡大していることがはっきりと認識できる。これを(勤務先の)従業員規模別に見てみると、(処遇格差が)「拡大したと思う」の割合は、「300人未満」の企業で34.5%、「300~1000人未満」で39.1%、「1000~5000人未満」で41.0%、「5000人以上」で45.9%と、企業規模が大きくなるにつれて高まっていく傾向がある。近年の成果主義を反映した処遇格差は、大手企業になるほど今や当たり前の状態になりつつあることがうかがわれる。 一方、モチベーションの違いで比較したところ、(処遇格差が)「拡大したと思う」は「モチベーション・高位」で34.7%、「モチベーション・低位」で51.0%と大きな開きが見られた。モチベーションが低い社員は、処遇格差を意識していることが、そのまま自らのモチベーションに影響しているとも考えられるが、逆に処遇格差がない状態で彼らのモチベーションがどの程度上がるかは非常に興味深い。また、評価レベルの比較ではさらに大きな違いが見られ、(処遇格差が)「拡大したと思う」は「評価・上位」者で34.9%であるのに対し、「評価・下位」者は56.7%にも達しており、成績が振るわない社員の方が処遇格差をより強く認識していることが見てとれる。 <付表>Q: あなたは、「(以前よりも)賃金・処遇の格差が拡大した」と感じていますか? (8)正社員と非正社員の賃金・処遇格差について前頁の「処遇格差に対する意識」は、以前の状況と比べた変化に関するものであったが、ここでは今後の処遇格差がどうあるべきかを探ってみた。まず、「正社員と非正社員の間」で処遇格差が拡大していることについて、どのように思っているか尋ねたところ、(処遇格差が)「拡大した方がよい」は2割に満たず(16.3%)、逆に「縮小した方がよい」は3割近く(27.6%)を占めた。この「縮小した方がよい」の割合に「現状のままでよい」(45.4%)を合わせると、実に7割以上(73.0%)が「これ以上処遇格差(≒給与格差)はつけない方が好ましい」と思っていることが明らかになった。契約社員やパート・アルバイト等の非正社員は、その雇用形態によって大きな処遇格差を正社員との間につけられているが、実際の仕事内容やその働きぶり等、正社員と比べて遜色のないケースも目立つことから、このような結果が出たのではないかと想像できる。 これを各種属性別に比較してみたところ、どの属性にいても特に大きな傾向の違いは見られなかったというのが、この設問における特徴と言えるかもしれない。強いてあげれば、年代が「50歳以上」において、(処遇格差が)「縮小した方がよい」とする割合が34.5%と抜きんでて高かった。この年代における「拡大した方がよい」の割合は1割程度(12.8%)にすぎず、他の属性よりも「格差推進派」がやや少ないが、これは50歳以上の社員が、契約社員やパート・アルバイト等の非正社員の仕事ぶりや成果を、職場においてよく観察していることの表れであるかもしれない。 <付表>Q: あなたは、「正社員と非正社員の間」で、賃金・処遇の格差が拡大していることについてどのように思いますか? (9)正社員間の賃金・処遇格差について次に、「正社員の間」で賃金・処遇格差が拡大していることについて、どう思うか尋ねてみたところ、(処遇格差が)「拡大した方がよい」は28.1%で、「縮小した方がよい」の25.7%を上回った。前頁の「正社員と非正社員の間」の処遇格差については、「縮小した方がよい」の意見が大勢を占めていたが、ここではその逆の結果となったのが興味深い。絶対金額の格差が、「正社員と非正社員の間」では元々大きかったため、これを縮小する方向に意識が働き、「正社員の間」では格差自体があまり存在しなかったため、実態(=能力や成績)を反映した適切な格差をつけるべきという意識が働いたものと思われる。この「格差推進派」は、「女性」(19.7%)よりも「男性」(29.9%)に多く、また「一般社員」(25.2%)よりも「管理職」(34.9%)の方が多くなっている。それだけ、正社員間の能力や業績の個人差が大きいという実態を目の当たりにしているためであろう。なお、この結果を従業員規模別に比較しても、ほとんど大きな差は見られなかった。 一方、評価レベルの違いでこの意識がどのように異なるか比較したところ、極めて顕著な差が見られた。「評価・上位」者では、(処遇格差が)「拡大した方がよい」の割合が半数近く(48.8%)を占めているのに対し、「評価・中位」者では3割弱(27.2%)、「評価・下位」者では1割程度(14.0%)と、評価が低くなるにつれて、「格差推進派」の割合が急激に落ちている。成績の差がそのまま処遇格差につながるため、このような結果になったと考えられる。 <付表>Q: あなたは、「正社員の間」で、賃金・処遇の格差が拡大していることについて、どのように思いますか? (10)理不尽な指示・命令の有無昨今、企業コンプライアンスの問題が重要視されているが、その背景として、現場組織におけるマネジメント上の判断や意思決定が、適切に行われていないことに起因するケースも多い。ここでは、ビジネスパーソンが「会社や上司から理不尽な指示・命令を受けたことがあるかどうか」を尋ねてみた。全体では、(受けたことが)「ある」が約3人に2人(65.6%)存在しており、「ない」(34.4%)を大幅に上回った。その内容(後述)にもよるが、多くのビジネスパーソンが仕事をしている中でこのような経験を有していることが明らかになった。男女別に見ると、「男性」(67.0%)の方が「女性」(59.0%)よりも(受けたことが)「ある」割合が高く、また年代別に比較すると、「20代」(55.9%)が他の年代に比べて「ある」とする割合が低いのが特徴的である。 これをモチベーションの高さによる違いで見てみると、「モチベーション・高位」は、(受けたことが)「ある」が61.6%、「モチベーション・下位」では73.3%と、モチベーションの度合いが低下するにつれて、理不尽な命令を受けたとする割合が高まっている。因果関係は特定できないが、会社や上司から理不尽な指示・命令を受けたことが、仕事へのモチベーションに少なからず影響を及ぼしていることは否定できないだろう。また、全属性を通じて、(受けたことが)「ある」とした割合が最も高かったのは、この「モチベーション・下位」者と「評価・下位」者であり(共に73.3%)、組織内におけるネガティブな行動がもし彼らを対象に行われているとすれば、かえって悪循環の結果がもたらされる可能性が高いことを現場の管理職は認識しておく必要がある。 <付表>Q: あなたは、会社・上司から理不尽だと思われる指示や命令を受けたことがありますか? (11)理不尽な指示・命令の内容前頁において、「会社や上司から理不尽な指示・命令を受けたことがある」と回答した者に対し、その内容が実際にどのようなものであったかを尋ねてみた。全体で最も多かったのは、「上司の個人的な感情で強要されたもの」で過半数(55.5%)を占め、これに次いで「会社の一方的な都合で強要されたもの」が5割近く(46.3%)にのぼった。いずれも、部下に対して十分な説明をせず、会社・上司が力の論理で一方的に事を進めようとした様子が想像できる。これらの項目に次いで多かったのは、「自らのポリシーや価値観に反するもの」で3割強(31.9%)を占めているが、これは企業活動が行われる中で、どうしても組織のメリットが優先され、個人の観点が軽視されやすいという状況を物語っている。残業や長時間労働で私生活が犠牲になったり、行き過ぎた成果主義賃金の導入で給与を減額されたりするようなケースも該当するのであろう。 これを評価レベルの違いによって比較してみると、「評価・上位」者において相対的に高かった項目は、「社会的責任やコンプライアンスに反するもの」、「道徳観・倫理観・モラルに反するもの」、「顧客のメリットよりも会社のメリット(営業数字等)を優先させたもの」等であり、成績が優秀な社員は(他の社員と比べて)正義感に基づいて仕事をしているケースが比較的多いことが想像できる。逆に「評価・下位」者において相対的に高かった項目は、前述した全体における上位3項目と同じであるが、特に「自らのポリシーや価値観に反するもの」の割合が極めて高く、個人の価値観と会社の価値観が合わないことが評価を下げる要因になっているかもしれない。 <付表>Q: (理不尽な命令を受けた方に対して) それはどのような内容でしたか?(複数回答) (12)転職を考える理由企業で働くビジネスパーソンは、どのような境遇になったら転職を考えるのであろうか? その想定される状況について尋ねたところ、全体で最も多かったのは「会社の将来に不安を感じた時」で過半数(51.2%)を占め、次いで「会社の処遇・勤務条件が悪いと感じた時」(45.5%)、「自分の頑張りや成果・貢献度が正当に評価されなくなった時」(42.9%)、「仕事にやりがいや興味を感じなくなった時」(42.8%)と、以上の項目がいずれも4割以上の高い割合を占めた。「会社の上司が信頼できなくなった時」(27.4%)や「会社での人間関係が悪くなった時」(31.6%)のような、「人」に起因する項目はそれ程高い割合を占めておらず、まずは会社自体が自分の働く場所としてふさわしいかどうかが判断基準となっていることがわかる。「自分の能力の可能性に挑戦したくなった時/能力の限界を感じた時」のような、自分が活躍できるフィールドを求めて転職するというケースは、3割弱(28.7%)にとどまった。 これを評価レベルの違いで比較すると、「評価・上位」者において相対的に高かった項目は、「会社の将来に不安を感じた時」、「自分の頑張りや成果・貢献度が正当に評価されなくなった時」、「仕事にやりがいや興味を感じなくなった時」であり、優秀な社員は自分の仕事が会社の成長につながると実感できることが重要なポイントであることがわかる。一方「評価・下位」者においては、「会社の上司が信頼できなくなった時」、「会社の処遇・勤務条件が悪いと感じた時」が相対的に高く、彼らが仕事自体よりも仕事をする際の条件や環境をより重視していることがわかる。 <付表>Q: あなたは、どのような境遇になったら転職を考えますか?(複数回答) (13)どのように育成して欲しいか企業で働くビジネスパーソンにとって、仕事を通じて成長することは極めて重要な要素であるが、会社がそれを意図的にサポートするか否かで、その会社の社員に対する育成方針が問われてくる。ここでは、「会社がどのように社員を育成するべきか」について尋ねてみた。その結果、最も多かったのは「人事考課(評価制度)を適切に運用して欲しい」で過半数(50.9%)を占め、以下「求められるスキル要件(レベル)を定義して欲しい」(44.5%)、「異動・配置(ジョブローテーション等)を適切に行って欲しい」(41.5%)、「将来のキャリアプランを示して欲しい」(40.1%)と続いた。「教育・研修プログラムの内容を充実させて欲しい」(35.0%)や「教育・研修プログラムを自由に受けさせて欲しい」(25.7%)といった、教育プログラムそのものに関する項目はそれ程高くなく、むしろ仕事を通じて社員が成長するプロセスをしっかりと運用することが強く求められていることが明らかになった。 これを評価レベルの違いによって比較してみると、「評価・上位」者においては、「求められるスキル要件(レベル)を定義して欲しい」(51.7%)や「異動・配置(ジョブローテーション等)を適切に行って欲しい」(44.8%)が相対的に高く、「評価・下位」者においては、「将来のキャリアプランを示して欲しい」(46.0%)、「上司(あるいは先輩社員、コーチ、メンター)がしっかりと指導して欲しい」(43.3%)が相対的に高くなっているのが特徴的だと言える。 <付表>Q: あなたは、会社がどのように社員を育成して欲しい(あるいは育成するべき)と考えますか?(複数回答) (14)2008年の仕事の見通し今年(2008年)の仕事に関する見通しについて、ビジネスパーソンがどのような意識を持っているか、5つの選択肢の中から最も近いものを選んでもらった。それによると、「現実は厳しいが、絶えず前向きに取り組んでいきたい」が過半数(55.3%)を占めた。この「ポジティブ志向派」は、ほぼ全属性において過半数を占めているが、逆にこの割合が過半数に満たなかった属性は、「50歳以上」(48.0%)、「モチベーション・低位」(35.4%)、「評価・下位」(34.0%)であった。これらの属性においては、「不安要素が多く、あまり明るい見通しは立てられない」や、「事態はより悪くなっていく傾向がある」とする「ネガティブ志向派」の割合が、比較的高くあがっているのが特徴である。また一方で、「これまでの努力の成果が実り、明るい仕事生活が期待できそう」という「好調派」は、「評価・上位」(24.4%)や「モチベーション・高位」(18.4%)において高く、上記の結果とは全く正反対の特徴がうかがえる。なお、「予測する意味はなく、関心がない」という「無関心派」の割合は、全体ではわずか3.8%と非常に少ないが、属性別に見ると、「女性」(7.3%)、「20代」(6.3%)、「モチベーション・低位」(6.2%)において比較的高くなっている。これらの属性に共通する要素として考えられるのは、仕事を行う際の主体性に関して、自分自身が中心となって取り組もうと思う認識レベルが、他の属性よりも相対的に低いという点ではないかと想像できる。 <付表>Q: あなたは、仕事に関する2008年の見通しについて下記のどの考えが最も近いですか? (15)将来に対する不安企業で働くビジネスパーソンに、「将来に対して何らかの不安を感じているかどうか」を尋ねたところ、全体の9割近く(87.6%)が(不安を)「感じている」と答えた。この彼らに対して、「その内容はどんなものか」を尋ねたのが下記の結果である。最も多かったのは「仕事・会社・職場に関する問題」(55.3%)で、これに「社会の仕組みや制度(年金問題、環境問題、教育問題等)」(55.2%)が僅差で続き、共に半数を超えた。これらに次いで、「景気の動向」(40.1%)、「家族・プライベートに関する問題」(31.0%)、「物価上昇・インフレ」(30.1%)と続いたが、比較的少なかったのは「格差社会」(24.6%)、「雇用に対する不安」(28.2%)で、いずれも3割に満たない程度であった。企業で正社員として働くビジネスパーソンにとっては、現在大きな社会問題とされているこれらの項目よりも、目先の景気動向や個人的な問題の方がまだ不安要素が高いということが明らかになった。 これを評価レベルの違いによって比較してみると、「評価・上位」者において相対的に高かった項目は「社会の仕組みや制度」(60.9%)と「物価上昇・インフレ」(35.3%)であるのに対し、「評価・下位」者においては「仕事・会社・職場に関する問題」(61.8%)、「景気の動向」(42.4%)、「雇用に対する不安」(35.4%)、「格差社会」(31.9%)といった項目が相対的に高かった。成績が下位レベルにある層は、これらをより身近な問題としてとらえているため、将来に対する不安を強く感じていることがうかがわれる。 <付表>Q: (「将来に対して不安を感じている」と答えた方に) それはどのような内容に関するものですか? (複数回答) (16)自分の「強み・弱み」は何か自分の将来も社会の将来も不安要素が漂う中で、ビジネスパーソンが企業で生き残っていくには、自らの弱みを克服し、強みをさらに強化していくことが望まれる。彼らが何を自分の「強み・弱み」と思っているかを尋ねてみた。まず「強み」に関しては、「柔軟性・適応力・順応性」(69.3%)が最も多くあがっており、次いで「協調性・関係調整力」(62.8%)、「責任感・コミットメント」(62.1%)、「包容力・優しさ・思いやり」(58.1%)、「判断力・決断力」(51.3%)が上位5項目を占めた。周囲の状況を見ながら、相手との関係性を重視し、責任を持って仕事を進めていくというのが、典型的な昨今のビジネスパーソンの姿と言えるだろう。 一方、「弱み」に関しては、「統率力・リーダーシップ」(40.1%)が最も多く、以下「(業務に関する)豊富な経験や人脈」(35.1%)、「メンタルタフネス(精神的な強さ)」(34.5%)、「人間的な器の大きさ」(34.3%)、「交渉力・説得力」(30.8%)が上位5項目を占めた。人とうまくやっていくのにはたけているが、管理・統率したり交渉・説得するなど、相手に何かを強いるようなことは苦手だという姿が浮かび上がってくる。それがために、メンタル面も強くなく、人間的器も大きくならないということが言えるのかもしれない。 なお、「強み」の数値に比べて「弱み」の数値が総じて低くなっているが、これは「弱み」を回答する場合において、ビジネスパーソンがより慎重に選択しているためであると思われる。逆に「強み」については、比較的安易に選択しているため高い数値になっていることが考えられる。 <付表>Q: あなたの現在の「強み・弱み」と思われる能力は何ですか?(複数回答) (17)これから強化すべき能力は何か前頁における「自分の強み・弱み」について、それぞれの項目が「強み」とされた値から「弱み」とされた値を差し引き、数値の高い順にランキングを示した。「強み」と「弱み」の差において、どちらがどれだけ大きいかを見ることで、当該項目の重要度(=さらなる改善・強化が求められる程度)の高さを表したことになる。この結果、最も重要度が高いとされるのは「統率力・リーダーシップ」で、以下「(業務に関する)豊富な経験や人脈」、「人間的な器の大きさ」、「メンタルタフネス(精神的な強さ)」、「指導力・育成力」がランキングの上位5項目となった。逆にランキングの下位項目となったのは、「柔軟性・適応力・順応性」、「責任感・コミットメント」、「協調性・関係調整力」等であり、これらの項目は(自己認識においては)重要度が低いことがわかった。前頁において「強み」「弱み」として上位にあがった項目とほぼ同じ顔ぶれとなっているが、このランキングにおいて上位にあがったものは、「強み」より「弱み」の方が高く位置づけられているものであり、ビジネスパーソンにとって、より自分に足りない能力(=強化するべき能力)として認識されている項目とみなすことができる。
<付表>「自分の強み」-「自分の弱み」のポイント差によるランキング
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