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ブランドデジタルマーケティング戦略立案イノベーション

パートナー
デジタルマーケティングユニット長
山下長幸
一般的なブランドデジタル広告業務の基本構図

 一般的なブランドデジタルマーケティング業務の基本構図は、以下のようなものとなっていることが多い。
 広告主のマーケティング部門において、四半期に一度の頻度で、ブランドの広告・販促戦略を企画し、それに基づき広告代理店に対して、オリエンテーション資料を提示し、具体的なデジタルメディアプランの提示をリクエストする。
 広告代理店においては、広告主からのオリエンテーション資料に基づき、どのようなデジタルメディアに対して広告出稿し、どれくらいの効果が得られると想定されるのかなどの提案書を作成、受注できた場合、デジタルメディアへの出稿を実施して、効果検証を実施する。
 デジタルメディアにおいては、自社媒体広告枠の売り込みをメディアレップや広告代理店(メディア担当部署)・広告主(マーケティング担当部署)に対して実施し、自社メディアへの広告出稿を促進する活動を実施している。(図表1)

図表1 一般的なブランドデジタル広告業務の基本構図

図表1 一般的なブランドデジタル広告業務の基本構図

出所:NTTデータ経営研究所にて作成

広告主による一般的な広告代理店向けオリエンテーションの現状と課題

 広告主による一般的な広告代理店向けオリエンテーション資料においては、キャンペーン対象ブランド、キャンペーン期間、キャンペーン対象ブランドの単価、キャンペーン対象ブランドのターゲット顧客層、対象ブランドのキャンペーン目的、対象ブランドのキャンペーンの全体広告予算もしくはWeb予算、対象ブランドのキャンペーンの希望媒体などが記載されることが多い。
 キャンペーン対象ブランドのターゲット顧客層に関しては、場合によっては、主婦層や首都圏在住などの条件付与されることもあるが、細かく具体的にターゲット顧客層が指定されず、性別、年齢層などざっくりと基本的なデモグラフィック属性レベルで指定される場合も少なくない。
 広告主として自社ブランドのターゲット顧客層やキャンペーン対象顧客層に関してもっと具体的に明確化することにより、広告出稿対象となるデジタルメディアもより適切なものになると考えられ、改善の余地が大きそうである。
 対象ブランドのキャンペーンの希望媒体に関して、FacebookやTwitterなどと具体的に指定されることもあるが、女性向け媒体などざっくりとした記載レベルのことも少なくない。
 これは広告主サイドとしては、具体的な出稿媒体提案は広告代理店の役割として期待されている表れとも言えるが、キャンペーン対象顧客層の具体化・詳細化に合わせて、広告主サイドとしても新たな媒体やニッチな媒体へのチャンレンジなど、もっと自社としての主体的な意思を明確にすべきと考えられる。(図表2)

図表2 広告主による一般的な広告代理店向けオリエンテーション資料項目

図表2 広告主による一般的な広告代理店向けオリエンテーション資料項目

出所:NTTデータ経営研究所にて作成

広告代理店によるデジタル広告提案プロセスの現状と課題

 広告代理店によるデジタル広告提案プロセスとしては、デジタル広告出稿媒体の選択、出稿候補デジタル媒体に関するデジタル広告効率面での詳細検討、デジタル広告事例調査、デジタル広告クリエイティブ案作成、広告主への提案書作成などが主な業務であるが、1案件の平均的な受注額が200万円~500万円規模とそれほど高額でなく、年間の案件数が非常に多いので、予算規模の大きい案件以外は、ルーティンワーク的に標準手順でこなしていく状況となっている。したがって、複数のメディアプランニングを横断的に実施するための戦略検討が難しいのが現状であると言える。(図表3)

図表3 広告代理店によるデジタル広告提案業務プロセス

図表3 広告代理店によるデジタル広告提案業務プロセス

出所:NTTデータ経営研究所にて作成

広告代理店による広告主へのデジタル広告実施レポーティング業務の現状と課題

 広告代理店による広告主へのデジタル広告実施レポーティングに関しては、インプレッション数、CTR(Click Through Rate:クリック率=広告がクリックされた回数÷広告が表示された回数)などの各媒体の結果、結果の要因分析、改善案、次回の施策案などが記載されるが、独自で計測している広告主は別として、情報が開示されない部分も多い模様で、第三者による客観的評価の実施など改善の余地がありそうである。(図表4)

図表4 広告代理店による広告主へのデジタル広告実施レポーティング業務の現状と課題

図表4 広告代理店による広告主へのデジタル広告実施レポーティング業務の現状と課題

出所:NTTデータ経営研究所にて作成

ブランドデジタルマーケティング戦略立案イノベーション

 デジタルマーケティングは、テレビCMなどのマスメディアマーケティングと異なり、1キャンペーンあたりの広告予算を数百万円と予算規模を絞ることが可能であることと、広告効果がCTRやCPA(Cost Per Acquisition(=顧客獲得単価):会員登録や契約申し込みなどの成果1件を得るのにかかったコスト)など定量的に把握しやすくなったため、短サイクルでさまざまなパターンでの広告出稿がしやすくなった。
 その反面、CTRやCPAなどのデジタルマーケティング数値目標の達成に大きな重点を置きがちとなり、数値に左右される分析が中心となってしまっている。デジタルマーケティングの結果数値では測れない全体的なブランドキャンペーンの成功・失敗要因の分析も十分に実施するべきである。
 商品開発の際に意図していた商品価値やターゲット顧客層などの商品コンセプトが、市場投入からの時間の経過とともに、想定外の商品価値で想定外の顧客層に受け入れられることもあり、CTRやCPAなどのデジタルマーケティング結果数値の背景にある顧客のライフスタイルや顧客の購買心理・感情を把握した上、次のデジタルマーケティング戦略に反映すべきである。

 ブランドデジタル広告業務のさまざまな課題を解決するために、Twitter投稿情報分析、脳科学・認知心理学理論、ID-POSデータ分析などを活用することが有効である。マーケティング対象となるブランドに関してTwitter投稿情報などをもとに、ブランドを購入・利用している顧客のライフスタイル特性や購買前、購買時、購買後の顧客心理・感情などの顧客インサイトを把握することにより、自社ブランドのターゲット顧客層やキャンペーン対象顧客層に関してさらなる具体化をすることにより、広告出稿対象となるデジタルメディアもより適切なものにすることが可能となる。対象ブランドのデジタル広告媒体戦略に関しても、広告代理店任せにせず、キャンペーン顧客対象顧客層の具体化・詳細化に合わせて、広告主の意思で新たな媒体やニッチな媒体へのチャンレンジなども可能となる。
 広告クリエイティブ検討に関しても、Twitter投稿情報分析、脳科学・認知心理学理論を活用しつつ、広告出稿先となるデジタルメディアの特性を反映し、具体化・詳細化されたターゲット顧客層の琴線に触れるようなものにすることが可能となる。
 広告実施結果レビューに関しても、広告代理店の広告実施レビューのレポートのみに依存するのではなく、Twitter投稿情報から広告・販促に関する評判を収集分析することで第三者の視点での評価が可能となる。脳情報解読技術を活用することにより、TVCMなどに対する視聴者の評価を、視聴中の脳活動のパターンから可視化し、CM制作意図と視聴者の脳での認識の差異を把握することも可能となってきている。(図表5)

図表5 ブランドデジタルマーケティング戦略立案の高度化

図表5 ブランドデジタルマーケティング戦略立案の高度化

出所:NTTデータ経営研究所にて作成

 このようにTwitter投稿情報分析、脳科学・認知心理学理論、ID-POSデータ分析などを活用することにより、「キャンペーン対象ブランド購入者ライフスタイル特性分析」「キャンペーン対象ブランド購入者の購買心理・感情(購買前、購買時、購買後)」「キャンペーン対象ブランド購入者のライフイベント分析(就職、結婚、退職など)」などを実施することにより、デジタルキャンペーン対象ブランドに関する顧客インサイトを得た上で、競合ブランド調査およびこれまで実施した自社ブランドのキャンペーン結果レビューも加味し、「デジタルキャンペーン対象顧客層の明確化」「デジタル広告・販促メディア戦略検討」「デジタル広告クリエイティブへの示唆」などにより、ブランドデジタルマーケティング戦略構築および広告出稿を実施することが重要である。(図表6)

図表6 ブランドデジタルマーケティング戦略構築実施の枠組み

図表6 ブランドデジタルマーケティング戦略構築実施の枠組み

出所:NTTデータ経営研究所にて作成

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