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ソーシャルネットワークサービスの近未来構図

パートナー 山下 長幸
 

コンピューティング技術の進化・普及状況と主要プレーヤーの変遷

先進国市場における主力のコンピューティングの技術は、1960年代からの大型汎用コンピュータによるメインフレームコンピューティング、1980年代からのパーソナルコンピュータ(PC)によるデスクトップコンピューティング、1990年代からのPCによるインターネットコンピューティング、2000年代からのPCによるワークコンピューティング、2010年代からのスマートフォンによるモバイルコンピューティングと近年は10年単位で変遷を遂げてきた。

図表1:コンピューティング技術の進化・普及状況と主要プレーヤーの変遷
出所:NTTデータ経営研究所作成

それに応じて、主要プレーヤーの変遷も起きてきた。1960年代からのメインフレームコンピューティングは、IBM、日立、富士通などの大型汎用機メーカーが活躍した。1980年代からのPCによるデスクトップコンピューティングは、PCメーカーを抑えて、PCのOSメーカーであるマイクロソフトが市場を席巻した。1990年代からのPCによるインターネットコンピューティングは、検索ポータルサイトであるGoogle やYahoo!、ECサイト運営企業であるAmazonや楽天などが活躍してきた。(図表1)

欧米では携帯電話での通信費は従量課金が主流であっため、フィーチャーフォン(携帯電話)を使ったインターネット利用がユーザーに浸透しておらず、2007年に発売されたスマートフォンである初代iPhoneによるインターネット利用などモバイルコンピューティングが急速に浸透した。

これに対して、日本市場では携帯電話におけるインターネット利用は定額利用の仕組みが導入され、2000年代初頭からフィーチャーフォン(携帯電話)によるインターネット利用が市場に浸透・普及してきた。

日本の携帯電話サービスは、孤立した日本市場で最適化が著しく進行し、日本市場外との互換性を失い、孤立して取り残されるガラパゴスだと自嘲(じちょう)気味に自己評価してきたが、ある意味、世界最先端のフロンティアを10年は先駆けて切り拓いてきたとも言えるのではないかと考えている。

現に、2000年代初頭に来日したGoogleの米国人経営幹部が日本におけるモバイルコンピューティングの進化・普及の状況に非常に驚き、いずれ米国など世界中でモバイルコンピューティングの時代が来ると確信し、そのための準備をGoogle米国本社で指示したとのエピソードも残っている。日本人は、欧米の後追いをしてきただけと自己卑下せず、自己の創造性についてもっと自信を持って良いのではないかと考えている。

ソーシャルネットワーキングサービスの基本的機能

図表2:ソーシャルネットワーキングサービス
出所:NTTデータ経営研究所作成
図表3:主要ソーシャルネットワーキングサービスの開始時期・変遷
出所:NTTデータ経営研究所作成
図表4:世界のソーシャルネットワーキングサービス:ユーザー登録者数ランキング
出所:http://juliekou.com/3279 別ウィンドウが開きます
のデータをもとにNTTデータ経営研究所にてグラフ作成
図表5:主なソーシャルメディアサービスのカテゴリー
出所:NTTデータ経営研究所作成
図表6:日本におけるソーシャルメディア人口推移
出所:インターネット白書2012:インプレスR&Dをもとに、NTTデータ経営研究所にて作成
図表7:日本におけるソーシャルメディアの滞在時間比率動向
出所:「ソーシャルメディア白書2012年」(ビデオリサーチインタラクティブによる調査)をもとにNTTデータ経営研究所作成
図表8:SNSのビジネスモデル
出所:NTTデータ経営研究所作成

ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)は、人と人のつながりを促進するコミュニティ型Webサービスで、プロフィール機能(自己紹介、写真等)、日記機能(近況報告、共有機能)、メッセージ・チャット機能、コミュニティ機能、アドレス帳機能などを登録ユーザーに提供している。

これらの機能により、友人・知人間のコミュニケーションを円滑にしたり、 趣味や嗜好(しこう)、居住地域、出身校、あるいは「友人の友人」といったつながりを通じて新たな人間関係を構築したりすることができる。

このようなSNSにより、登録ユーザーである生活者は、個人個人がさまざまな生活体験や思い(コンテンツ)を発信したり、それらが人から人へ日常的に伝わりシェアされたり、個人でも社会に対して情報発信ができる能動的な存在となった。このような場においては、共感を呼ぶコンテンツの拡散スピードは速いものがある。(図表2)

世界のソーシャルネットワーキングサービス

ソーシャルネットワーキングサービスは2002年サービス開始の米国Friendsterが2004年に数百万人規模となり新しいネットコミュニティの形態として注目を集め、その後2004年から2006年に現在の有力なプレーヤーであるFacebook、Twitter、LinkedIn、Myspace、(以上、米国)、mixi、GREE、DeNA(以上、日本)などが続々と市場参入をした。(図表3)

世界のソーシャルネットワーキングサービスにおけるユーザー登録者数ランキングでは、Facebookの9.1億人を筆頭に、Qzone(中国)の5.4億人、Twitter(米国)5.0億人、Windows Live(米国)3.3億人、Tencent Weibo(中国)3.1億人、Sina Weibo(中国)3.0億人などと続いており、20位内に、米国系が9社、中国系が7社とこの2国のSNSが有力となっている。(図表4)

主なSNSのカテゴリー

SNSは、メインストリームの日記やつぶやきの投稿・共有がメインのFacebookやTwitterだけでなく、写真投稿・共有がメインのflickr やフォト蔵、動画投稿・共有がメインの共有のYouTubeやUstreamなどや、位置・地図情報等、さまざまなサービスと連携し、複合型のソーシャルメディアとして利用が拡大している。

一方、昨今は恋人同士2人のためだけのSNS、ビジネスマン向けに特化したSNS、ペット愛好家に特化したSNSなど新たな特化型SNSが続々と市場に提供されている。

広義のソーシャルメディアとしては、価格.com、食ベログ、@コスメなどのレビューサイト、教えてgooなどのQ&Aサイト、2チャンネルなどの掲示版などのサービス提供されている。(図表5)

日本におけるソーシャルメディアの普及

ソーシャルメディア利用者は、2012年において5,060万人、2008年-2012年における年平均成長率は27.4%となっている。ソーシャルメディア情報発信者は、2012年において3,290万人、2008年-2012年における年平均成長率は24.3% となっている。(図表6)

インターネットにおける滞在時間比率も、検索サイトは23%から20%と3ポイント減少し、SNSは2%から17%と15ポイント増加するなど、この面でもSNSの重要性が急速に増している。(図表7)

このように日本におけるソーシャルメディア人口は、近年、急速に増加してきており、生活者による情報配信媒体としても、企業におけるマーケティング媒体としても、その重要性を急速に増している。

SNSのビジネスモデル

SNSのビジネスモデルとしては、大きく3つのモデルがある。(図表8)

第1は、広告モデルで、広告主からのバナー広告、行動ターゲティング広告などの出稿料を収入源としている。広告収入は登録ユーザーの視聴数などに依存するため、広告収入で事業を成り立たせるにはそれなりの規模での登録ユーザー数を獲得することが必須である。Facebook やmixi が主力の収益モデルとしているものである。

第2はユーザー課金モデルで、内訳として2つのタイプがある。1つ目は自社提供サービス型でSNSサイト自身が提供するアプリサービス等に対し、サービス利用料という形で利用者に対して直接課金し、収入源とするものである。SNSは全般的に無料という意識がユーザーに強いため、ユーザー課金から収益を上げることは難しいとされているが、日本のGREEやMobage(DeNA)による自社提供サービスでのユーザー課金モデルの成功は世界的にも注目を浴びている。

ユーザー課金モデルの2つ目のタイプは、プラットフォーム提供型でサードパーティ・デベロッパーのSNS利用者向けアプリのプラットフォーム利用手数料を収入源するものである。例えば、企業が製品販売促進のためのゲームアプリをアップし、そのプラットフォーム利用対価を企業から得るという方式である。

第3のその他のモデルとしては、データ提供型で利用者が生成する大量のCGM(Consumer Generated Media)データを提携している検索エンジン企業へ提供する提携売上を収入源とするもので、Twitterが主力の収益モデルとしているものである。さらには、他サイト誘導・連動型SNSから他サイトへの誘導により収益を上げるモデルなどもある。

日本におけるSNSの特徴:主要SNSの利用デバイス比率

図表9:日本におけるSNSの特徴:主要SNSの利用デバイス比率
出所:「ソーシャルメディア調査報告書2012」(インプレスR&D)のデータをもとにNTTデータ経営研究所作成

mixiはPCベースのSNSでのビジネス基盤に強みがあったため、FacebookやTwitterと同様、利用デバイスとしては自宅PCの比率が高くなっている。他方、Mobage(DeNA)やGREEは、PCベースのSNSでmixiに先行され、その局面を打開するため、当時普及し始めていた携帯電話ベースに移行していったが、かえってそれがビジネス的には成功し、携帯電話ベースのソーシャルゲームという市場を開発・発展させてきた。(図表9)

今後、フィーチャーフォン(携帯電話)に代わって、スマートフォンがモバイル端末として市場に普及するとなると、SNS各社ともスマートフォンを利用デバイスとしたサービス開発・提供が急務であることは当然であろう。

日系のSNS企業としては、フィーチャーフォン(携帯電話)は日本国内市場のみでの競争であったが、スマートフォンはグローバル市場での競争となるので、海外SNS企業・ゲーム企業との提携や買収が必要となり、実際そのような動きが出始めている。日系SNS企業の方々には、フィーチャーフォン(携帯電話)での10年間の先行メリットを活かして、グローバル市場で活躍して頂きたいものである。

日本におけるSNSの特徴:主要3社の業績

mixi、GREE、DeNAの日系SNS主要3社の業績であるが、まず特筆すべきは経常利益率の高さである。GREEが51.8% 、DeNAが43.0%と驚異の高さである。製造業のような製品原価率が高くないので、損益分岐点を超えて売上が大きく伸びるとその分はほとんどが利益という感じである。mixiは15.8%と他の2社と比べると見劣りはするが、それでも一般的な製造業と比べるとかなり高い利益率となっている。(図表10:左グラフ)

図表10:日本におけるSNSの特徴:主要3社の業績
出所:各社の決算報告書データをもとに、NTTデータ経営研究所にて作成

GREE、DeNAとmixiの経常利益率の差異は、フィーチャーフォン(携帯電話)におけるソーシャルゲーム課金収益の差と言える。DeNAは「怪盗ロワイヤル」、GREEは「釣りスタ☆」に代表される大ヒット自社ゲームを保有・展開している。これに対してmixiはサードパーティ・デベロッパーに対するプラットフォームサービスに徹(てっ)していて、自社ゲームを保有していない。

GREE、DeNAにおける自社ソーシャルゲームの運営ノウハウはかなり高度なものがあり、ゲーム参加者を飽きさせないチャレンジ度合いレベルの設定、ゲーム参加者が難しくてもあきらめてしまわないような容易さレベルの設定など、ゲームを投入後も日々少しずつゲーム内容にチューニングをかけるなど、ゲーム参加者を楽しませるノウハウが非常に優れているため、自社提供ゲームでの収益性が高いという結果を残していると言われている。このようなノウハウをスマートフォンでも活かしてグローバル市場でも実績を残して頂きたいものである。(図表10:右グラフ)

図表11:スマートフォンの普及予測
出所:MM総研調査による市場規模予測(2012年3月公表)

スマートフォンの普及予測

日本におけるスマートフォンは、2012年以降も契約件数が年平均成長率(2012-2017年)が26.3%と利用急拡大が見込まれており、スマートフォン媒体でのマーケティングの重要性がますます高まることが想定される。(図表11)

スマートフォンにおけるプラットフォーム市場・ソーシャルアプリ市場

スマートフォンの急速な普及で、主要プレーヤーがスマートフォンにおけるプラットフォーム市場・ソーシャルアプリ市場をめぐって現在激戦を繰り広げている。

PCベースのソーシャルネットワークのプラットフォームに強みを持つFacebookは、スマートフォンにおけるソーシャルネットワークのプラットフォーム提供にも注力している。Facebook上でのソーシャルゲームで収益を上げている米国ゲームベンダーであるZyngaはスマートフォンにおけるソーシャルゲーム提供にも注力している。この2社は既にグローバル展開の実績があることも強みであろう。

図表12:スマートフォンにおけるプラットフォーム市場・ソーシャルアプリ市場
出所:NTTデータ経営研究所作成
図表13:LINEの基本コンセプト・特徴
出所:NTTデータ経営研究所作成
図表14:LINE:ユーザー登録数推移
出所:NHNジャパンプレスリリース:http://www.nhncorp.jp/press/2012/091054 別ウィンドウが開きます
図表15:LINE:5,000万ユーザー獲得日数
図表16:LINEの運営会社NHNジャパンの資本関係
出所:NTTデータ経営研究所作成

他方、日本国内メインでフィーチャーフォン(携帯電話)を主力にソーシャルネットワークのプラットフォームおよびソーシャルゲームを提供しているGREE、Mobage(DeNA)は、日本国内でのスマートフォンへの展開のみならず、グローバル展開にも注力している。フィーチャーフォン(携帯電話)で培った高度なソーシャルゲーム運営ノウハウをグローバル市場でのスマートフォンでも発揮して頂きたいものである。

スマートフォンに関しては、iPhone・iPadではアップル App Store、GoogleによるAndroid Market(Google Play)のアプリマーケットプレイスがプラットフォーム機能を果たしている。

このようにスマートフォンの普及拡大に伴い、各種関連グローバルプレーヤーによるスマートフォン関連のプラットフォーム市場・ソーシャルアプリ市場への参入が相次ぎ、競争が激化している。(図表12)

LINE

このような状況のもと、スマートフォンのSNSプラットフォームとして、LINEが急伸している。現在、LINEはNHNジャパンにより運営されている。LINEは親しい少人数のグループでチャットが楽しめる「スマホ向けの無料コミュニケーションツール」を基本コンセプトとして開発された。LINEは、スマートフォンの急速な普及と多数の人々と高頻度で交流するのは疲れるというソーシャルメディア疲れを回避したいというユーザーニーズをくみ取り、スマートフォンの特長を活かしたシンプルさを追求して開発された。

電話帳の電話番号という既存の関係性をベースに友達関係を構築し、その中で、さらにプライベートに閉じたグループを作り、グループ内の全員で音声通話やチャットを楽しむこともできる。これによりグループによって違う顔を使い分けることができる訳である。相手と友達関係であれば、相手がLINEを起動していなくとも発信でき、相手も「プッシュ通知」により着信できる。(図表13)

このような機能を備えるLINEはサービス開始後、1年強で6,000万ユーザーを獲得した。(図表14) LINEによる5,000万ユーザーを達成するのに要した期間は399日で、Twitterの1,096日・Facebookの1,325日と比較しても急速なペースで利用者を獲得している。(図表15)

ちなみに、現在、LINEは、韓国検索サイト最大手のNHNの日本法人NHNジャパンによって運営されているが、LINEの運営会社NHNジャパンの資本関係は次のようになっている。

NHN株式会社は、1999年6月創業で、韓国最大の検索サイトNAVERを運営し、韓国での検索サイトシェア8割を持ち、オンラインゲーム事業も運営している。NHNは、Next Human Networkの略称で、人と人とのコミュニケーションを促進することを社是としている。

LINEを最初に企画・構築したのは、NHN株式会社の子会社で2007年12月設立のネイバージャパンで、日本版ネット検索事業NAVERを運営していた。

現在、LINEを運営しているのは、NHN株式会社の子会社で2000年9月設立のNHNジャパンで、検索事業NAVER日本版を2001年に立ち上げるも2002年に撤退したが、2012年1月にネイバージャパンを吸収合併し、LINEの運営主体となった。2012年1月の従業員数は約1,000名である。(図表16)

スマートフォンにおける位置情報コンテンツを活用したSNS

GPS機能を搭載したフィーチャーフォン(携帯電話)やスマートフォンでは、そのモバイル機器の位置を認識することができる。他方、スマートフォンはモバイルコンピューティングを容易に実行することができ、その場、その時に投稿できたり、 少しの空き時間に活用できたり、自分の居場所を知らせることができたり、その場の写真撮影・投稿が容易だったり、ソーシャルネットワーキングとの親和性が非常に高いものがある。

スマートフォンの普及により、位置情報を介して現実世界にバーチャル世界の情報を紐づけするなどバーチャル世界と現実世界のブリッジングをすることが容易にできるようになった。また、位置情報自体、移動すること、その現場に行くこと、その場に関連して人とつながったり、人と協力しあったりなどの位置情報コンテンツの面白さがある。

図表17:スマートフォンにおける位置情報コンテンツを活用したSNSとジオマーケティング施策
出所:NTTデータ経営研究所作成

位置情報の活用アプリとしては、位置情報ゲームがあり、現在の位置を登録、移動、移動先で登録、移動距離や移動先でのポイント獲得、移動先などでのポイント活用、ある地域でしか手に入らないアイテムやイベントを提供、ゲーム参加者による交換などソーシャル機能を有している。

もう1つの位置情報の活用アプリとしては、位置情報SNSであるジオソーシャルネットワーキングがあり、友人たちに自分が現在どこにいるかを知らせたりして、コミュニケーションを活性化するなど、ゲームを楽しむよりコミュニケーションにサービスの主軸を置くものもある。(図表17)

日本における代表的な位置情報ゲーム

日本においては、世界に先駆けて2000年代初頭から、携帯電話(フィーチャーフォン)における基地局やGPS情報を活用した位置情報ソーシャルゲームが提供されてきた。株式会社コロプラが提供している「コロニーな生活」という位置情報ゲームは、2003年に創業者が個人で「コロニーな生活」の提供を開始、2008年に株式会社コロプラを設立し、サービス運営、2010年にはユーザー数が100万人を突破した。基本的な位置ゲーム機能としては、1km以上移動した地点で位置登録するとプラと呼ばれる仮想通貨を獲得、貯金した仮想通貨プラを使って、土地の拡張や施設の設置、アイテムの購入、農場や貯水池などの施設を建設すると人が自然に住みつきコロニー人口が増えていく。

図表18:日本における代表的な位置情報ゲーム
出所:NTTデータ経営研究所作成

ジオソーシャルゲーム機能としては、同地域内で位置登録したコロニーは相互に連絡・情報交換をしたり、アイテム・お土産の譲渡等の交流活動が可能だったり、SNSとしても機能させることができ、地域専用掲示板もある。

ジオマーティング機能としては、(株)コロプラのスポンサーとなっている企業・店舗・施設を登録ユーザーが訪問、実際に買い物を行った際にコロプラのユーザーであることを申請、会計時に金額に応じて対象のお土産がデザインされているトレーディングカードであるコロカを入手、コロカに描かれたシリアルナンバーを入力してコロプラ上でのお土産も購入できる。(図表18)

米国における代表的なジオソーシャルネットワーキングサービス

米国においては、2007年のiPhoneブーム以降、スマートフォンを活用したジオソーシャルネットワーキングサービスが提供されてきた。ゲーム性も備えているが、位置情報を活用したソーシャルネットワークにも力点が置かれているところが特徴である。

本社が米国ニューヨーク州のFoursquare Labs, Inc.が提供しているfoursquareというジオソーシャルネットワーキングサービスは、2009年に世界主要100都市限定でサービス開始、2010年1月に世界どこでもチェックイン可能となり、 2010年3月にユーザー数が50万人を突破、2012年4月にはユーザー数が2,000万人以上となった。

図表19:米国における代表的なジオソーシャルネットワーキングサービス
出所:NTTデータ経営研究所作成

ゲーム機能としては、 「ベニュー」(venue:会場)と呼ばれる特定の場所で「チェックイン」すると得点獲得、特定のベニューでのチェックイン回数が一番多い場合、「メイヤー」(Mayor:市長)として認定、他のユーザーがメイヤーより多くチェックインすると、前メイヤーに代わって新しい利用者がメイヤーの肩書を獲得できる。

ソーシャルネットワーキング機能としては、チェックインに関して、友達をフォローしたり、友達からフォローされたりすることができたり、チェックインしたべニューの位置情報と一緒に写真を投稿できたり、Tipsでベニューについてのコメントを投稿できたり、Twitterのタイムラインにfoursquareのチェックイン情報を連携することができる。

ジオマーケティング機能としては、あるベニューにチェックインしたユーザーに割引クーポンを配布する来店促進などがある。(図表19)

AR(拡張現実:Augmented Reality)

図表20:Augmented Reality 対 Virtual Reality
出所:NTTデータ経営研究所作成
図表21:地域空間でのソーシャルAR活用
図表22:グーグル、拡張現実ARメガネの計画を正式発表
図表23:ARの進化・普及によるパラダイムシフト
出所:NTTデータ経営研究所作成
図表24:ソーシャルメディアマーケティングの特徴
出所:NTTデータ経営研究所作成
図表25:日本企業において活用しているソーシャルメディア
出所:「ソーシャルメディア白書2012年」をもとにNTTデータ経営研究所作成
図表26:日本企業におけるソーシャルメディア活用目的
出所:「ソーシャルメディア白書2012年」をもとにNTTデータ経営研究所作成
図表27:マーケティングメディアとしてのSNS
出所:NTTデータ経営研究所作成

AR(Augmented Reality)は、拡張現実と訳されているが、現実環境にコンピュータを活用してコンピューターグラフィックス映像や文字情報を付加したものである。これによく似た用語としてVirtual Reality(人工現実感)があるが、これはコンピュータグラフィックス映像や音響などを活用して、人工的な現実感を創(つく)り出したものである。Virtual Realityは人工的な現実感であるのに対して、Augmented Realityは、現実環境がベースにあり、そこに文字情報や映像が付加されたものである。(図表20)

スマートフォンの普及によりモバイルARサービス機会の可能性が急速に広がった。スマートフォンに搭載されたARアプリを起動させたWebカメラを通して現実空間をみると、現実空間に関連する情報が付加されて見える。

頓智ドット株式会社がスマートフォンでサービス提供しているセカイカメラは、AR技術活用によるソーシャルネットワーキングのプラットフォームを提供している。セカイカメラは、現実空間にエアタグと呼ばれるデジタルな情報を貼(は)り付けることでコミュニケーションするソーシャルARアプリである。主な機能として、以下のものがある。

(1)エアタギング
エアタグというデジタルなポストイットを「いま、ここ」に貼り付け、その場その時の思いをその場その時に書き残す。同じセカイカメラユーザーは、その風景を見るだけでエア投稿されたエアタグを共有できる。

(2)エアフィルター
エアタグの空間検索する機能で「時間」「距離」「エアタグの種類」を指定することで、必要なエアタグだけを検索・表示できる。

(3)エアツイート
エアタグをツイートする機能でTwitterアカウント情報を設定することでテキストや写真をTwitterに同時投稿できる。

このようにセカイカメラではAR技術を活用した地域空間関連のソーシャルネットワーキングのプラットフォームを提供している。(図表21)

Google、拡張現実ARメガネの計画を正式発表

2012年5月4日、米国GoogleはGoogle+にて拡張現実メガネ(ARメガネ)の計画を正式発表し、プロトタイプの映像を公開した。拡張現実ARメガネを装着すると、口頭の指示内容に沿ってメガネを通して現実風景の中にさまざまな情報が表示される。例えば、天気予報を見たいとする音声に反応して空に天気予報が表示されたり、目的地までのナビゲーション指示に反応して、現在地点から目的地までのナビゲーションを現実風景の中に表示されるなどされる。スピーカーが内蔵され、モバイル電話、動画ライブチャットも可能である。

このように米国GoogleもARに関して非常に高い関心をもって製品・サービス開発を遂行しており、ARソーシャルネットワーキングサービスへの進展も予想される。(図表22)

ARの進化・普及によるパラダイムシフト

これまでのデスクトップコンピューティングによるインタ―ネットの世界では、バーチャル世界と現実世界とが相互に独立しつつ、関連しあう関係であったが、今後、AR技術およびGPS搭載モバイルデバイスの進化・普及により、現実世界にバーチャル世界の融合が進展し、現実世界がバーチャル世界への入り口を占める割合が増大するものと想定される。(図表23)

ソーシャルメディアマーケティング

登録ユーザー数が巨大なソーシャルネットワーキングサービスは、企業にとってはマーケティング媒体となるものであり、SNSを活用したマーケティングは、ソーシャルメディアマーケティングと呼ばれている。

これまでのテレビCMなどのマスマーケティングは、商品・サービスの存在のアピールを目的として、多くのリーチ数を稼ぐことができ、リーチの観点での広告効率は、ソーシャルメディアよりも良いが、企業サイドから生活者サイドへの一方通行の情報告知であり、多額な予算が必要とする。

これに対して、ソーシャルメディアマーケティングは、中長期的な顧客とのリレーション構築を目的として、企業と生活者との間での双方向コミュニケーションが可能であり、少額予算での実施も可能であるが、テレビCMほどのリーチ数を稼ぐのは難しい。(図表24)

日本企業において活用しているソーシャルメディアとしては、TwitterとFacebookの利用比率が高い。(図表25)

日本企業におけるソーシャルメディア活用目的として、マスメディアの補完・代替としての活用目的の比率が高いが、ソーシャルメディアの特性を活かした中長期的な顧客リレーション強化目的の比率もそれなりに存在している。(図表26)

マーケティングメディアとしてのSNSとしては、共通している機能が多いが、匿名制のSNSが多い中、Facebookでは実名でのユーザー登録を原則としているところに特徴がある。また、投稿内容が、知人などに限定しているSNSが多い中、Twitterでは投稿内容が基本的にはインターネット上に公開され、企業によるアクティブリスニング対応も可能という特徴がある。(図表27)

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