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次世代CRMの推進:
自社CRMデータとソーシャルCRMデータによる統合マーケティング

【Next Generation Customer Relationship Management】

パートナー
山下 長幸
マネージャー
前田 幸枝
 

自社CRMデータとソーシャルCRMデータによる統合マーケティング

近年、各種ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の利用者が数千万人、数億人に拡大するにつれ、ソーシャルネットワーキングサイトを活用した企業によるマーケティングが盛んになってきている。

 そのような状況のもと、これまで自社のリアル店舗や営業担当経由で自社データとして蓄積・利用してきた自社CRMデータとソーシャルメディアマーケティングによるCRMデータ(ソーシャルCRMデータ)を統合して、マーケティング施策の効果を向上させようという動きが出始めている。

ナイキの事例

図表1:ナイキの統合CRM事例
出所:Nike社FacebookのURL、TwitterのURL Nike社Webページ

 スポーツ関連用品メーカーのナイキでは、自社公式サイトにおけるアカウント登録をFacebook や Twitterからのログイン登録が可能となっており、自社のWebサイト(コミュニティサイト、ECサイト)とソーシャルメディアIDとの連携を実現し、自社顧客データとソーシャルメディアデータを統合したマーケティングを実施している。(図表1)

 ナイキのこのキャンペーンは、米国のインターネット広告ガイドラインを順守し、登録者の承諾(permission)を前提に実施している。例えばFacebookアカウントからの登録の場合「友達」としての登録の有無を確認している。「友達」としてアカウント登録した場合、ナイキと登録者は「友達」関係となるので、登録者のFacebookページにおいて 「友達」に公開共有している投稿内容をナイキにも公開共有することになる。「友達」としてのアカウント登録しない場合は、基本データ(生年月日、性別、血液型、政治観等から一般公開している情報)、メールアドレス、生年月日、位置情報をマーケティング目的に利用することを許諾することになる。

アメリカン・エクスプレスの事例

図表2:アメリカン・エクスプレス社の統合CRM事例
出所:アメリカン・エクスプレス社Webページ

 クレジットカード会社のアメリカン・エクスプレスの場合、割引クポーンプログラムのキャンペーンプログラムを通じて、プログラム登録希望者の氏名、e-mailアドレス、カード番号に加えて、キャンペーンプログラム登録希望者のFacebook情報の利用許諾を求めている。(図表2)具体的には、プログラム登録希望者の友達公開している基本データ、趣味・関心、「いいね!」情報などである。加えて、キャンペーンプログラム登録希望者の Foursquare の位置情報等の利用許諾を得ている。これにより、従来からのクレジットカード加入時の加入者の基本情報やクレジットカード利用履歴に加えて、プログラム登録希望者のFacebook上の「いいね!」情報や、Foursquareでの店舗等チェックイン情報を把握・分析し、参加者個人の特性に応じたカード利用による割引クーポン提供サービスを行うものである。

図表3:大手地方銀行の次期情報系システム事例
出所:NTTデータ経営研究所作成

大手地方銀行の事例

 この大手地方銀行では、従来からイベント・ベースト・マーケティング(EBM)に積極的に取り組んできた。金融機関におけるEBMとは、公社債の満期期日到来や数百万円レベルの多額の口座入金、住宅ローンの完済など顧客が何らかの次のアクションを取る可能性があるイベント(出来事)をタイムリーに認識し、タイミングよく適切な内容で適切なチャネルを活用して顧客にアプローチするマーケティング手法である。

 従来EBMは口座残高の動きや営業店や営業担当者からの接客情報など銀行の内部データを基に実施していたが、これに加えて、顧客のSNSにおける各種情報からイベントを感知しようとするものである。

図表4:今後のCRMが目指すべき方向性
出所:NTTデータ経営研究所作成

 この大手地方銀行では、このような自行CRMデータとソーシャルCRMデータの統合的運用にマーケティング活動をバックアップするため、2013年の稼働を目標に新たな情報系システムを構築中である。(図表3)

このように今後の情報系システムが目指すべき方向性としては、自社内顧客情報とソーシャルメディア顧客情報を統合し、顧客に対して一貫性・整合性のあるマーケティングを実施すべきである。(図表4)

次世代CRM検討のステップ

次世代CRMは2つのタスクを遂行することにより検討する。まず顧客ID連携方法を検討し、次に顧客ID連携により統合された顧客データベース利用したマーケティング施策の検討である。(図表5)

図表5:次世代統合CRM検討の全体像
出所:NTTデータ経営研究所作成

まず顧客ID連携であるが、自社データCRM(顧客情報)の中でも、リアル店舗における顧客情報と、自社Webサイトにおける顧客情報があり、ステップ1としてこれら自社データに関しての顧客ID連携を行う必要がある。ステップ2として、自社CRMのIDとソーシャルメディアCRMの顧客ID連携を図る。(図表6)各種自社内顧客情報に関しては、顧客の氏名・住所等の基本属性情報、もしくはe-mailアドレスが把握できていれば、それらで顧客ID連携を図ることができる。ソーシャルメディアに関しては、自社ECサイトやコミュニティサイトにおける登録やキャンペーン募集において、「SNSアカウントからの登録可能」とし、ソーシャルメディアアカウント(URL情報)を連携キーに、顧客ID連携を図る。このようなソーシャルメディアアカウントでの登録の際には、情報の取得範囲や取得情報の活用目的を明示し、登録者の承諾(permission)を得たうえで実施することが重要である。

図表6:【タスク1】 顧客ID連携についての進め方の全体像
出所:NTTデータ経営研究所作成

次に顧客ID連携により自社CRMデータとソーシャルCRMデータとが統合された顧客データベース利用したマーケティング施策の検討である。これまでの自社CRMデータに、新たにソーシャルメディアCRMデータを利用しつつ、自社商品・サービスに対して、どのような顧客属性の顧客が、どのような行動・状況になった時に、どのようなCRM施策を打つと効果的なのかを解明することが重要である。(図表7)これらをどのように検討し、情報システムのバックアップを行うかについて、当社において具体的な検討方法論や具体的アウトプットイメージを考案・準備しており、ご関心のある企業の方々がおられたら、当社までお問い合わせ願いたい。

まとめ

図表7:【タスク2】 次世代統合CRM施策の実施ステップ:全体像
出所:NTTデータ経営研究所作成

自社CRMデータとソーシャルCRMデータを統合して、マーケティング施策の効果を向上させようという動きは、先進企業において始まったばかりで、またまだこれから発展する分野である。自社の事業特性・商品サービス特性に合わせて、さまざまなマーケティング施策の試行錯誤により、ノウハウを蓄積・進化させていくことが重要である。

 このようなマーケティングノウハウは、ソーシャルネットワーキングサービスの利用者が拡大している昨今の状況において、企業における貴重な財産であり、競争上の優位性構築にとって重要な基盤となるものである。

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