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ASEAN+3 債券市場フォーラム (ASEAN+3 Bond Market Forum :ABMF)における
「ASEAN+3 BOND MARKET GUIDE」刊行によせて

マネージャー 西原 正浩

レポート刊行の背景

1990年代後半に発生したアジア通貨危機を契機として、金融における通貨と期間のミスマッチ解消、通貨危機のリスク低減、そしてアジア域内の潤沢な貯蓄を域内の投資に結び付けるための域内における債券市場育成が、ASEAN+3域内での重要な政策課題となっている。

このような背景から、2003年にアジア債券市場育成イニシアティブ(Asian Bond Markets Initiative、ABMI)が創設された。ABMIでは種々の検討がなされているが、その中でもクロスボーダー債券取引のさらなる促進があらためて認識された。ABMIにおける検討内容をさらに促進するために、2010年ウズベキスタン・タシケントにおけるASEAN+3財務大臣会議において、「ASEAN+3債券市場フォーラム(ASEAN+3 Bond Market Forum:ABMF)」の設置が承認された。

当該フォーラムでは、ASEAN+3各国の債券市場規制および市場慣行に関する情報収集を行うサブ・フォーラム1と、取引慣行および決済上のメッセージ・フォーマットの調和化について検討を行うサブ・フォーラム2が設けられた。フォーラムは2010年9月の第一回会合から2011年12月の第6回会合まで開催され、このほど「ASEAN+3 BOND MARKET GUIDE」として検討結果が刊行された。

サブ・フォーラム2のレポートの内容

サブ・フォーラム2では、債券取引における業務の一貫処理(Straight Through Processing - STP)化が各国においてどの程度なされているか、また、クロスボーダーにおける債券取引のSTP化の際にどのような障壁が存在するか、1年超にわたって検証された。

「ASEAN+3 BOND MARKET GUIDE」のVolume2には、サブ・フォーラム2の検証結果がまとめられている。

ガイドのパート1では、「Bonds Markets and Their Infrastructures in ASEAN+3」と題して、ASEAN+3全体のマーケットインフラの概説、および国内とクロスボーダーにおける代表的な債券取引フローを紹介している。域内でのクロスボーダーSTP化推進のために必要な、マッチングの仕組み、決済期間と運用時間、メッセージの標準とコード体系の採用状況については、各国の状況を一覧化した上で比較を行っている。

パート2では、債券市場が存在する各国(中国、香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)それぞれの地域における国債取引について詳述している。

パート3では、国債取引に関する三種類の図表が各国ごとに記述されている。①各国ごとのインフラ整備状況を示したダイヤグラム、②代表的な国債のDVP取引(資金と証券の同時決済機能)業務フローおよびそれらの業務手順、③クロスボーダーにおける関係者当事者間の関連図。

レポート刊行の意義

今まで、各国個別市場に関するレポートは存在したが、平仄(ひょうそく)を合わせてマーケット全般を俯瞰(ふかん)したレポート刊行は初めての試みである。レポート作成は各国の市場関係者が中心となって行われたが、その作成過程において、各国の市場関係者は域内マーケットの共通性を認識していると共に、自国マーケットの特異性も認識した。本レポートは、このような認識の集大成であり、上記3パートを通じてASEAN+3各国における債券市場・債券取引の詳細がわかるようになっており、域内のインフラ等を詳しく知りたい市場関係者や研究者にとって、大変有意義なものとなっている。

今後のASEAN+3債券市場フォーラム (ABMF)とサブ・フォーラム2の活動

ABMFでは2012年2月よりフェーズ2を開始させた。フェーズ2では、今回のレポートで発見された事項やフォーラムを通じて域内各国で得られた共通認識を基盤に、クロスボーダーにおける債券取引STP化のためのさらなる調査を行っていく予定である。

なお、本文は英文で200ページを超える大著であるが、興味をそそる内容であると思われる。ぜひともご一読いただきたい。

また、詳細な内容を確認されたい場合は、当社コンサルタントまでご連絡いただきたい。

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