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「環境新聞」2015年8月5日より

本格化する廃棄物処理・リサイクルビジネスの海外展開(2)
インドネシアの一般廃棄物処理/PPPによる「ごみ発電事業」に注目

NTTデータ経営研究所
社会・環境戦略コンサルティングユニット
マネージャー 東信太郎

 アセアン最大、世界第4位となる人口2・5億人を有するインドネシアにおける、廃棄物処理・リサイクルビジネスの可能性を2回にわたり紹介していきたい。まず、本稿では、一般廃棄物処理をテーマに、基礎情報とビジネス環境を整理し、今後の展望を考察する。  最初に一般廃棄物処理の基礎情報を整理したい。インドネシアの環境省によると、2012年に排出された廃棄物は年間1億8千万トン、うち半分の約9千万トンが「家庭ごみ」に分類されている。およそ、日本の2~3倍の一般廃棄物が排出されていると推測される。

 一般廃棄物の処理について、都市では最終処分場におけるオープンダンピング方式(野積み)が主流である。経済発展と人口増加に伴い、廃棄物の排出量は増加しており、都市では最終処分場の受け入れ量が限界に達しつつある。これに対し、中央政府は、2008年に廃棄物処理法を制定し、13年以降は最終処分場におけるオープンダンピングを禁止するとした。その結果、大都市では一般廃棄物の処理問題が顕在化し、減容・減量効果の高い処理技術の導入が検討されることになった。こうして、日本の企業にとって、廃棄物処理のノウハウや技術を活用する事業機会が生まれつつある。

 次に、ビジネスモデルを検討する際のポイントをまとめたい。インドネシアの大都市では、一般廃棄物処理を民間に委託する、PPP(官民連携)※が主流となるとみられる。処理費(ティッピングフィー)は、地方政府が負担することになり、首都ジャカルタや第二の都市スラバヤでは1100円/トン程度の処理費による、民間への一般廃棄物処理委託が実施されている。

 具体的なビジネスとして、PPPによるごみ発電(Waste to Energy)に注目したい。まず、ごみ発電については13・5円/キロワット時の固定価格買取制度(FIT)が整備されている。近年のルピア安を受け、FITの引き上げも議論されているという。

 次に、処理費であるが、財源の確保が課題となっているものの、ごみ発電事業には、FITだけでなく、3600円(30ドル)/トン程度の処理費が必要であることは理解されている。さらに、PPP事業に関しては中央政府が建設費用の一部を負担するスキームも検討されている。

 最後に、今後のインドネシアにおける一般廃棄物処理ビジネスを展望したい。FITに加えて、30ドル/トン程度の処理費と、建設費の一部負担が制度化されれば、PPPによるごみ発電事業への参入は、有望なビジネスモデルとなる。事実、ジャカルタ、バンドゥンなどの大都市においては、ごみ発電事業の入札が準備されており、日本企業の参入が期待されている。

 総じて、インドネシアの一般廃棄物処理については検討中の制度も多く、日本の企業の目には、「まだ混沌とした状態」と映るかもしれない。しかし、一般廃棄物処理が問題化し、諸制度の整備が進むインドネシアは、「事業展開の好機を迎えつつある」とも言える。日本企業には、この「混沌」に身を投じることで好機をつかみ、将来の大きな果実を得ることを期待したい。

※ここでいうPPPは、必ずしもインドネシアの大統領令「PPPに関する大統領令」に基づくものだけでなく、セクターごとの法令等に基づいて実施される官民連携事業も含めて考えている。

挿入写真


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