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2017年2月20日

東日本大震災発生後の企業の事業継続に係る意識調査(第4回) 熊本地震から8カ月、BCP見直し実施企業はわずか1割程度
製造業を中心にBCP “策定断念” 傾向が浮きぼりに ~ 自社資源のみの検討に限界。進まぬ企業間BCP連携が背景か ~

 株式会社NTT データ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:佐々木 康志)は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:塚本良江)が提供する「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象に、このたび「東日本大震災発生後の企業の事業継続に係る意識調査(第4回)」を実施しました。

 2011年3月11日に発生した東日本大震災では、主たる被災地である東北地方をはじめ、全国の多くの企業にさまざまな影響が及び、BCPをはじめとした既存のリスク対策や事業活動に、多くの課題を与えました。また、2016年4月には熊本地震が発生し、事業継続に向けた取り組みの重要性を、企業が再認識しています。

 本調査は、2011年7月に実施した「東日本大震災をうけた企業の事業継続に係る意識調査」(以下、第1回調査)から、2013年1月(以下、第2回調査)、2015年1月(以下、第3回調査)にかけて実施している継続調査であり、企業の事業継続に対する取り組みや意識にどのような変化が生じたか、各社はBCPの運用・管理(BCM)について現在どのような課題認識を持っているか、等について調査を実施しました。

【主な調査結果】

1.BCP策定状況とその変化

  1. 現在BCPを策定済みの企業は、約4割。策定中まで含めると、6割を超える状況。

    参照

    • 現在のBCPの策定状況について尋ねたところ、「策定済み」と回答した企業は42.1%。「策定中」まで含めると、61.8%の状況であった。
    • 従業員規模が大きくなるにつれBCP策定済み企業の割合は増え、500人似上の企業では半数以上がBCPを策定している。一方で従業員規模が小さい企業では策定が進んでおらず、99人以下の企業では策定済みは20.3%のみであり、BCP策定予定なしも3割に近い。
    • 業種別では事業継続への要求レベルが高いと想定される金融・保険業がBCP策定済み66.7%と、群を抜いており、策定中を含めると8割を超える。次いで公共機関がBCP策定済み51.4%と高く、策定中を含めるとこちらも6割となっている。一方でその他の業種では軒並みBCP策定済みが5割に届かず、特に教育・医療・研究機関は16.4%ともっとも低い策定状況となっている。
    • 地域別では関東でBCP策定済み47.8%、次いで中国・四国でBCP策定済み41.2%と高い。一方で九州・沖縄で低く、BCP策定済みは27.3%となっている。
    • 資本金と年間売上高が大きくなるにつれBCP策定済み企業の割合は増え、資本金10億円以上で半数以上、年間売上高では100億円以上でほぼ半数以上の企業がBCPを策定している。
  2. BCP策定済み企業数は増加していないにもかかわらずBCP策定中企業数は大きく減少しており、検討途中で策定を断念した企業の存在が示唆される。

    参照

    • 第1回からの調査によって抽出した、BCP策定状況と比較すると、BCP策定済み企業は2013年1月時点では東日本大震災を契機として約1.5倍の40.4%に増加したものの、それ以降は増加傾向が弱まり、2017年1月時点で42.1%と停滞していることがわかる。
    • BCP策定済み企業の増加が停滞している一方で、BCP策定中企業は2013年1月時点から10ポイント以上減少している。したがって、BCP検討途中で策定を断念してしまっている企業が多いことが予測できる。
  3. 業種別では、製造業のBCP策定は進んでいないにもかかわらず、策定中割合は大きく減少(約26ポイント)している。自社設備の復旧やサプライチェーンを含めたBCP策定が求められる製造業ではBCP策定を検討途中であきらめていることが想定される。

    参照

    • 業種別でみると、製造業において策定済み割合は2013年1月時点から2017年1月にかけて1.8ポイント増とほぼ増加していないにもかかわらず、BCP策定中割合は2013年1月時点で55.9%から2017年1月時点では20.2%と大幅に減少している。これは、製造業ではBCP策定を検討途中であきらめてしまっている企業が多いことを示唆している。背景として、自社設備の復旧方針のみならずサプライチェーンを含めた事業継続計画が求められる製造業特有の事情があると考えられる。
  4. 地域別では、熊本地震で最も影響のあった九州・沖縄地方でBCP策定済み割合がやや増加(約6ポイント)し、比較的地震リスクが低いとされている北海道で大きく増加(約16ポイント)している。

    参照

    • 地域別でみると、九州・沖縄地方において、2015年1月時点で21.7%だったBCP策定済み割合が2017年1月時点には27.3%とやや増加している。また、北海道において2015年1月時点で22.2%だったBCP策定済み割合が2017年1月時点には38.1%と大きく増加している。2016年4月の熊本地震の発災を受け、比較的地震リスクが低い地方での警戒意識の高まりによる影響が想定される。
  5. 事業規模別では、特段の差異は認められず、一様にBCP策定状況は停滞している。

    参照

2.BCP策定対象とその変化

  1. BCPで想定するリスクとして、「地震」を挙げる企業が約7割。自社設備に関するリスク想定が約5割。

    参照

    • 現在の自社のBCP(策定済み・策定中・策定予定あり)において、どのようなリスクを想定するかを尋ねたところ(複数回答)、「地震(主として直下型地震)」(76.7%)が最も多く、次いで「地震(東海・東南海・南海連動地震等の超広域地震)」(60.3%)と「地震以外の自然災害(風水害等)」(49.5%)となっており、自然災害を想定することが多い。
    • 自社設備の事項・故障・機能停止といったリスクを想定している企業も5割近い。自社設備の事故・故障・機能停止は、災害等によって引き起こされるリスクを想定していると推測でき、事業継続性担保のために必要な具体的な被害状況を想定したBCP策定が進んでいると考えられる。
  2. 超広域地震を起点としたリスク想定が停滞する一方で、テロ等の犯罪行為のリスク想定が進んでいる。

    参照

    • 第1回からの調査によって抽出した、リスク想定と比較すると、2013年1月時点では「地震(東海・東南海・南海連動地震等の超広域地震)」が東日本大震災を契機として65.9%に増加したものの、2017年1月時点で60.3%と減少していることがわかる。同様に、「パンデミック」「原子力災害」を想定している企業も、2013年1月時点から減少を続けている。
    • 「テロ等の犯罪行為」への想定が、2015年1月時点から約1.6倍に増加しており、近年のテロ動向や2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を踏まえて企業の対策が進んでいることが想定される。
  3. 9割の企業が本社を想定拠点としているが、取引先といった自社を越えた想定はもちろん、自社内でも営業拠点・物流拠点にまで想定拠点を広げることができている企業は少なく、3割を切る。

    参照

    • 現在の自社のBCP(策定済み・策定中・策定予定あり)において、対象としている拠点について尋ねたところ(複数回答)、「本社」(90.5%)が最も多く、次いで「支社・事業所(工場、研究所含む)」(52.0%)、「営業所・営業拠点」(25.4%)の順となった。
  4. BCP想定拠点の拡大は近年見られない。

    参照

    • 第1回からの調査によって抽出した、BCP策定状況と比較すると、BCP想定拠点の傾向に大きな変化は見受けられない。

3. 企業の事業継続に向けた取り組み(対策)とその変化

  1. 「BCP策定済み」としている企業では、事業継続に向けて必要となる復旧方針や復旧手順、代替策をほぼ半数以上整備しているものの、実質的な事業継続に欠かせない外部との連携に関しては、3割を切る。

    参照

    • 災害・事故等発生時の体制設置や、被災・被害状況の確認など、初動段階での対策は、比較的高い対策策定状況にある。一方、早期に業務を復旧させるための手だてや、リソース不足の際の代替案策定など、応急・復旧段階については逆に低い策定状況にある。さらに、応急・復旧段階での対策を自社リソースに係る部分と、取引先など外部との連携に係る部分に分けてみると、後者の取り組みがより対策が進んでいない状況にある。
    • 「BCP策定済み」と回答した企業でも、各社で定めているBCPが必ずしも十分な内容には至っていない。初動段階での対策については7割~9割強の割合で策定されているが、応急・復旧段階での対策となると、復旧方針および自社施設・設備/情報システムの代替策については5割に満たない。人的リソースの代替策については4割とさらに低く、取引先など外部との連携に係る部分に至っては3割を切る。
    • 業種別で見ても、いずれの業種でも初期段階での対策は比較的進んでいるのに対し、応急・復旧段階での対策は遅れている。
    • ただし、「BCP策定済み」の割合が高く、ガイドライン等で事業継続性をうたっていることの多い金融・保険や公共機関では、いずれの取り組み(対策)も比較的高い策定状況にあり、特に復旧方針については他業種より対策が進んでいる。
    • 一方で「BCP策定済み」と回答した割合の低い教育・医療・研究機関は、いずれの取り組み(対策)で見ても他業種と比べ低い策定状況にあり、たとえBCP策定済みとしていても対策の内容が乏しい可能性が指摘され、特に情報システムの復旧・代替策の策定が進んでいないことがわかる。
  2. 「人的リソースの代替策」や「外部連携」に関して策定状況が向上しているものの、策定状況は全体的に停滞傾向であり、具体的な復旧手順・代替策の策定が依然として求められる。

    参照

    • BCP策定済み・BCP策定中の回答者に絞って、第1回からの調査によって抽出した、取り組み(対策)別策定有無と比較すると、東日本大震災後から2015年1月時点までは全体的に策定状況が向上していたが、今回調査(2017年1月時点)では策定状況が停滞していることがわかる。
    • 応急・復旧段階での対策は、自社リソース復旧のうち人的リソースの代替策や、外部連携のうちステークホルダーとの連携について3~5ポイントほどと微増している。
    • 向上傾向にあるとはいえ、依然、外部連携を中心として策定状況は低く、具体的な復旧手順・代替策の策定に大きな壁があることが予想される。
  3. 「初動段階での対策」と「復旧方針」、「自社リソース復旧」については策定が進んでいくと想定される。一方で「外部連携」に関しては策定の意向すらない、もしくはわからないとする企業が半数近くあることから、策定状況を向上させていくには何らかの解決策が必要と言える。

    参照

    • 事業継続に向けた取り組み(対策)ごとに策定状況および策定の意向について尋ねたところ、初動段階での対策は、「策定の意向あり(近いうちに着手する予定)」まで含めればほぼ7~8割の企業でポジティブな策定状況にある。「策定中(近いうちに完成する予定)」「策定中(着手済みだが課題がある)」「策定の意向あり(近いうちに着手する予定)」を考慮すると、各項目で11~20ポイントほど策定済み割合が向上する見込みがあると言える。
    • 応急・復旧段階での対策のうち、復旧方針と自社リソース復旧に関しては、「策定の意向あり(近いうちに着手する予定)」まで含めれば半数以上の企業でポジティブな策定状況にある。「策定中(近いうちに完成する予定)」「策定中(着手済みだが課題がある)」「策定の意向あり(近いうちに着手する予定)」を考慮すると、各項目で22~28ポイントほど策定済み割合が向上する見込みがあると言える。
    • 一方で応急・復旧段階での対策のうち外部連携に関しては、「策定の意向あり(近いうちに着手する予定)」まで含めても約4割であり、「策定の意向あり(課題がある、もしくは優先度が低く、着手する見通しは立っていない)」「策定の意向なし」と「わからない」で半数以上を占める。外部連携を中心とした対策策定状況は停滞しているが、今後も策定の見込みが立たない企業が多く、今後の向上のためにはテコ入れが必要であると言える。

4. BCPに対する課題認識とその変化

  1. 半数以上の企業が現在のBCPに対して課題認識をもっている。

    参照

    • BCPを策定済み・策定中・策定予定ありである回答者には現在の自社のBCPに対する課題認識を、BCP策定の予定がない回答者にはそれが課題の有無によるものなのか否かについて尋ねたところ、半数以上(54.8%)の企業が課題認識をもっていることがわかった。
  2. 従業員規模別では、5,000人未満の大企業で課題があると回答した企業が54~56%であったのに対し、5,000人以上の大企業は49.3%と課題認識状況が分かれ、中堅・中小企業ほどBCP策定に悩みを抱える傾向にある。

    参照

  3. 業種別では外部事業者との連携が求められる商業・流通・飲食と製造業、ステークホルダーとの連携が進んでいない公共機関が課題認識をもっている。一方で金融・保険は課題なしと回答した企業が最も多く、事業継続への対策が進んでいることが示唆された。

    参照

    • 業種別では、課題があると回答した企業について商業・流通・飲食が62.2%と最も高く、次いで公共機関が58.1%、製造業が56.5%となっている。事業継続上必然的に外部事業者との連携が求められる商業・流通・飲食と製造業と、策定済み割合は高いが外部連携のうちステークホルダーとの連携が進んでいない公共機関(図表1-1-2および図表3-1-2参照)が課題認識をもっている現状が明らかとなった。
    • 金融・保険は課題があると回答した企業が46.2%と最も低く、課題はないという回答が41.5%と最も高いことからも、事業継続への対策が特に進んでいるといえる。
  4. 地域別では、中国・四国で課題認識をもっている。一方で九州や東北では、課題はないとする企業が多く、震災によってもたらされた課題への対策が進んだことが想定される。

    参照

    • 地域別では、中国・四国は課題があると回答した企業が66.7%と高い。一方で北海道は44.7%と最も低い課題認識の状況となった。
    • 九州・沖縄は課題がないと回答した企業が45.1%と最も高く、次いで東北が43.3%となった。課題がないと回答した企業には、検討が不十分である可能性も考えられるが、こちらは震災を踏まえた対策が進んだ結果と想定される。
  5. BCPに対して課題を認識している企業の割合は特に変化せず、依然未解決のままとなっていると想定される。

    参照

    • 第2回からの調査によって抽出した、BCPに対する課題認識と比較すると、BCPに対し課題認識をもっている企業の割合はほぼ変化していない。
  6. 自社単独でのBCP自体に限界があることが多くの企業で課題として認識されており、外部連携を実現するための解決策が求められている。

    参照

    • BCPに対して課題がある回答者(n=501)に対し、その理由について尋ねたところ(複数回答)、「策定したBCPに対する構造的課題(自社単独でのBCP自体に限界)」が最も多く、「外部からの調達・供給ができなければ事業継続できない等」(52.7%)、「単一拠点で事業を行っており、代替となる自社拠点がない等」(38.5%)、「代替要員を配備するだけの余裕がない等」(33.5%)と続いた。
    • 「自社単独でのBCP自体に限界」といった課題に対しては、事業継続のための外部連携が考えられる。こうした強い課題認識がありながらも、上記までの調査結果からもわかるように、外部のステークホルダーとの連携を含めたBCP策定は進んでいない。
  7. 自社だけの取り組みに限界を感じている企業は増加傾向にあり、経営層の事業継続への意欲低下も示唆される。一方、BCPに関する取り組みが進んだことから、企業内のノウハウは着実に蓄積されている。

    参照

    • 第2回からの調査によって抽出した、BCPに課題がある理由と比較すると、「外部からの調達・供給がなければ事業継続できない等」が漸増しており、自社だけの取り組みに限界を感じている企業が現在も増えている状況が明らかとなった。また、「経営層の取り組み意識が希薄」が徐々に増加しており、経営層の事業継続への意欲が低下していることが示唆される。
    • 一方で「策定に必要なノウハウが不十分」が2015年1月時点から5.5ポイント減少している。東日本大震災以降、BCPの策定が進んだことにより、企業内にノウハウが蓄積されてきたことが想定される。

5. 次代のBCPに求められる解決策

  1. BCP策定・運営に係る外部連携による解決策案はいずれも「是非取り組みたい」と「条件が合えば取り組みたい」で5割以上であり、外部連携が解決策として求められていることがわかる。特に、連携施策としては危機発生時における被災状況共有、連携対象としては密接な取引関係のある企業(調達先や納入先等)が多い。

    参照

    • BCPに対して課題がある回答者(n=501)に対し、BCP策定・運営に資する解決策として下記の15の解決策案(5つの連携施策×3つの連携対象)を提示し、それぞれについて評価を尋ねた。全ての解決策案が「是非取り組みたい」と「条件が合えば取り組みたい」で5割以上であり、外部連携による解決策が求められていることがわかる。
    • 連携施策としてポジティブな見解が多いのは「危機発生時における情報(自社内の被災状況や周辺地域の被災状況など)の共有」であり、いずれの連携対象においても「是非取り組みたい」と「条件が合えば取り組みたい」が最も多く、6割を超えている。
    • 連携対象としてポジティブな見解が多いのは「密接な取引関係のある企業(調達先や納入先等)」であり、いずれの連携施策においても「是非取り組みたい」と「条件が合えば取り組みたい」が最も多く、6割前後となっている。実質的な事業継続を担保するうえで、サプライチェーンを構成するアクター同士の連携が求められている。
  2. 解決策案を成功に導くための条件としては、強力なリーダーシップ(推進力のある運営主体)と企業間連携が求められている。

    参照

    • いずれかの解決策案に対し「是非取り組みたい」または「条件が合えば取り組みたい」とした回答者(n=436)に対し、解決策案を成功に導くための条件について尋ねたところ(複数回答)、「推進力のある運営主体の存在」(40.4%)が最も多かった。次いで「連携企業・団体間における信頼関係の構築」(32.8%)、「連携企業・団体の適切な選定」(27.3%)の順となっており、強力なリーダーシップの存在を求めつつも、連携企業・団体との連携を重視していることが伺える。
  3. 推進力のある運営主体としては、地方自治体・独立行政法人や業界団体を推す意見が多い。

    参照

    • 解決策案を成功に導くための条件として「推進力のある運営主体の存在」を選択した回答者(n=176)に対し、運営主体としてふさわしい主体を尋ねたところ(3つまで選択)、「地方自治体・独立行政法人」(62.5%)が最も多く、次いで「業界団体」(50.0%)、「地域内の財界団体(経営者協会、商工会、等)」(35.2%)の順となった。

6. BCPの運用・管理の実施状況と課題

  1. 社内への周知や訓練は取り組みが進んでいるものの、人事異動・組織変更などを踏まえた継続的な更新は十分になされていない。BCPの戦略的活用は低い実施状況にあるが、実施予定の企業も多く、BCPの戦略的活用への意欲は高いと想定される。

    参照

    • BCP策定済みの回答者(n=429)に対し、BCPの運用・管理について取り組みごとの実施状況を尋ねたところ、社内への説明・周知は「実施している」と「実施していないが、実施する予定がある」まで含めれば8割を超えている。机上訓練や実動訓練の実施状況が「実施していないが、実施する予定がある」まで含めれば75%以上であるのに対し、e-learningや講義形式での教育の実施状況は10ポイント低く、BCP発動時の動きを意識した対策がとられている。
    • BCPの人事異動・組織変更などを踏まえた更新について、「実施している」と回答した企業は43.4%にとどまっており、策定済みのBCPの継続的なメンテナンスが十分になされていない状況にある。
    • BCPの戦略的活用は低い実施状況にあり、「実施している」と回答した企業は4割に満たない。一方で、「実施していないが、実施する予定がある」と回答した企業は30.5%と全項目の中でもっとも高く、BCPの戦略的活用への意欲は高いと想定される。
  2. 地域別では、中国・四国のBCPの運用・管理の実施状況が低い。熊本地震の被害が大きかった九州・沖縄は運用・管理への意識が高まっている。

    参照

    • 地域別で、「実施している」と「実施していないが、実施する予定がある」を合わせた実施状況をみると、中国・四国はBCPの策定自体は進んでいる(図1-2-2)にもかかわらず、BCPの運用・管理は実施されていないことがわかる。
    • 九州・沖縄はBCPの運用・管理を実施している」割合がすべての項目で大きく、特に机上訓練や実動訓練の実施状況が「実施していないが、実施する予定がある」まで含めれば9割以上であり、戦略的活用についても9割に近い。熊本地震を踏まえて、BCPの策定のみならず運用・管理への意識の高まりが示唆される。
  3. BCPの運用・管理が実施されていない理由は要員不足。社内要員・経営層の理解不足が背景にあると想定される。

    参照

    • BCPの運用・管理について取り組みごとの実施状況を「実施していないし、実施する予定もない」と回答した項目について実施していない理由を尋ねたところ、全体的に維持・管理に必要な要員が不足していることが大きな理由であった。社内要員・経営層の理解不足も理由として挙げられており、根本的な原因として事業継続への継続的取り組みへの組織全体の理解不足が指摘できる。

7. 熊本地震を踏まえたBCPの見直し状況

  1. 2017年熊本地震の発生を受けBCPを見直した企業は1割程度。見直し予定まで含めると約4割の状況。

    参照

    • 現在の自社のBCP(策定済み・策定中・策定予定あり)について、2017年4月の熊本地震を起因とする見直しの有無を尋ねたところ、見直しがあった(見直し中を含む)が13.3%と低く、見直し予定ありを含めると40.4%の状況であった。
    • 従業員規模別でみると、5,000人以上で見直しがあった(見直し中を含む)が23.0%となり、従業員1,000人未満の場合は8~11%と低い見直し状況にあった。大企業では見直しが進んでいるが、規模が小さい企業では手が回っていない状況がみてとれる。
    • 地域別でみると、九州は見直しがあった(見直し中を含む)が37.8%と最も高く、見直し予定ありを入れると7割近い。また、北海道は見直し予定ありが46.7%であり、熊本地震を踏まえた見直し機運が高まっている。
    • 業種別で見ると、公共機関は見直しがあった(見直し中を含む)が26.9%に対し、「その他」の業種を除く、公共機関以外の業種は9~15%となっており、民間企業におけるBCPの見直しが遅れていることがわかる。
  2. 想定リスクの見直しは、直下型地震に対する見直しが65.7%。超広域地震に対する見直しも5割を超える状況。熊本地震を教訓とした直下型への備えが進んでいると想定される。

    参照

    • 「見直した」または「見直し予定」であると回答した企業(n=309)に対し、どのようなリスクについて見直しを行った、あるいは見直し予定かを尋ねたところ(複数回答)、直下型地震の想定リスクの見直しが65.7%となり、熊本地震を教訓に直下型への備えを急いだ企業が多いと想定される。
  3. 東日本大震災で得られた教訓が生かされたと回答した企業は40.6%。緊急時の体制構築や従業員の安否確認への備えに生かされている。

    参照

    • 熊本地震の際の企業の事業継続に向けた取り組みにおいて、東日本大震災で得られた教訓が生かされたか尋ねたところ(自由回答)、生かされたという回答は40.6%であった。
    • 生かされたという回答の内訳をみると、社内連絡体制や従業員安否確認について教訓が生かされたという回答が多かった。


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