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2016年11月15日

8Kスーパーハイビジョン技術を医療応用する初の国家プロジェクト
腹腔鏡手術システムでの実用化目指し始動

国立研究開発法人国立がん研究センター
一般財団法人NHKエンジニアリングシステム
オリンパス株式会社
株式会社NTTデータ経営研究所

 国立研究開発法人国立がん研究センターと一般財団法人NHKエンジニアリングシステム、オリンパス株式会社、株式会社NTTデータ経営研究所は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構『8K等高精細映像データ利活用研究事業』の支援により、8Kスーパーハイビジョン技術(以下、8K技術)を用いた新しい腹腔鏡手術システムの開発と高精細映像データの活用を検討する研究を開始します。これにより、日本発の医療機器等の振興を図り、あわせて、高精細映像データの診断等への利活用に向けた具体的方策と課題の検討・検証を推進します。

 8K映像は、従来のハイビジョンの16倍にあたる3,300万画素の超高精細画像で、その密度は人間の網膜に迫ると言われています。本研究は、日本発の次世代放送技術である8K技術を医療機器に応用する初の試みです。その実用化により、がん手術がより精密かつ繊細に行えるようになり、腹腔鏡手術をはじめとする内視鏡手術の安全性と根治性を一層向上させ、医療経済へも良い影響をもたらすなど、医療現場に大きな変革が期待される国家プロジェクトです。

fig01_我が国発の次世代の放送技術
fig02_8K技術を用いた腹腔鏡手術システムのイメージ

【背景】

 腹腔鏡手術の件数は、近年、急速的に増えている一方で、モニターに画像を映し出して手術を進めるため、画質が手術の質に影響したり、手術操作の制限や死角が発生することで、開腹手術と同等の質が担保できない場合や術中偶発症の発生が問題となることがあります。例えば、従来の腹腔鏡は視野が狭く、空間認識も困難であることから、腹腔鏡と周りの手術器具と衝突するリスクもあり、術中の臓器損傷の発生率が開腹手術の2倍に上るとの報告もあります(JCOG0404試験)。
 本プロジェクトでは、このような課題を解決するため、光学性能の改善やカメラの更なる高感度化と小型・軽量化、さらに8Kによる広域表示と術者の意向に従ったズームアップの表示も同時に行う技術開発に取り組みます。
 また医療機器においては、外国資本が圧倒的シェアを占めているのが現状ですが、8K技術はNHKで開発された日本発の技術です。医療提供・研究を行う国立がん研究センターと腹腔鏡手術システム開発行うNHKエンジニアリングシステム、オリンパス、データ解析を行うNTTデータ経営研究所が共同で取り組むことにより、周辺機器や高精細映像データを活用した新規診断法の開発など、世界へ向けた次世代の腹腔鏡の規格確立を目指すことが可能となりました。

fig03_現在の腹腔鏡手術システム例

【開発課題と目標】

 プロジェクトチームは、8K技術を用いた新しい腹腔鏡手術システムの開発と、実用化・普及を目指し以下の課題に取り組みます。

  1. 硬性鏡の光学性能の改善
  2. 8K カメラの更なる高感度化と小型・軽量化
  3. 発熱の少ない高輝度光源の開発
  4. 硬性鏡と接続しやすい低重量の接続機器(アダプター)の開発
  5. 広視野角8K映像を得ると同時に8K 映像から術野を電子的にズームアップした狭視野角映像を得るため、狭視野角映像の範囲、位置を術者の意向に従って特定して切り出す新しい技術の開発
  6. 高精細映像を症例ごとにデータベース化し、高解像度データを利用した新規診断法の開発

 上記課題に取り組み、平成29年度中に新腹腔鏡手術システムの試作品完成、動物実験等による試作品の基本性能向上および実証を行い、人を対象とした試験の開始を目標とします。
 また、得られた腹腔内の臓器映像やがん腫の微細構造の観察画像と、実際に切除して得られた標本の病理学的解析結果の対比を組み合わせとした高精細映像を症例ごとにデータベース化し、日本内視鏡外科学会の客観的、技術的評価と助言も受け、新規診断法開発への活用を検討します。
 そして、平成30年度には実用化・普及に向けた具体的な計画や、収集したデータを用いた医療上の有用性、病院間でのデータ共有と有効性におけるとりまとめも行います。

【実用化に伴う期待】

がんの根治性(治癒率)の向上
  • 超高精細な8K技術を腹腔鏡手術へ応用することにより、従来の内視鏡とは比べ物にならない超臨場感が生まれ、手術が更に緻密となり、がん領域においては適正な病変、リンパ節の切除を行えることが期待されます。開腹手術以上の超高精細な手術をすることで根治性がより高まり、より多くの症例に治癒をもたらすことが期待できます。
  • 肉眼では見えにくい自律神経に係る手術においても、超高精細かつ広色域な映像の特色を十分に活かした精度の高い手術が可能になるため、例えば排尿や性機能といった機能の温存についても向上が期待されます。
  • 8Kカメラの高解像性能を活用した術野全体と施術部位近辺の同時表示が可能なシステムの開発により広い手術空間を視認することができ、術中の顕性、不顕性臓器損傷が避けられ合併症が減少します。
医療経済への貢献
  • 治癒率の向上により、再発後の分子標的薬を含む高額の薬物療法の必要な患者を減らし、また合併症の減少により、術後在院日数の短縮へとつながることが期待されます。
  • カメラスタンドの実用化によりカメラを保持する外科医が不要となるため、従来3人の外科医で行っていた手術が2人で遂行可能となります。そのため、外科医不足が深刻な地方においても、現在以上の水準の治療が可能となり、地方医療にも貢献できます。
知的データベースの構築(新しい診断学の確立)

8K内視鏡システムならびに超高精細画像情報データベースを利用することにより、従来は認識することができなかったがん腫の微細構造の観察、新しい画像診断が可能となることが期待されます。そして、新しい画像診断学に基づく人工知能活用で、リアルタイムの診断補助情報を内視鏡画面に合成し、最適な手術アプローチ法を使い分け、再発高リスク群の抽出、病変部の見逃し低減が可能となり、効果的な治療法の開発に繋がる可能性も期待できます。

fig04_知的データベースの構築

【研究費】

国立研究開発法人日本医療研究開発機構
課題名:「8Kスーパーハイビジョン技術を用いた新しい内視鏡(硬性鏡)手術システムの開発と高精細映像データの利活用」
代表者:国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 大腸外科科長 金光 幸秀

【参考】

総務省:8K技術の応用による医療のインテリジェント化に関する検討会
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02ryutsu02_03000261.html

fig05_8K技術の応用による医療のインテリジェント化に関する検討会 報告書 概要

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国立研究開発法人国立がん研究センター
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