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お知らせ

2014年4月1日

「応用脳科学リサーチプロジェクト2013」

脳・神経関連疾患の社会コストは年間約27兆5千億円、
2025年の脳科学関連産業は3兆円市場へ成長の見込み

株式会社NTTデータ経営研究所

株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:豊田 充、以下 当社)は、2013年10月より2014年3月にかけて「応用脳科学リサーチプロジェクト2013」を発足し、脳科学に関する現状と展望について調査を行いました。

1. 脳・神経関連疾患の社会コスト※注1推計と2025年の脳科学関連市場規模予測

     
  • 脳・神経関連疾患の社会コスト: 年間27兆4,549億円
  •  
  • 2025年の脳科学関連市場規模: 3兆265億円

2. 脳科学の産業応用に関する調査※注2 ※注3
     
  • 経営分野では、「研究開発」、「マーケティング」での活用が期待される。
  •  
  • 産業分野では、取り組み実績が多い「医療・ヘルスケア」、「自動車」が今後も期待される。

3. Voicepaniel TM(ボイスパニエル)※注4 を利用した脳に関するソーシャルリスニング
     
  • ソーシャルメディアであるTwitterの投稿情報を分析するVoicepanielを用いて脳に関連するキーワードを含むものを抽出し、分析を加えた。
    「心(心理)」、「右脳」に対する興味・関心が高いものの、簡素化・疑似科学的な内容も多く、脳科学研究の実態と社会一般層との理解に溝が存在していることを示唆する結果となった。
    なお、本調査結果の詳細は、調査レポート「応用脳科学リサーチプロジェクト2013 調査報告書」(価格98,000円+消費税、2014年4月発刊予定)として販売いたします。


 「応用脳科学リサーチプロジェクト2013」は2013年10月から2014年3月にかけて、脳科学の現状と展望について「脳・神経関連疾患の社会コスト推計と2025年の脳科学関連市場規模予測」、「脳科学の産業応用に関する調査」、Twitter投稿情報の解析を通した「Voicepanielを利用した脳に関するソーシャルリスニング」の3種の調査を行い、脳・脳科学に対する社会が抱える課題や最先端の技術と発展可能性等、様々な角度より分析を行いました(図表1)。

 本調査の結果が、企業の経営企画や事業開発などにご活用頂けるだけでなく、研究・産業の相互活性化の一助となれば幸いです。なお、本報告書の目次は添付資料をご参照ください。


図表1 「応用脳科学リサーチプロジェクト2013」の全体像


【リサーチプロジェクト2013 調査概要】

 脳科学研究は神経イメージングや脳情報解読技術の著しい発展に伴い、近年大きな進歩を遂げている分野である。例として、近年の政府の取り組みを挙げると、文部科学省の脳科学研究戦略推進プログラム※注5や総務省の脳の仕組みを活かしたイノベーション創成型研究開発※注6、また日本版NIH(米国・国立衛生研究所をモデル)の創設※注7といった、脳科学関連分野における先端技術の開発支援を積極的に行っている。

 一方、脳に関連する疾患(うつ病や認知症)などは高齢化、社会経済環境の変化などから増加しており、これから社会全体で取り組むべき大きな課題となっている。

 海外に目を向けると、米国はBRAIN Initiativeプロジェクトに2014年度でおよそ100億円(1億ドル)を投入することを表明しており※注8、EUのThe Human Brain Projectでは10年間でおよそ1,680億円(12億ユーロ)の研究費を見込んでいる※注9

 このような世界的流れを受け、当社では、脳科学を応用した新産業や社会問題の解決に向けて、産業・臨床における脳科学応用を産学官一体となって発展させていく一助とするため、2013年10月から2014年3月にかけて、脳科学の現状と展望について以下の3種の調査・分析を行った。


1.脳・神経関連疾患の社会コスト推計と2025年の脳科学関連市場規模予測
 現状(2013年)の脳に関わる「医療分野の課題」と、将来(2025年)における「関連技術の発展可能性」を経済的インパクトとして推定した。

【結果サマリー】 ※調査結果の一部を記載
(1) 脳・神経関連疾患により生じる社会コスト:27兆4,549億円
 脳・神経関連疾患に罹患することにより生じる社会コストは、年間27兆4,549億円(主として平成23年医療費の概況を基に推定)であると推計される。内訳は、認知症13兆2,451億円、脳卒中6兆9,874億円、気分障害(うつ病など)4兆3,516億円、統合失調症1兆8,435億円、その他の疾患(睡眠障害、てんかん、パーキンソン病など)1兆272億円であった(図表2)。

  脳・神経関連の疾患には、脳卒中における後遺症に対する介護、気分障害における休職・離職の問題や統合失調症における自殺・就職困難の問題があることから、直接的な医療費だけでは把握が困難な間接的費用などがコストを押し上げる要因となっている。

 なお、EUにおける試算では脳関連疾患のコストを年間およそ112兆円(8,000億ユーロ)としており※注10、人口規模(2012年でEUは5億904万人※注11、日本は1億2,752万人※注12)などを考慮すると、本調査の試算はおおむね妥当であると言える。

(2) 2025年における脳科学関連製品・サービス市場規模:3兆265億円
 脳科学関連製品・サービスのシーズとなる先端技術について調査および事例の収集を行い、2025年における脳科学関連の市場規模を予測した結果、3兆265億円の市場になると推定した。

  脳科学関連産業のうち、最も有力な成長市場と考えられる分野はロボット産業であり、2025年に1兆3,033億円の巨大市場となることが見込まれる。次いで、製薬産業が6,145億円、半導体産業が5,186億円であった(図表3)。現在、日本は産業用ロボット市場では世界シェアトップを維持しており※注13、ロボットへの脳科学応用がさらなる成長の鍵となることが期待される。

  医療関連ビジネス分野においては高度化した健康診断ビジネス(脳ドッグ)や脳・神経系統に障害を負った人向けのリハビリを支援するBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)、機械と脳をつなぐことによる人工感覚(人工内耳・人工網膜)などの技術革新が期待される。また、半導体産業では脳の構造を模したニューロチップの人工知能への応用が目指されている。

*[ロボット産業]人工知能を搭載した自律学習・コミュニケーションが可能なロボット/[製薬産業]認知症治療薬、抗うつ薬、統合失調症治療薬、催眠鎮静薬、パーキンソン病治療薬/[半導体産業]ニューロチップ(コンピュータ、スマートホン、タブレットなど向けCPU)/[情報通信産業]システム・ソフトウェア形態の人工知能サービス/[自動車産業]車載システム、運転者補助装置/[家電産業]BMI家電/[医療・福祉関連ビジネス]BMI福祉用具、人工感覚、健康診断ビジネス/[娯楽産業]ゲーム、玩具/[教育産業]生涯学習、法人研修/[その他]ニューロマーケティング


2.脳科学の産業応用に関する調査
  脳科学研究と産業との関わりについて整理を行い、今後の方向性を探るために、研究機関・医療機関と産業界の双方に対して脳科学の産業応用に関するアンケート調査を実施した。

【結果サマリー】 ※ 調査結果の一部を記載
  製品・サービスにおける脳科学の産業応用への現在までの取り組み分野と、今後の可能性を感じる分野については、研究機関・医療機関と企業・官公庁ともに、「医療・ヘルスケア」、「自動車」の回答件数が多い結果となった(図表4)。特に「医療・ヘルスケア」の分野については、脳科学の応用が強く期待されており、産学官連携の研究開発が行われる可能性が高い分野と考えられる。その他、研究・医療機関においては「教育業」への応用可能性も期待されている。

図表4 製品・サービスにおける脳科学の産業応用について 順位表

製品・サービスにおける脳科学の産業応用について 順位表


  企業経営・事業運営における脳科学産業応用の現在までの取り組みと今後の可能性については、研究機関・医療機関と企業・官公庁ともに、「研究開発」、「マーケティング」の回答件数が多い結果となった(図表5)。また、実績においては「ブランディング」にも注力されており、商品開発に直結するこれら分野への取り組みより、既に産業応用が行われてきたことが示された。その他、研究機関・医療機関において、「人材育成」、「組織マネジメント」への応用可能性が期待されている。

図表5 企業経営・事業運営における脳科学の産業応用について 順位表企業経営・事業運営における脳科学の産業応用について 順位表



3.Voicepanielを利用した脳に関するソーシャルリスニング
  企業や研究機関だけでなく、一般社会における「脳」に対する興味・関心について理解を深めるため、一般に広く浸透しているTwitter専用の解析サービスVoicepanielを使用してソーシャルリスニングを行った。調査対象となる脳に関する投稿約25万件のうち、脳に関連の深い「技術」や「分野」など8カテゴリの分析軸に該当する約5.4万件のTweetを抽出し、それぞれのカテゴリ内において属性および内容について解析を行った。

【結果サマリー】 ※ 調査結果の一部を記載
  今回解析したTwitterの投稿では、アニメやゲームなどの身近なコンテンツや各種メディアを通し、脳に関する知識・関心を高めている傾向が捉えられた。「脳」に対する一般層の関心に広がりが見られる一方で、脳の部位や神経伝達物質などに対する簡略的・疑似科学的な理解に基づく投稿も多く見られた。一般層に「脳」の分野の正確な知識が浸透しているとは言い難く、脳科学に対する誤解や理解不足、そして過度の期待につながる可能性が考えられる。さらなる脳科学の発展及び産業応用の展開のためにも、一般層の科学リテラシー向上が望まれる結果となった。

(1) 分野:「心」に関するTweetについては、「心理」・「心理学」など、脳科学と関わりの深い学問分野に関する内容を投稿していた(図表6)。

(2) 部位 :「右脳」「左脳」に関して、左脳=論理的・右脳=直感的など、脳部位と機能を対応させたやや単純化したイメージによる投稿が多い結果となった(図表7)。





※注1 本調査における社会コストとは、脳・神経関連疾患により社会が被る損失を指し、医療費・介護費の支出や失業・死亡などによる逸失利益を算出しています。
※注2 本調査の対象は、CAN(応用脳科学コンソーシアム)のメルマガ会員およびCAN活動にご指導頂いている研究機関所属の研究者であるのため、全産業・全研究機関を対象としたアンケートとは異なります。
※注3 アンケート依頼先:CAN(応用脳科学コンソーシアム)メールマガジン会員及びCAN活動にご指導を頂いている研究機関ご所属の研究者計1346名、有効回答数:計274名(うち研究機関・医療機関所属114名、企業・官公庁所属160名)
※注4 Voicepaniel TMは、NTTデータ先端技術株式会社と株式会社NTTデータ経営研究所が共同開発したTwitter投稿情報解析システムです。本システムは、機械学習技術を利用したPRツイート除去技術や業種別テンプレートや業種独特の言い回しに関する辞書に基づく判定ロジックなどを活用し、ビッグデータの1種であるTwitter投稿情報からビジネス的に活用できるTweetを峻別し、カテゴライズすることにより、効率的・効果的に商品開発や販売促進などに役立てることができます。
詳細(プレスリリース):http://www.keieiken.co.jp/aboutus/newsrelease/131107/
※注5 http://brainprogram.mext.go.jp/outline/
※注6 平成23年度 情報通信技術の研究開発に係る提案
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin03_01000016.html
※注7 首相官邸 政策会議 産業競争力会議(2013年3月29日資料)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai5/siryou.html
※注8 Fact Sheet: BRAIN Initiative、Office of Science and Technology Policy blog(ともにWhite House)
http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2013/04/02/fact-sheet-brain-initiative
http://www.whitehouse.gov/blog/2014/02/24/white-house-call-action-advance-brain-initiative
※注9 Human Brain Project Report(The Human Brain Project)
https://www.humanbrainproject.eu/documents/10180/17648/TheHBPReport_LR.pdf/18e5747e-10af-4bec-9806-d03aead5765
※注10 注9に同じ
※注11 欧州連合(EU)概況(外務省) http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/data.html
※注12 人口推計(総務省) http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2012np/
※注13 2012年ロボット産業の世界市場(経済産業省) http://www.meti.go.jp/press/2013/07/20130718002/20130718002-3.pdf


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コーポレート統括部
井上、石渡
Tel:03-5213-4016(代)
E-mail: webmaster@keieiken.co.jp

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