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「環境新聞」2014年10月29日より

リサイクルビジネス進化論(15)
~勝者のコアコンピタンス~
「海外拠点」に求められる機能/拡大市場を見据えたチャレンジ投資

株式会社NTTデータ経営研究所
資源循環ネットワーク代表理事
シニアマネージャー 林 孝昌

 オーソドックスな廃棄物処理業は内需型産業の典型だが、リサイクルビジネスはグローバル化との親和性が高い。商材である循環資源は国際市況品であり、スケールメリットが働く上、買い手の素材製造業は世界各国に立地している。ただし、製造業のように、日系セットメーカーの海外展開を下請け中小企業がまとめて追従するという進出モデルは成立しない。大手自動車メーカー系列の商社でさえ、当該企業の工場スクラップだけを取り扱う訳ではない。つまり、リサイクルビジネスの海外展開は自らが海外の取引先や市場と相対して切り開くチャレンジ投資なのである。

 本格的な海外展開には海外拠点の整備が必須となる。また、その投資規模や役割は、事業モデルに応じて大きく異なる。本稿では、海外拠点に求められる機能等について検証を行う。

 まずは国内向け集荷を目的とした「商社機能」である。米国やオーストラリアなど、いわゆる先進国との取引の場合、バーゼル法などの規制対象外となる品目が省令で定められている。特に「プリント配線基板」、「電子部品」、「電線」、「その他の電子スクラップ」などは、国内製錬メーカー向けとして今も積極的に輸入されている。わが国の製錬技術は世界最高水準にあり、例えば基板であれば高度な前処理技術との組み合わせにより、銅や貴金属類などを高い歩留りで回収できる。また、取り扱い素材の付加価値が高いため、物流コストのハンディを超えた国際調達も可能である。各国に拠点を有する製錬メーカーは無論のこと、現地工場などからの集荷力さえあれば純粋な商社としても参画できる。商社機能の強化は、海外都市鉱山開発に資するという点で、社会メリットが大きい。

 次に、循環資源の輸出先国での「流通機能」を担う拠点もある。わが国は古紙や廃プラスチックなどの純輸出国であり、自社物品の加工販売などを起点に、現地で問屋としての活動を始める企業も見られる。その先行事例が、古紙直納問屋である。日本からの調達力を背景に、ベール化から輸送、納品に至るまでの仕組み自体を現地化してきた。

 また、廃プラスチックの場合、日本の調達物品を現地の保税区で加工して、当該国内あるいは他の国に原料として販売する事例もある。いずれも、わが国スクラップ業が国内で磨いた流通システムの現地展開であり、グローバルな循環資源物流の高度化に寄与している。

 最後に、「工場機能」が挙げられる。現地で循環資源の回収・再資源化を行い、素材製造業などに販売して安定した事業収益を生み出すインフラ輸出の実践である。新興国マーケット拡大を見据え、家電リサイクルシュレッダー、セメント原燃料化など、これまでもさまざまな大規模設備投資が行われてきた。ただし、高い収益性を実現した事業は、寡聞にしてまだ耳にしたことがない。

 その理由は多岐にわたるが、そもそもローテク産業であるリサイクルビジネスは、「リープフロッグ型」の発展に馴染まないのだ。持久戦の覚悟がなければ、工場機能の現地化は避けるべきと言える。

「海外拠点」に求められる機能

 海外拠点の整備は未来への投資である。「巧遅は拙速に如かず」ということわざが、いつでも当てはまる訳ではない。



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