【主な調査結果と考察】
1.働き方改革の動向 ~働き方改革に取り組み企業は46.1%と、調査開始以来、初めての減少~
2019年4月1日からの働き方改革関連法の施行、そして新型コロナウイルス感染症対策に迫られた2020年以来、働き方改革に取り組む企業は増加していたものの、今回(2022)の調査では前回(2021)調査と比べて9.9ポイント減少し、全体(N=1,103)の46.1%となっている(56.0%→46.1%)。これは従業員規模にかかわらず、10ポイント前後の減少が見受けられる。ただし、働き方改革を「実施していない」は微増に留まっており、「わからない」とする回答割合が増加していることから、コロナ禍が長期化する中で、勤務先の働き方改革に関する取り組みが従業員から見えにくくなっている影響が表れている可能性がある。
働き方改革の取り組み(N=572)では、「テレワーク制度」(58.9%)と「休暇取得の推進」(53.8%)が、継続して行ってほしい施策として最も多く挙がっている。一方で、「副業や兼業を認める」「残業代削減費用の従業員への還元」「ワーケーションの実施」などについて「制度はないが実施してほしい」とする回答が2割超となっている。
2.つながらない権利 ~就業時間外に業務上の対応をしたことがある割合は減少。就業時間外における連絡ルールの整備が進展した可能性~
上司から就業時間外において業務に関して緊急性のない電話やメール(LINEなどを含む)があり、通話・返信などを週1回以上対応している人は、前回(2021)調査と比べて、6.5ポイント(22.5%→16.0%)減少しているほか、同僚間においては、9.1ポイント(25.0%→15.9%)の減少がみられ、調査開始以来、初めての減少となった。これは、前年度調査においては、テレワークの普及により就業時間外における連絡が容易となる中で、つながらない権利の確保に向けた社内ルールの整備などが進展している可能性がある。
3.キャリア志向 ~コロナ禍を経て、新しいことに挑戦し続けたい層と、同じ職場で同一業務に従事し続けたい層との2極化が推し進められた~
「コロナ禍を経て、働き方・今後のキャリア志向に何らかの変化があった」と回答した人(24.2%)と「コロナ禍を経て、働き方・今後のキャリア志向に何らかの変化がなかった」と回答した人(75.8%)について、キャリア志向にどのような変化があったか比較すると、前者は「自身の専門性の有無に関わらず、新しいことに挑戦し続けたい」(28.1%)という回答が多かった。その一方で、後者では「雇用の安定性を重視して働きたい」(35.6%)、「同じ職場において同一業務に従事し続けたい」(32.9%)が多く、「自身の専門性の有無に関わらず、新しいことに挑戦し続けたい」(9.0%)と回答した人は少なかった。
このことから、コロナ禍を経て、新しいことに挑戦し続けたい層と、同じ職場で同一業務に従事し続けたい層とで2極化が推し進められている結果が浮き彫りになった。
4.転職時の条件 ~コロナ禍によりテレワークが浸透。テレワーク制度の導入有無が転職を決める際の重要な要因となっている~
コロナ禍前と比べて、転職時に重視する条件に変化があったと回答した人(11.8%)のうち、重視する条件として、「テレワークが導入されている、または許可される頻度が高いこと」(35.4%)が多かった。この数値は、最も重視される条件の「給与水準が高い」(38.5%)の次に高く、「自身の目指すキャリアと業務内容が合致している」(31.5%)より高い結果となった。
また、テレワーク導入によるメリットとデメリットを比較して、「メリットが上回ると感じる」とする回答者(69.5%)が多かった。回答者がテレワークのどういった点にメリットを感じているか、回答率が高かった項目上位3つを順に並べると、「通勤等の移動時間を他の時間に充てられる点」(73.3%)、「通勤等の移動がない分、身体的な負担がない点」(59.8%)、「身支度を簡略化できる点」(33.7%)となっており、通勤からの解放を理由に挙げる回答者が圧倒的に多かった。