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NTTデータ経営研究所が「パーソナルデータの活用に関する一般消費者の意識調査」を実施

~既存サービスに利便性を感じる利用者の一定の存在を確認。一方で、今後の普及に向けては、パーソナルデータの管理の安全性や運営業態の信頼性がポイントに~
2022.01.13
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株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:柳 圭一郎、以下 当社)は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:塚本良江)が提供する「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象に「パーソナルデータの活用に関する一般消費者の意識調査」(以下、本調査)を実施しました。

本調査では、様々な企業が、情報銀行やPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)サービスなどのパーソナルデータを活用したサービスに参入することによって、当該サービスが普及しつつある昨今の状況を鑑み、パーソナルデータの利活用に関する国内の一般消費者の最新の意識を把握することを目的に調査を実施しました。

【主なポイント】

  • 1.「パーソナルデータ活用サービスの利用経験・今後の意向」
    • 8.0%が過去の利用経験とともに今後の利用意向を示しており、利便性を感じている消費者が既に存在
    • 今後のサービス提供に向けては、過去の利用経験はないが、今後の利用意向がある23.1%に対するアプローチが鍵に
  • 2.「サービスの運営業態の競合優位性・特徴」
    • 競合優位性として、「安全管理措置の確保」(22.1%)が最も支持され、データの安全な管理・取扱いがサービス提供のポイントに
    • サービスの運営業態として、最も信頼度が高いのは「銀行」(23.2%)や「クレジットカード会社」(18.4%)といった金融機関。次いで、「電気・ガス・水道業」(17.2%)、「郵便」(13.0%)などのインフラ企業が上位で支持
  • 3.「データ提供への抵抗感」
    • 金銭的対価の観点では、「金融資産情報(ストック・フロー面)」、「位置情報」、「Webアクセス履歴」について、抵抗感を持つ回答者が60%以上
    • 対価ではなくデータの利用目的に着目したところ、「健康・医療・福祉」、「防災等の災害・安全対策」、「公的サービス改善」、「安全保障」等が支持され、民間企業においても公共的な利用目的でのデータの利用が利用者獲得の鍵に
  • 4.「パーソナルデータ活用サービスのニーズ」
    • 「自身の個人情報の追跡・安全性確認サービス」(47.3%)と「医療機関間等での検査結果データ共有サービス」(46.1%)について40%以上の利用意向あり

【調査背景】

2018年に総務省・経済産業省による情報銀行に関する認定指針を受け登場した情報銀行1や、2022年に施行予定の改正個人情報保護法における個人の権利の在り方の強化(個人は、民間企業に対して保有するパーソナルデータの開示方法を指示できる)などの、パーソナルデータの活用に向けた環境整備が進んでいます。

また、2021年6月に閣議決定された「包括的データ戦略」においては、官民の垣根を超えたデータの連携・利活用を通じて新たな価値を創出するための検討が進められており、今後ますます官民におけるパーソナルデータの活用が促進されることが見込まれます。

本調査では、様々な企業による情報銀行やPHRサービスなどのパーソナルデータを活用したサービスへの参入や、サービスが普及している現状において、国内の一般消費者がパーソナルデータの利活用に関してどのような意識を持っているかなどを把握することを目的に調査を実施しました。

1 一般社団法人日本IT団体連盟が情報銀行の認定事業を開始し、2021年10月時点で2社が通常認定、5社がP認定を取得している。(P認定:「情報銀行」サービス開始に先立って立案した計画、運営・実行体制が認定基準に適合しているサービスであることを認定するもの。サービス開始後において運営・実行、改善を図り、『通常認定』の取得が条件となる)

【主な調査結果・考察】

1.「パーソナルデータ活用サービスの利用経験・今後の意向」

8.0%が過去の利用経験と今後の利用意向を示しており、利便性を感じている消費者が既に存在

情報銀行などのパーソナルデータを活用したサービスの利用経験について、利用したことはあると回答した人の割合は、10.6%となった(「利用したことはあるが、今後は利用したいとは思わない」、「利用したことはあり、今後も利用したいと思う」の回答の合計)。

今後のサービス提供に向けては、過去の利用経験はないが、今後の利用意向がある23.1%に対するアプローチが鍵に

今後の利用意向について、今後利用したいと思うと回答した人の割合は、31.1%となった(「利用したことはないが、今後利用したいと思う」、「利用したことはあり、今後も利用したいと思う」の回答の合計)。

利用経験と今後の利用意向がともにある8.0%の回答者は、パーソナルデータを活用したサービスの利便性を既に感じていると推察されるが、今後のパーソナルデータ活用サービスの普及に向けては、23.1%の利用経験はないが、今後の利用意向はある回答者に対するアプローチが企業には求められる。

図 1 パーソナルデータを活用した様々なサービスの利用経験・今後の利用意向

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2.「サービスの運営業態の競合優位性・特徴」

競合優位性として、「安全管理措置の確保」(22.1%)最も支持され、データの安全な管理がサービス提供のポイントに

パーソナルデータを活用したサービスを選択する条件について、「安全管理措置の確保」が最も支持された(22.1%)。サービス提供の際には、データ漏えいなどの防止策や、問題が発生した際の対応策や責任を明確にするなどの、利用者が安全性を感じることができる措置を講じることが利用を促すためのポイントとなる。

図 2 パーソナルデータを活用したサービスを選択する条件(競合優位性)

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サービスの運営業態として、最も信頼度が高いのは「銀行」(23.2%)や「クレジットカード会社」(18.4%)といった金融機関。次いで、「電気・ガス・水道業」(17.2%)、「郵便」(13.0%)などのインフラ企業が上位で支持

安心して利用できるパーソナルデータ活用サービスの運営業態として、銀行・クレジットカード会社・保険といった金融機関、次いで、電気・ガス・水道業・郵便・通信・物流といったインフラ企業が約10%以上の回答を集めた。

最も回答の割合が多かったのは、銀行(23.2%)であり、消費者の預金を取り扱うことによる既存の信頼性が、データの取扱いに対する信頼につながっていると考えられる。

図 3 安心して利用できるパーソナルデータ活用サービスの運営業態

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3.「データ提供への抵抗感」

金銭的対価の観点では、「金融資産情報(ストック・フロー面)」、「位置情報」、「Webアクセス履歴」について、抵抗感を持つ回答者が60%以上

「どのような条件であっても企業に提供したくない」と回答したパーソナルデータについて、「株式や債券、口座残高等の金融資産情報(ストック)」は63.5%、「位置情報」は62.6%、「年収、借入等のその他の金融情報(フロー面)」は62.5%、「Webアクセス履歴」は61.5%と、60%以上の回答が集まった。

一方で、「予防接種情報(新型コロナウイルスワクチン等)」、「趣味・嗜好」、「電力、ガス、水道の使用量」、「身長、体重、歩数等」については、「どのような条件であっても企業に提供したくない」との回答は50%未満にとどまり、金銭やポイント等の対価を得る条件でパーソナルデータを企業に提供しても良いとの回答が多かった。

図 4 パーソナルデータの提供の対価として求める金銭的条件

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対価ではなくデータの利用目的に着目したところ、「健康・医療・福祉」、「防災等の災害・安全対策」、「公的サービス改善」、「安全保障」等が支持され、民間企業においても公共的な利用目的でのデータの利用が利用者獲得の鍵に

パーソナルデータ提供後の利用目的に応じたデータ提供の抵抗感について、「どのような利用目的であっても提供したくない」の回答は37.6%にとどまり、「健康・医療・福祉」(42.7%)、「防災等の災害・安全対策」(36.0%)、「公的サービス改善」(27.3%)、「安全保障」(23.2%)の公共的な利用目的であれば提供してもよいとの回答が多かった。

パーソナルデータ活用サービスの提供を目論む民間企業においては、自社の事業領域を活かしつつも、公共的な要素をサービスに組み込むことが、利用者獲得の鍵となる可能性がある。

図 5 パーソナルデータ提供の抵抗感がない利用目的

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4.「パーソナルデータ活用サービスのニーズ」

「自身の個人情報の追跡・安全性確認サービス」(47.3%)と「医療機関間等での検査結果データ共有サービス」(46.1%)について40%以上の利用意向あり

パーソナルデータを活用したサービスについて、「自身の個人情報の追跡・安全性確認サービス」、「医療機関間等での検査結果データ共有サービス」、「信用力評価サービス」、「企業が保有する個人情報の電磁的開示サービス」、「参加者の趣味と予定から旅行を調整・提案」、「参加者の食の好みと予定から日程・飲食店を調整・提案」、「自動で買い物リストや献立を提案」、「トレーニングデータと購買履歴を活用した商品提案サービス」、「習い事へ通う子供をタクシーで安心・安全に送迎するサービス」の利用ニーズを調査した。

結果として、「自身の個人情報の追跡・安全性確認サービス」が最も利用ニーズが高く、肯定計(「ぜひ利用したい」と「どちらかと言えば利用したい」の和)が47.3%であった。次いで、「医療機関間等での検査結果データ共有サービス」の肯定計が46.1%となった。

図 6 パーソナルデータを活用したサービスの利用ニーズ

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【結論(今後について)】

本調査の結果、パーソナルデータ活用サービスが提供され始めている状況ではあるものの、一般消費者におけるパーソナルデータ活用サービスの利用経験や認知はまだ低いことが明らかになった。

また、サービスの選択の際に、データの安全な管理やサービス運営者の信頼性を重視する層が多いことから、パーソナルデータ活用サービスのさらなる普及においては、このような一般消費者の意向やニーズを踏まえて検討していく必要がある。

当社では、一般消費者の生活を豊かにするとともに、社会課題を解決し、持続的な社会を実現することができる可能性を秘めた「パーソナルデータの活用」について、今後も調査研究に取り組んでいきます。

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<調査結果の利用について>

・本調査は、株式会社NTTデータ経営研究所とNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が共同で行っており、本調査結果の著作権は、株式会社NTTデータ経営研究所とNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が保有します。

・調査結果の一部を転載・引用される場合は、出所として「NTTデータ経営研究所/NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション」または「NTTデータ経営研究所/NTTコム リサーチ」と併記した上で、掲載日・掲載媒体・引用箇所などの情報につきましては広報担当までお知らせください。

・調査結果について、出所を明記せずに転載・引用を行うこと、データの一部または全部を改変することなどの行為はご遠慮ください。

・本アンケート調査の生データは提供いたしかねます。

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報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ経営研究所

コーポレート統括本部 業務基盤部

広報担当

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内容に関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ経営研究所

金融経済事業本部

金融政策コンサルティングユニット

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