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地方移住とワーケーションに関する意識調査

~都市圏居住者の3割弱が地方移住に関心。うち4割超は、テレワークを活用し現職での勤務継続を希望~
2021.12.06
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株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:柳 圭一郎、以下 当社)は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:塚本良江)が提供する「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象に「地方移住とワーケーションに関する意識調査」(以下、本調査)を実施しました。

本調査では、コロナ禍によって、職場への通勤を前提とせず、働く場所に捉われないテレワークなどのワークスタイルが注目を集める中、首都圏を中心とした都市圏に居住し、就業している人に対して、より都心から離れた郊外や地方への移住と移住後のワークスタイルに対する意識について調査しました。

また、働く場所に捉われないワークスタイルとして、観光地やリゾート地においてテレワークなどを活用して働き、同じ場所・地域で余暇を楽しむ「ワーケーション」に対する意識や実施意向・抵抗感などについても調査・分析しました。

これらの調査の結果、以下のことが明らかとなりました。

  1. 都市圏居住者の3割弱が地方移住に関心があり、うち半数程度は移住に向けて検討・準備を行っている
  2. 移住先の選定にあたっては、出身地など、自身に縁のある地域であることよりも自然環境の豊かさや住宅費、利便性を重視している
  3. 地方移住に関心がある層のうち、4割超が移住後もテレワークを活用し現在の勤務先で働き続けたい
  4. ワーケーションは広く社会に認知されつつある一方で、実体験者は全体の約7%にとどまり、実施には依然として大きな障壁が存在する
  5. ワーケーションに関する知識の有無によってワーケーションに対する印象が異なる
  6. ワーケーションに関する知識の有無によってワーケーション取得時の心理状態が異なる

【背景】

コロナ禍でテレワークが普及したことにより、職場への通勤を前提とせず、働く場所に捉われないワークスタイルが注目を集めています。

なかでも、首都圏を中心とした都市圏に居住・就業している人を中心に、地方移住を検討する人が増えていることから、各地方自治体などで移住者を迎える施策などが積極的に行われています。

また、テレワークにおける従業員の生産性と心身の健康の向上を目的として、ワーケーションの実施を検討する企業が増えており、従業員のウェルビーイングや生産性を高める新しい人事施策として期待されています。

このような社会的背景から、本調査では首都圏を中心とした都市圏に居住し、就業している人に対して、より都心から離れた郊外や地方への移住と移住後のワークスタイルに対する意識やコロナ禍を機に地方移住への関心がどのように変化したかについて明らかにするとともに、地方移住によって現在の勤務先との関係性に変化がもたらされるのかを明らかしました。

さらに、ワーケーションに対する意識や実施意向・抵抗感などを当社独自の視点から調査・分析し、企業がワーケーションを推進する際に障壁となる事柄を明らかにしました。

【主な調査結果と考察】

(1) 都市圏居住者の3割弱が地方移住に関心があり、うち半数程度は移住に向けて検討・準備を行っている

現在都市圏に居住・就業している人(正社員を対象)のうち、地方移住(郊外を含む)に関心があるとした回答は、全体の3割弱(27.9%)に上る。3割弱のうち、1割強(12.9%)はコロナ禍を機に地方移住に関心を持ったと回答しており、コロナ禍を機に地方移住に関心を持つ層が2倍弱に増加したと考えられる。地方移住に関心がある人のうち、約半数(47.6%)は移住に向けた検討・準備を行っていると回答しており、具体的な行動を開始している。

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図1.地方移住への関心と地方移住の検討状況

(2) 移住先の選定にあたっては、出身地等、自身に縁のある地域であることよりも自然環境の豊かさや住宅費、利便性を重視している

地方移住に関心がある人のうち、移住先での生活にあたって重視する要素を聞くと、「生活インフラの利便性」「住宅費の安さ」に加え、「都心からのアクセス」を重視するとの回答が4割超となっており、地方に移住したい一方で、生活レベルを維持しつつ都心への交通については一定の利便性を保っておきたいという意図が見える。

移住の候補地となる都道府県を3つまで挙げてもらったところ、一都三県(東京都(23区外)、千葉県、埼玉県、神奈川県)のほか、長野県、静岡県、北海道を挙げる回答が1割超となっており、北海道を除けば、東京都心への(静岡県、長野県は新幹線での)通勤圏となる地域が多く挙げられた。

候補地を選んだ理由としては、「自然環境の豊かさ」が最多で回答者のほぼ半数が、次いで「現在の職場へ通勤可能であること」を3割が選定理由としているほか、「住宅費の安さ」も3割弱が選定理由としている。

一方で、「自身や家族の出身地等」という理由や、「過去に旅行等で訪れたことがある」といった、自身に縁のある地域であることを選定理由とした回答は2割程度であり、「自身の趣味を楽しめる」とした割合を下回っている。

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図2.移住先の候補地域の選定理由(複数回答)

(3) 地方移住に関心がある層のうち、4割超が移住後もテレワークを活用し現在の勤務先で働き続けたい

地方移住に関心がある人に対して、移住後の就業に対する意向を聞いたところ、「主にテレワークを行いながら現在の職場での勤務を続けたい」とする回答が最多の4割超(44.4%)となり、移住後はテレワークを前提としつつ、今の勤務先で働き続けたい意向を半数近くの回答者が有しているほか、「主に通勤しながら現在の職場での勤務を続けたい」「現在の勤務先において、移住先に近い事業所に異動して勤務を続けたい」を合わせると6割超の回答者が勤務先を変えずに地方移住をしたいと考えている結果となった。

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図3.地方移住後の就業に対する意向

加えて、移住の検討にあたって事前に体験したいことについて聞いたところ、4割超が「先に移住し、就業している人への相談」に加えて「サテライトオフィス等、テレワーク勤務できる施設の確認・体験」を挙げており、移住先におけるテレワークでの就業を見越してその勤務環境の充実を確認したい意向がみえる。

一方で、移住後における中長期的なライフプランについては、「移住先の地域に永住したい」とする回答は2割強にとどまっており、「移住先の住み心地により、他の地域に転居するか判断したい」「ライフステージが変化したら、他の地域に転居するか判断したい」で5割超を占めたことから、地方移住に関心を持ちつつも、必ずしも永住を前提とせず、今後の環境変化に応じて転居を検討したいと考えている層が大半となっている。

(4) ワーケーションは広く社会に認知されつつある一方で、実体験者は全体の約7%にとどまり、実施には依然として大きな障壁が存在する

ワーケーションに関する認知・経験について、「ニュースやテレビ等で“ワーケーション“という言葉を見聞きしたことがない」という回答は全体の約14%にとどまり、ワーケーションが広く社会で認知されつつあることが示唆された。

一方で、実際にワーケーションを経験した回答者は約7%にとどまり、ワーケーションの実施には依然として大きな障壁が存在すると考えられる。

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図4.ワーケーションに関する知識・経験の有無

(5) ワーケーションに関する知識の有無によってワーケーションに対する印象が異なる

本調査では、ワーケーションは広く社会に認知されつつある一方で(前述)、不確かな知識に基づく個人の思い込みなどによって、偏った印象評価がなされていると仮定した。

そこで、本調査では「ワーケーションの知識の有無によってワーケーションに対する印象が異なる」と仮定し、“ワーケーションという言葉を見聞きしたことが無い”および“ニュースやテレビ等でワーケーションという言葉を見聞きしたことはあるが、どのようなものかはよく知らない”を「知識無し群」、それ以外を「知識有り群」として、ワーケーションに関する知識の有無に基づくワーケーション印象の差異を評価した。

その結果、複数のワーケーション印象において、知識の有無による有意差が認められた。具体的には、ワーケーションに関して他者に対して説明できる以上のレベルの知識・経験を有する人(知識有り群)は、そうでない人と比べて、ワーケーションに関してよりポジティブな印象を有しており、かつ、「ワーケーションは遊びである」等のネガティブ印象はより低いことが示された。

これらの結果はワーケーションに関する知識を消費者に正しく提供することで、ワーケーションに関する偏った印象評価を是正できる可能性を示唆している。

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図5.知識の有無によるワーケーション印象評価の差異(一例)

<グラフについて>

  • 縦軸:印象得点(1:まったく当てはまらない~6:非常によく当てはまる)
  • 青い棒グラフの値は印象得点の平均値、エラーバーは標準偏差を示す(標準偏差とは、データが平均値の周辺でどの程度のばらつきがあるかを示したもの)
  • Welchのt検定を実施 *** :p-value < 0.01, ** :p-value < 0.03, * :p-value < 0.05,

(6) ワーケーションに関する知識の有無によってワーケーション取得時の心理状態が異なる

今後、ワーケーションは有給休暇と同様に、従業員のウェルビーイングや生産性を高める人事施策として広く普及することが期待されている。

ワーケーションは業務を行うため休暇ではないが、リゾート地などで業務を行うことに対する後ろめたさや抵抗感といったネガティブ感情が従業員のワーケーション取得の障壁となることが予想される。また、このネガティブ感情の程度は、ワーケーションに関する具体的な知識を持たない人の方が大きいと仮定できる。

そこで、本調査では「ワーケーションの知識の有無によってワーケーション取得時のネガティブ感情の強さが異なる」と仮定し、“ワーケーションという言葉を見聞きしたことが無い”および“ニュースやテレビ等でワーケーションという言葉を見聞きしたことはあるが、どのようなものかはよく知らない”を「知識無し群」、それ以外を「知識有り群」として、複数のワーケーション取得場面を想定したロールプレーイング調査(※自分自身がワーケーション取得申請をする場合、自分の部下がワーケーション取得申請を行ってきた場合等の4場面を設定)を実施し、各ワーケーション取得場面における心理状態を調査した。

その結果、自分自身がワーケーション申請を行う場面(以下、各図の非管理職×Not繁忙期条件)を中心に、「おびえた」「うろたえた」「恐れた」「恥ずかしい」「イライラした」「ぴりぴりした」「苦悩した」「不平等である」「ねたましい」などのネガティブ感情が、知識有り群と比べて、知識無し群が有意に低いことが明らかになった。

一方で、「やる気がわいた」については、知識有り群が有意に高いことが示された。これらの結果は、ワーケーションに関する知識の有無が取得時の従業員の心理状態に影響を与えることを示唆している。

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図6.知識の有無によるワーケーション取得時の心理状態の差異(一例)

<グラフについて>

  • 縦軸:印象得点(1:まったく当てはまらない~6:非常によく当てはまる)
  • 値は印象得点の平均値、エラーバーは標準偏差を示す(標準偏差とは、データが平均値の周辺でどの程度のばらつきがあるかを示したもの)
  • ワーケーション取得場面:a)~d)の4場面を想定して印象を聴取した。
    • a) 非管理職×Not繁忙期:自分(非管理職)が繁忙期外にワーケーション取得申請を行った場合
    • b) 管理職×Not繁忙期:自分(管理職)が繁忙期外に部下からワーケーション取得申請を受けた場合
    • c) 非管理職×繁忙期:自分(非管理職)が繁忙期中にワーケーション取得申請を行った場合
    • d) 管理職×繁忙期:自分(管理職)が繁忙期中に部下からワーケーション取得申請を受けた場合
  • 各ワーケーション取得場面において、知識無し群と知識有り群を対象にWelchのt検定を実施 *** :p-value < 0.01, ** :p-value < 0.03, * :p-value < 0.05

【結論】

地方移住に関しては、コロナ禍を機に関心は一層高まっているものの、そのニーズ・形態は多様化しており、毎日の通勤を前提とせず、テレワーク等を活用して今の職場で働き続けながら地方に移住したいと考える層が一定数存在することが明らかとなりました。

テレワーク推進に対する見直しの動きがある中で、企業も従業員の多様なワークスタイルのニーズに対応していく重要性が増していると考えられます。

ワーケーションについて、ワーケーションの知識の有無がその印象や取得時の心理状態(主にネガティブ感情)に影響し、ワーケーションの普及の潜在的な障壁となる可能性を示唆しています。

当社では科学的知見に基づくワーケーションに関する正しい知見・知識を世間に浸透させるため、引き続きワーケーションに関する科学的な知見(エビデンス)の獲得および発信活動を推進してまいります。

調査結果の詳細は こちらから

<調査結果の利用について>

  • 本調査は、株式会社NTTデータ経営研究所とNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が共同で行っており、本調査結果の著作権は、株式会社NTTデータ経営研究所とNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が保有します。
  • 調査結果の一部を転載・引用される場合は、出所として「NTTデータ経営研究所/NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション」または「NTTデータ経営研究所/NTTコム リサーチ」と併記した上で、掲載日・掲載媒体・引用箇所などの情報につきましては広報担当までお知らせください。
  • 調査結果について、出所を明記せずに転載・引用を行うこと、データの一部または全部を改変することなどの行為はご遠慮ください。
  • 本アンケート調査の生データは提供いたしかねます。

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