logo
Insight
リサーチ

「東日本大震災発生後の企業の事業継続に係る意識調査(第5回)」3.11から8年、策定したBCPが機能した企業は1.7倍に増加 風水害を想定したBCPは増加傾向続く

2019.03.08
heading-banner2-image

株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:川島 祐治)は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:塚本 良江)が提供する「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象に、「東日本大震災発生後の企業の事業継続に係る意識調査(第5回)」を実施しました。

本調査は、2011年7月に実施した「東日本大震災を受けた企業の事業継続に係る意識調査」(以下、第1回調査)から、過去計4回にかけて実施している継続調査です。企業の事業継続に対する取り組みや意識にどのような変化が生じたか、企業はBCPの運用・管理(BCM)について現在どのような課題認識を持っているか等について調査を実施しました。また、今回の調査では、BCPを発動した結果についても着目し、2018年に発生した平成30年7月豪雨(以下、西日本豪雨)および平成30年北海道胆振東部地震(以下、北海道胆振東部地震)の2つの災害について、発動したBCPは想定通り機能したか、問題があった場合その理由は何か等について調査を行いました。

主な調査結果

BCP策定状況とその変化

BCPを策定済みと回答した企業は約4割、策定中まで含めると約6割の企業がBCPを策定している。

  • 現在のBCPの策定状況について、すべての回答者に対して尋ねたところ、「策定済み」企業は43.5%であった。「策定中」までを含めると、64.9%の状況であった。
  • 従業員規模別にみると、5,000人以上の企業では「策定済み」「策定中」と回答した割合が合わせて約9割であるのに対し、99人以下の企業では約4割であり、規模の小さい企業ほどBCPの策定率が低い状況が明らかになっている。さらに99人以下の企業では、「策定予定なし」と答えた割合が23.9%と最も高く、そもそも策定自体を諦めてしまっている企業も多いと思われる。
  • 業種別では、金融・保険業で「策定済み」が68.7%と最も高く、BCPへの取り組みが最も進んでいることがわかる。この理由としては、事業活動の停止による社会への影響が特に大きい業種であり、事業継続への取り組みが強く要求されていることが挙げられる。公共機関のBCP策定率も62.7%と高い一方で、公共機関と同様に社会インフラとして機能継続性の確保が求められる教育・医療・研究機関ではBCPの策定が進んでおらず、さらに「わからない」と回答した割合が17.3%と最も高いことから、事業継続の取り組みへの意識の低さも伺える。
  • 地域別にみると、関東が「策定済み」と「策定中」を合わせて68.9%と最も高い。最もBCP策定が進んでいないのは北海道であり、「策定済み」と「策定中」を合わせて51.2%であった。
  • 資本金別と売上高別でのBCP策定状況は、従業員規模と同様に規模に比例しており、規模の小さい企業ほどBCPの策定が遅れている状況を表している。

BCP策定は近年進んでおらず、策定をもとより諦めている企業だけでなく、BCP策定途中で挫折してしまっている企業も多く存在していることが推察される。

  • BCPの策定状況について、第1回調査から今回調査までの回答結果を比較すると、東日本大震災後に実施した第2回調査ではBCP策定済み企業が25.8%から40.4%と大きく増加したものの、近年は「策定済み」「策定中」と回答した企業の割合に大きな変化は見られない。「策定中」および「策定予定あり」の企業の中には、自社単独でのBCP策定そのものへの限界やノウハウ不足等の原因によって策定が進まず、足踏み状態になっている企業も多いと予測される(その理由については第4章で述べる)。

従業員規模別のBCP策定状況推移について、比較的小規模の事業者ではむしろBCP策定の機運が高まっている。

  • BCP策定状況の推移を従業員規模別でみると、従業員99人以下の企業で「策定済み」と回答した割合は、2017年1月時点から2018年12月にかけて7.1ポイント増加している。策定率自体は規模の大きい企業と比べて低いものの、増加率は他のセグメントと比較して最も大きいことからBCPの策定機運は高まっていることが推察される。これは資本金別、年間売上高別で見ても同様の示唆を得ることができる。

業種別のBCP策定状況推移について、3.11後のBCP策定機運の高まりが近年では停滞しており、製造業で特にその傾向が強い。一方、商業・流通・飲食、公共機関のBCP策定率は継続的に上昇しており、その背景としてBCPの有効性に対する理解が進んだことや政府主導によるBCP策定推進が要因として挙げられる。

  • 業種別でみると製造業において、東日本大震災から日の浅い2013年1月時点では「策定済み」「策定中」を合わせると98.1%とほぼすべての企業がBCP策定に取り組んでいたが、2013年1月時点から2018年12月にかけて「策定済み」の割合はほぼ横ばいで推移しており、製造業のBCP策定は全く進んでいない。その原因として、自社設備の復旧のみならず原材料の供給や配送網、顧客の復旧状況に応じた対処等、サプライチェーン全体への対応が求められるため実効性のあるBCP策定が難しいという特有の事情が挙げられる。実際、製造業で「策定中」と回答した割合は、2013年1月時点の55.9%年から近年では半分以下に減っており、BCP策定を途中で諦めてしまっていると推察される。
  • 一方で、商業・流通・飲食、公共機関のBCP策定率は継続的に上昇している。この2つのセグメントは、かつては製造業よりもBCP策定率も低く、事業継続への取り組みが遅れていたが、製造業(策定済み43.3%)と同程度(商業・流通・飲食で策定済み38.1%)あるいは製造業を超える水準(公共機関で策定済み62.7%)となっている。

地域別のBCP策定状況の推移について、東日本と西日本で傾向に差が見られる。東日本では近年BCPの策定が進んでいないが、西日本ではBCP策定率が継続的に向上している。発生が想定されている南海トラフ巨大地震への対応や、近年の災害の発生傾向がその背景にあると推察できる。

  • 地域別でみると、九州・沖縄地方では、東日本大震災前の時点で「策定済み」7.0%と最も低かったが、2018年12月時点で33.9%と、約5倍に増加している。特に2016年4月に発生した「平成28年熊本地震」を受けて、事業継続への取り組みが進んだ結果と考えられる。一方で、北海道では、2017年1月時点では「策定済み」38.1%であったのに対し、2018年12月時点では「策定済み」26.8%と低下している。これは2018年9月に発生した北海道胆振東部地震を受けて、策定していたBCPの見直しが図られている最中であったためと推察される。

BCP策定対象とその変化

BCPで想定するリスクで最も多いのは「地震」。自社設備に関するリスクまで踏み込んで想定している企業は4割程度。

  • BCPの策定状況を「策定済み」「策定中」「策定予定あり」とした回答者(n=821)に対して、具体的にどのようなリスクを想定しているのかを尋ねた(複数回答)。結果、「地震(主として直下型地震)」(74.3%)が最も多く、次いで「地震(東海・東南海・南海連動地震等の超広域地震)」(62.6%)と、地震を想定してBCPを策定している(策定を考えている)企業が多いことがわかる。
  • 火災や停電、システムダウンといった事象による、自社設備の停止リスクを想定に入れてBCPを策定している(策定を考えている)企業は4割程度であり、災害等を起因としないような自社単独でのトラブルを想定したBCPを策定していない企業も多いと推察される。

近年は風水害等を想定したBCP策定が進んでいる傾向が見られる。これは昨今、台風・暴風雨による災害が毎年ほぼ発生しているという背景を踏まえたものと推察できる。一方で、近年発生していないパンデミックや、災害以外の要因による自社設備に関するリスク想定はむしろ停滞している。

  • BCPで想定するリスクの推移を第1回調査から比較すると、「地震以外の自然災害(風水害等)」を想定している企業が2018年12月時点で54.0%と、前回調査から約5ポイント増加している。近年の台風・暴風雨による災害や、特に2018年7月に発生した西日本豪雨の被害を受けて、河川の氾濫や土砂災害を想定に入れた対策が進んでいることが想定される。
  • 「鳥・新型インフルエンザ等によるパンデミック」への想定は、第1回調査の2011年7月時点の39.7%から2018年12月時点で26.4%と減少しており、新型インフルエンザやその他の病原体によるパンデミックを想定した対策をとっていない企業が増えている。また、災害以外の要因による自社設備に関するリスクを想定したBCPを策定している企業も近年減少傾向にある。

企業が策定しているBCPの想定拠点は本社のみに偏っており、自社の営業拠点・物流拠点を想定に入れていない企業が大半であり、取引先まで想定できている企業はほとんどない。

  • 現在の自社のBCP(策定済み・策定中・策定予定あり)において、対象としている拠点について尋ねたところ(複数回答)、「本社」が90.9%と最も多く、次いで「支社・事業所(工場、研究所含む)」が48.4%となった。一方で、「取引先」を想定に入れている企業はわずか3.5%であった。

支社・事業所や営業所といった、本社以外の拠点をBCPにおいて想定できている企業はむしろ減少傾向にある。

  • 第1回からの調査によって抽出した、BCP策定状況と比較すると、「支社・事業所(工場・研究所含む)」や「営業所・営業拠点」を想定している企業が減少している。

企業の事業継続に向けた取り組み(対策)とその変化

初動段階での対策は多くの企業で策定されているものの、復旧方針や復旧手順といった応急・復旧段階での対策が策定されている割合はやや低く、さらに外部と連携した対策に関しては2割程度の企業しか策定できていない。

  • 現在の自社の事業継続に向けた取り組み(対策)に関して、取り組み(対策)内容ごとに策定有無を尋ねたところ(複数回答)、BCP策定状況によって程度の違いはあるものの、共通の傾向が見て取れる。(BCPが策定されていない企業でも、防災対策の一環として、部分的な取り組みが行われているケースも多いため、この設問はBCPの策定状況有無を問わず全回答者に尋ねている)
  • 「災害・事故等発生時の体制設置」や「被災・被害状況の確認・連絡手順の策定」といった、初期の段階での対策は高い割合で策定されている。また、BCPを「策定済み」の企業の場合は、復旧段階においても「優先して復旧すべき業務・事業の選定」は対策が進んでいる一方で、早期に業務を復旧させるための方針策定や、リソースの代替案策定などについては低い策定状況にある。さらに、取引先等の外部との連携が必要な対策は、BCPを「策定済み」と回答した企業でも2割程度しか対策を立てられていない。
  • 業種別で見ても同様に、いずれの業種でも初期段階での対策は比較的進んでいるのに対し、応急・復旧段階での対策は遅れている傾向にある。ただし、「BCP策定済み」の割合が高く(図表1-1-2参照)、事業継続性に対する要求が高い金融・保険業では、いずれの取り組み(対策)も比較的高い策定状況にあり、特に情報システムの復旧・代替については他業種より対策が進んでいる。

従業員規模の小さい企業では特に初動段階での対策の策定率が低く、緊急時の初動対応が十分に検討されていないと推察できる。また、中堅企業レベルでもBCPの根幹となる代替策の検討に大きな課題があることが示唆された。

  • 取り組み(対策)内容ごとの策定有無について、従業員規模別に見ると、従業員規模が小さい企業ほど「初動段階での対策」の策定が低い傾向にある。従業員規模が99人以下の企業では、5,000人以上の企業と比較して約20ポイント低い。また、従業員規模100~1,000人未満のセグメントと、1,000人以上のセグメントでも初動対応の策定状況に差が見られる。
  • また、応急・復旧段階の対策のうちの「自社リソース復旧」は、主に代替策の策定有無を問う設問であったが、この設問についても、企業の規模で違いが見られた。従業員規模5,000人以上の企業と、それ未満の企業とで策定率に大きな変化があり、いわゆる中堅企業でも代替策の検討・策定が進んでいないことがわかった。

取り組み(対策)別の策定状況には近年変化が見られず、特に復旧段階の対策や外部と連携した取り組みの策定が進んでいない。

  • BCP策定済み・BCP策定中の回答者に絞って、取り組み(対策)別策定有無の推移を比較すると、今回調査(2018年12月時点)では、前回調査(2017年1月時点)よりも全体的にやや低い策定状況となり、いずれの取り組みも進んでいないことがわかる。依然として、復旧段階や外部連携に関する対策の策定状況は低く、これらの取り組みに大きな壁があることが予想される。
  • また、今回調査では「教育・訓練」に関する取り組みを策定している企業が、調査開始以来最低の割合となっており、策定したBCPの運用にも課題があると推察される。

BCPに対する課題認識とその変化

半数以上の企業が、策定しているBCPに対して課題があると答えている。

  • BCPを「策定済み」「策定中」「策定予定あり」とした回答者には現在の自社のBCPに対する課題認識を、「策定の予定がない」とした回答者には策定の目途が立たない理由があるか尋ねたところ、半数以上(53.1%)の企業が何かしらの課題があると回答している。
  • 従業員規模別では、99人以下の企業では「課題がある」と回答した企業が45.0%であったのに対し、100~499人や500~999人の企業では「課題がある」と回答した企業が6割程度あり、中規模程度の企業ほどBCP策定に課題を抱えている現状が明らかとなった。
  • 業種別では、「課題がある」と回答した企業について金融・保険業が60.0%と最も高い。金融・保険業は事業継続への策定自体は進んでいるものの(図表1-1-2参照)、その内容については課題認識を持っていることがわかる。
  • 地域別では、九州・沖縄で「課題がある」が67.9%と最も高く、他の地域と20ポイント近い差異が出ている。理由として、2016年4月に発生した「平成28年熊本地震」を受けて、事業継続への取り組みが進んでいる最中であり、課題認識が強いことが考えられる。

BCPに対して課題認識を持つ企業の割合に変化はなく、依然として課題解決の見込みが立っていないと想定される。

  • BCPに対する課題認識の推移(第2回調査から調査開始)を比較すると、BCPに対し課題認識を持っている企業の割合は全くと言っていいほど変化していない。

自社単独でのBCP自体に限界があることが多くの企業で課題として認識されている。

  • BCPを「策定済み」「策定中」「策定予定あり」とした回答者のうち、「課題がある」とした回答者(n=502)に対してその理由について尋ねたところ(複数回答)、「自社単独でのBCP策定自体に限界」を感じている企業が多く、具体的には「外部からの調達・供給ができなければ事業継続できない」が47.6%と最も高い。

BCP策定に必要なノウハウやリソースに対する課題は解決されつつあるが、依然として自社単独でのBCPに対する課題は解決されておらず、外部連携を実現するための解決策が求められている。

  • 第2回調査以降のBCPに課題がある理由の推移を比較したが、大きな変化は見られなかった。これは、調査を開始した2013年1月時点から、企業がBCPに対して持っている課題の内容に変化がないことを示している。多くの企業で自社単独でのBCP自体に対する限界を常に感じており、外部連携を実現するための解決策が求められている。
  • 一方、「BCPを策定すること自体に対する課題」のみ漸減しており、BCP策定に必要なノウハウや人員・予算は充足しつつあることが推察される。

次代のBCPに求められる解決策

BCP策定・運営に係る外部連携による解決策案の手法として期待されているのは「危機発生時における被災状況共有」であった。連携対象としては「密接な取引関係のある企業(調達先や納入先等)」を挙げる企業が多い。

  • BCPに対して「課題がある」とした回答者(n=502)に対し、外部連携の実現に資する対応策として15の施策案(5つの連携施策×3つの連携対象)を提示し、それぞれについて評価を尋ねた。すべての解決策案が「是非とも取り組みたい」と「条件が合えば取り組みたい」を合わせると6割以上であり、これらの解決策に対する期待が高いことがわかる。
  • 特に期待が高いのは密接な取引関係のある企業との「危機発生時における情報(自社内の被災状況や周辺地域の被災状況など)の共有」であり、「是非とも取り組みたい」と「条件が合えば取り組みたい」を合わせると74.9%と最も割合が大きい。
  • また、連携対象のみに着目すると「密接な取引関係のある企業(調達先や納入先等)」に対する期待が最も高く、いずれの連携施策においても「是非とも取り組みたい」と「条件が合えば取り組みたい」を合わせると、7割前後であった。
  • この設問を開始した第3回調査から、外部連携の実現に資する対応策に対する評価のうち「是非とも取り組みたい」と「条件が合えば取り組みたい」の回答に絞って推移を比較すると、今回の調査ではすべての解決策への企業からの期待が、以前より高まっていることがわかる。

BCPの運用・管理の実施状況と課題

策定したBCPの社内への周知は実施している企業が多いものの、人事異動・組織変更などを踏まえた更新・見直しは十分になされていない。また、戦略的なBCPの活用も進んでいない状況。

  • BCP策定済みの回答者(n=443)に対し、BCPの運用・管理について取り組みごとの実施状況を尋ねたところ、社内報や社内ポータル等を通じた説明・周知は、「実施している」と「実施していないが、実施する予定がある」を合わせて84.8%と最も高く、多くの企業で実施されていることがわかる。一方で、BCPの人事異動・組織変更などを踏まえた更新について、「実施している」と回答した企業は42.9%にとどまっており、策定済みのBCPの継続的なメンテナンスが十分になされていない状況にある。
  • BCPの戦略的活用は「実施している」が35.0%と最も割合が小さく、取引先へのアピールやリスク管理能力の向上といったBCP活用はあまり進んでいないと推察される。
  • また、BCPの運用・管理についての取り組みごとの実施状況について、この設問を開始した前回調査からの推移をみると、いずれの取り組みについても実施している企業の割合に大きな変化は見られなかった。

BCPの運用・管理が実施されていない理由は主に意識不足と要員不足の2つであった。

  • BCPの運用・管理についての取り組みごとの実施状況を「実施していないし、実施する予定もない」と回答した項目について実施していない理由を尋ねたところ、「BCPに対する社内要員の取り組み意識が希薄」が全体的に挙げられており、次いで「BCP維持・管理に必要な要員が割けない」を理由に挙げる回答者が多かった。

策定したBCPの実効性とBCPが機能しない要因

2018年に発生した西日本豪雨および北海道胆振東部地震において、被害が大きかった地域に拠点がある企業のうちBCPが発動した企業は2~3割程度。

  • BCPを「策定済み」「策定中」「策定予定あり」とした回答者の中から、2018年に発生した西日本豪雨および北海道胆振東部地震による被害を受けた地域に自社拠点または取引先がある企業に対して、BCPの発動有無を尋ねたところ、西日本豪雨で21.7%、北海道胆振東部地震で28.5%の企業でBCPが発動していた。

昨年の災害に対して発動したBCPが期待通りに機能したと回答した企業は6割程度であり、これは3.11直後と比較して1.7倍に増加している。

  • 西日本豪雨および北海道胆振東部地震でBCPが「発動した」とした回答者に対して、発動したBCPが機能したかを尋ねたところ、それぞれ約6割の回答者が「BCPは期待通り機能しており、特段問題は無かった」としている。一方で、「BCPは概ね機能したが、問題となる部分もあった」とした回答者が約4割いた。
  • 第1回調査でも、東日本大震災で自社のBCPが機能したかを尋ねており、その結果と今回調査結果を比較したところ、「BCPは期待通り機能しており、特段問題は無かった」が34.2%から1.7倍に増加している。東日本大震災と、西日本豪雨および北海道胆振東部地震では、被害内容や規模、影響範囲が異なるため単純に比較することはできないものの、東日本大震災で得られた教訓が生かされ、事業継続への取り組みが進んだ結果が表れていると考えられる。

機能しなかったBCPの内容について、西日本豪雨では、災害発生時の体制や訓練・教育に問題があったとする企業が多かった。北海道胆振東部地震では、対策本部立上げ判断基準の設定や社員の安否確認方法、優先して復旧すべき業務・事業の選定に問題があったとする企業が多かった。

  • 「BCPは概ね機能したが、問題となる部分もあった」または「BCPはまったく機能しなかった」とした回答者に対して、具体的に何が機能しなかったかを尋ねたところ、西日本豪雨と北海道胆振東部地震でその内容に差が見られた。西日本豪雨では「災害・事故等発生時の体制設置」や「災害・事故等が発生したことを想定した、訓練・教育の実施」について問題があったとする企業が多かった。一方、北海道胆振東部地震では、「対策本部立上げ判断基準の設定」「社員の安否確認方法」「優先して復旧すべき業務・事業の選定」について問題があったとする企業が多かった。その理由として、それぞれの被害内容の違いが影響していると推察される。

BCPが想定通り機能しなかった原因の多くは「予期せぬ対応の発生」であった。BCPを策定済みの企業でも、想定しうる事態が抜け漏れていないか、地震だけでなく風水害やパンデミック等のリスクにも対応できるBCPになっているかを確認する必要がある。

  • 想定通り機能しなかったBCPの内容について、その原因を尋ねたところ、全体的に「手順や対策を定めていたが、予期せぬ作業・対応が発生した」と回答した企業が多かった。BCPが策定されていても、事業継続のための対策が不十分であった企業が多かったと推察される。
  • 西日本豪雨の場合、「そもそも手順や対策を定めていなかった」と回答した企業が散見される。北海道胆振東部地震の場合はあまり見られない回答であり、西日本豪雨の影響を受けた企業の多くは、広域な河川の氾濫や土砂崩れを想定した対策をとっていなかったと考えられる。
調査概要
報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ経営研究所

コーポレート統括本部 業務基盤部

広報担当

E-mail:webmaster@nttdata-strategy.com

サービスに関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ経営研究所

企業戦略事業本部

事業戦略コンサルティングユニット

シニアマネージャー 白橋

Tel:03-5213-4130

TOPInsightリサーチ「東日本大震災発生後の企業の事業継続に係る意識調査(第5回)」3.11から8年、策定したBCPが機能した企業は1.7倍に増加 風水害を想定したBCPは増加傾向続く