NTT DATA Global IT Innovator
NTTデータ経営研究所
English  お問い合わせ  サイトマップ

戻る サイト内検索
戻る

DXレポートのその後
~DX推進指標活用による自己診断と今後求められる観点~

情報戦略事業本部
デジタルイノベーションコンサルティングユニット
コンサルタント 渡辺 郁弥

はじめに

 2018年9月7日に経済産業省より『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』が公表※1されて以来、あらゆる産業において、デジタル技術を活用して新たなビジネス・モデルを生み出すためのデジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)の取組が活発となった。世界的潮流であるビジネスのデジタル化により、競争激化・破壊的な市場の変化が起こり、国内企業ないしは我が国全体として競争力強化が急務となった今般、政府は2018年12月12日に『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)』、2019年7月31日に『「DX 推進指標」とそのガイダンス』を公表した。

 本稿では、DXレポート公表後の政府の動きを捉えると共に、国内企業に求められること、特に『「DX 推進指標」とそのガイダンス』を活用した自己診断について概説する。

 なお、本稿を補完する記事として筆者が執筆した『情報未来』No.60(2019年1月号)「DXレポートから見た国内企業におけるDX推進の道筋」も合わせてご一読いただきたい。

1 DXレポートの筆者理解

 DXレポートに記載されているDX推進の目的とは、「新たなデジタル技術の活用で新たな製品、サービス、ビジネス・モデル等を創出し、我が国ないしは国内企業全体を活性化すること」であると解釈している。

 DXの本質的な効果を得るためには、デジタル化の足かせとなっている既存システム対策(レガシーシステム対策)が必須となるが※2、個社によって既存システムに対する重要性や扱い等の事情は異なる。そのため、既存システムを刷新(または縮小・廃止)する領域と、維持しながら活用する領域等の適正を見定め、対策の検討を行う必要がある。

 よって、既存システム対策とデジタル対策を個別に考えるのではなく、双方を連動させた戦略(DX推進)を立て、実現施策を打つことがユーザー・ベンダー企業双方に求められている。(図1)

図1 DXレポートが描く将来像

図1 DXレポートが描く将来像 出所:NTTデータ経営研究所で作成

2 DXレポートから見た政府の動き

 DXレポートが描く将来像を目指すために、政府は6つの施策を提言しており、順次各施策を展開・検討しているところである。(図2)

図2 DXレポートから見た政府の動き

図2 DXレポートから見た政府の動き 出所: NTTデータ経営研究所で作成
 

 施策の第1弾として、2018年12月12日に経済産業省より『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)』が公表された※3。DXレポートにおける提言を基に、DXの実現やその基盤となるITシステムの構築を行っていく上で、経営者が押さえる事項を明確にすること、取締役会や株主がDXの取組をチェックする上で活用できるものとすることを目的としている。また、経済産業省が公表している「攻めのIT経営銘柄」においても、DX推進ガイドラインの観点を踏まえて選定を行う動きとなっている。国内企業がDXを実行していくにあたり、DX推進ガイドラインが一助となることが期待される。

 

 直近では、施策の第2弾として2019年7月31日に経済産業省より『「DX 推進指標」とそのガイダンス』が公表された※4。DX推進指標に従って、経営者自らがDX推進への取組状況やITシステムの現状と問題点を把握し、取組の高度化を促すことを目的としている。また、経営者が答えられない指標がある場合は、CIO(もしくはCDO)やIT部門長、各事業部門長等の社内におけるステークホルダーとコミュニケーションを図り、解決に向かうためのマインドセット・企業文化の醸成も必要となる。経営者が技術を知らないままデジタル化を進め、自社の利益を損ねる事態も起きている通り※5、経営者自身がIT・デジタルの重要性を認識し、ケイパビリティを有して組織をリードすることが求められる時代になったと筆者は考える。

3 DX推進指標活用による自己診断と今後求められる観点

(1)外部評価の必要性

 DX推進指標は、経営者が自社におけるITシステムの現状を理解・把握するための指標の一つであるが、それはあくまでも中立性が担保されていない”自己診断”であることに留意する必要がある。

 企業は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーに対して価値を提供することを目標とし活動しており、ステークホルダーはその提供価値を企業活動のアウトプットとして評価する。DXも企業活動の一つである。そうであるならば、評価を自己診断で終わらせるのではなく、診断の結果についてもステークホルダーの評価を受けるべきである。

 そのために、診断結果をアウトプットベースで示すこと、かつ、出来る限り定量的に示すことがポイントとなる。例えば、デジタルサービス全体の利益やDX推進による新規顧客獲得割合等、個社としての数値目標を経営者自身が設定し、それを達成できているかを示していく。その上で、診断結果について外部評価者の中立的な評価を受けることで客観性を担保することが望ましい。

(2)DXビジョンの外部への発信

 自己診断・外部評価を経た上で、その評価結果を踏まえたビジョンを策定し外部に発信していくことも必要であると考える。例えば、経営者が2025年の崖を認識して、その克服に向けて自らDXに取り組むこと(単なる製品紹介ではなく、DXを用いた業務プロセス等の題目)をビジョンの中に盛り込んで外部に説明・発信すること等が挙げられる。

 何故ビジネスを変革するのか(Why)、新たなデジタル技術を活用して何がしたいのか(What)といったデジタル化に対する具体的なビジョンを描くこと、そのビジョン実現と定量的診断指標がどのようにリンクしているのかを示すことが重要である。その上で、外部に向けて経営者自身がステークホルダーに対して説明できることが必須であると筆者は想定する。

おわりに

 DX推進指標を活用した”企業の自己診断”が始まろうとしている今般、DXを成功に導くには経営者がITケイパビリティを有し、ステークホルダーに対して自らの言葉でDXを説明するリーダーシップの下、成功事例を数多く出していくことが不可欠である。

 DXレポートが"絵に描いた餅"にならないためにも、政府が掲げる各施策を今後も支援し、我が国ないしは国内企業に対してDXの取組を加速させる立場として従事したいと考えている。

――――――――――――