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2050年の未来の社会 新しいカタチを考える

対談 上西 良彦 × 柳 圭一郎 NTTデータ経営研究所 創立30周年記念「懸賞エッセイコンテスト」最優秀賞受賞者インタビュー
No.69 (2022年3月号)
立命館大学 理工学部 機械工学科1年 上西 良彦
NTTデータ経営研究所 代表取締役社長 柳 圭一郎

NTTデータ経営研究所は2021年に創立30周年を迎え、それを記念した懸賞エッセイコンテストを行い、最優秀賞には立命館大学1年生 上西良彦さんの「夜明け」が選ばれました。エッセイのテーマである「2050年の未来の社会/新しいカタチ」について、当社の柳社長と上西さんが意見を交換しました。

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Profile
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YANAGI KEIICHIRO
柳 圭一郎
NTTデータ経営研究所 代表取締役社長

1960年 福岡県生まれ

1984年 東京大学法学部卒業、同年日本電信電話公社入社。

2006年10月 株式会社NTTデータ 金融ビジネス事業本部 資金証券ビジネスユニット長。

2009年 NTTデータ・ジェトロニクス株式会社 代表取締役社長就任。

2013年 株式会社NTTデータ 執行役員 第二金融事業本部長。

2016年 同取締役常務執行役員 総務部長 兼 人事部長。

2018年 同代表取締役副社長執行役員。

2020年6月 同顧問およびNTTデータ経営研究所 代表取締役社長に就任。

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UENISHI YOSHIHIKO
上西 良彦
立命館大学 理工学部 機械工学科1年

若者を対象に懸賞エッセイコンテストを開催

最優秀賞受賞おめでとうございます。

上西

ありがとうございます。

当社が設立されたのは1991年ですが、まだスマートフォン(スマホ)もSNS(交流サイト)も誕生していませんでした。ドローンやテレビ会議がここまで普及するとは誰も想像していなかったでしょう。

この先の30年についても、大きな変化が起こると思います。私たちだけで想像できるとは思えません。懸賞エッセイコンテストを開催した理由は、これから社会で活躍する若い人たちが、30年後、すなわち2050年の未来の社会をどのようにイメージしているのか知りたいという思いからでした。応募資格を16歳~30歳までとしたのも、その年齢の方なら、30年後にまだ現役で活躍していると考えたからです。上西さんも30年後は50歳でしょうか。まさに会社の中枢で働かれている世代ですね。

上西

はい。ちなみに今回、コンテストや公募などの情報が掲載されているサイトで、NTTデータ経営研究所の懸賞エッセイコンテストの告知を知りました。「2050年の未来の社会/新しいカタチ」というエッセイのテーマが面白そうだと感じたのと、文字数が3000字程度と手ごろだったので、夏休みを利用して応募してみようと思いました。1万字だったら長いとやめていたかもしれません。このような公募に応募するのは初めてだったので、まさか受賞できるとは思っていなくて。受賞の通知メールをもらったときには「詐欺メールではないか」と疑ったほどです(笑)。

論文ではなくエッセイとしたのは、まさにそこが狙いです。論文となると、どうしても、「実際にそれが実現できるかどうか」といった観点が必要で、学術的になってしまいます。それを若い人に求めるのは酷だろうと思って、論文ではなくエッセイにしたのです。上西さんの作品を拝見した第一印象は、文章が上手だということ。日ごろから何か創作活動をしているのですか。

上西

実はまったくしていません。読書も、小説より新書などのノンフィクションのほうが好きな位です。ただ、子どものころから、漫画はよく読んでいました。特に、手塚治虫さんの作品は好きです。僕は兵庫県川西市の出身なのですが、手塚さんは隣の宝塚市で5才から24歳まで約20年間を過ごし、市内には手塚治虫記念館もあります。僕もよく行きました。そのため、今回の作品も、手塚作品にインスピレーションを受けたのだと思います。

なるほど、上西さんの作品は読んでいて未来の情景が目に浮かんできましたが、手塚さんの影響があるのかもしれませんね。上西さんの作品は、さまざまな題材を多様に表現しているのもいいですね。いろいろなことが、こんなふうに変わっていると表現しているのが楽しいなと思いました。

上西

ありがとうございます。僕自身も読んで面白い作品にしたいと思って、実現の可能性の有無よりも、夢のある話、こうあってほしいという願望がかなうような話にしたいと考えて書きました。そのため、想像上のフィクションの話であっても、リアルに感じられるように細かく描写をしました。そこは僕も力を入れたところで、評価していただいてうれしく思います。

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技術の進歩には、夢もある反面、リスクもある

私も作品の審査に参加しましたが、読ませていただいて印象深かったのは、学生の皆さんからの応募に「記憶」をテーマにした作品が多かったことです。試験に苦労しているせいかもしれませんが、記憶を脳の外に出して保管したり、それを自由に取り出して使えるようにしたりといった描写をいくつか見かけました。学生時代には、確かに暗記しなければいけないことも多いです。「こんなことをやる必要はあるのか?」という思いがどこかにあるのだと思います。そのため、記憶をどこかに保存しておいて、必要なときに取り出せばいいじゃないかという感覚の人が多かったですね。

上西

僕は理工学部の機械工学科ですが、大学入試センター試験(現・大学入学共通テスト)で地理・歴史が必須科目でした。グローバルな舞台でビジネスをしたり、社会情勢を知ったりするためには世界史や日本史、地理などの知識は、ないよりはあったほうがいいと思います。ただ、古典の単語については、果たして本当に覚えないといけないのか、社会に出てから役に立つのだろうかという疑問はありました。

「歴史は繰り返す」とも言いますが、実社会では、歴史などの教養が、ビジネスにヒントを与えてくれることがよくあります。ただし、社会人になると、すべてが頭の中になければならないというわけではないですよね。検索すればすむこともたくさんあります。そこでの問題は、どのように検索すればいいのかということです。正確でなくても頭の片隅に学習したことの記憶が残っていれば、それをキーにしてなんらかの方法で検索して情報を取り出すことができるのですけれど、まったくないと難しいですよね。

技術論から言えば、人間のさまざまな臓器の中で、もっとも再生医療が難しいと言われているのが脳なのです。脳と同じものを作るだけなら、いろいろなiPS細部などを使ってやればできるようになるかもしれませんが、脳の中に入っている記憶を移植することは、非常に難しいですね。恐らく、将来的にはさまざまな臓器が再生できるようになるでしょう。脳以外の臓器は、新品になっても困りません。むしろ、新品のほうが、性能がよくなります。ですから、脳の中の情報を取り出したり、戻したりすることが本当にできるようになれば、それが人類の最後の究極の姿だと思います。極端なことを言えば、永遠に生き続けることだってできるかもしれませんね。

上西

欧州で、脳の記憶回路をコンピュータに置き換える実験が行われたと聞いたことがあります。脳細胞は電気信号を発して情報をやりとりしています。コンピュータも0と1の世界ですから、原理としては同じです。今どこまで研究が進んでいるかはわからないのですが…。

実は当社にも、脳科学・ニューロテクノロジー分野のコンサルティングに特化したチームがあり、すでに10年以上の実績があります。どこまでできるのかといった議論は、私たちもよく行っています。次第に脳のこともわかってきており、今の技術レベルでは、脳の状態を観察すれば、日本語で換算すると1万語ぐらいなら、「この人はこんなことを考えている」というのがわかるレベルには達しているそうです。

上西

それはすごいですね。ひと昔前なら魔法みたいな世界です。技術はそんなに進んでいるのですね。

ただし、怖い面もあります。脳の状態を観察するということは、言い換えれば、他人の頭の中を覗けるということです。今、この人が気持ちいいと感じているのか、痛いと感じているのか。無意識のことまでわかります。おいしくないものを食べておいしいとお世辞を言っても、嘘だということが全部わかってしまうのです。

上西

僕が心配しているのはそこです。例えば専制的な国家が、国民を監視するためにそのような技術を使うようになってしまうのは好ましくありません。

技術が進歩することによって、いいこともたくさんありますが、私たちのように技術を扱うものとしては、それをどのように社会に適応していくかということについて慎重に考えなければなりません。ただし、逆に、これは危ないから止めようと言っていると、技術は進歩しません。中国のようにそういったことを気にしないでやる国がどんどん先に行ってしまう可能性もあるので、私たちもそれに負けないように、リスクに配慮しながら、いろいろなことを進めていかざるを得ないとは思います。

上西

人間の欲望は尽きないですから、もっと速いもの、もっと便利なものと、技術はどんどん進化していくと思うので、技術が暴走しないようにするためには、アクセルだけでなくブレーキも必要だと思います。

AI(人工知能)の使い方なども、きちんと意識しておかないと、間違った方向に行ってしまう恐れがありますよね。例えば、企業が新卒の学生を採用する際、とある年に「親の年収の高い学生のほうが優秀だ」という相関関係がたまたま分析結果として出たとします。それをもって「わが社は親の年収が高い人だけ採用します」というのは違和感があります。これは極端な例ですが、AIを使えばそのような分析結果も出てしまうのです。使い方を誤ると、非常に不平等な世界になっていきます。日本人はそのような統計などの数字の感覚が鈍い人が多くて、むしろ「AIがそう言うならばOK」と社内の説得材料に使われることがあります。しかし、そのような風潮になるのは怖いことです。

上西

コンピュータだからミスはないという先入観を持っていると、そういうことになるのでしょうね。

コンピュータも所詮は人間が作ったものですから、ミスはありえるという前提でいろいろなことに取り組んだほうがいいと思います。

さまざまな社会課題を解決するためにも技術が必要

ちなみに今回、上西さんが書かれたエッセイの中で、この技術はぜひ実現してほしいと考えたのはどれですか。もちろん、実現可能性が高いものとまだ難しいものとがあるでしょうが。

上西

冒頭に書いた、指輪型で心拍数や消費カロリーが計測できる機器などは、近い機能のものがすでに開発・販売されていますね。

私も今、スマートウォッチを使っています。心拍数のほか、血中酸素飽和濃度、睡眠の深さなども測ることができるので、日常生活で活用しています。ストレス状態までわかります。使ってみると、自分の健康管理に気を遣うようになりますね。深い睡眠が意外と確保できないということもわかりました。お酒を飲むと心拍数が上がるということもわかり、注意するようになりました。

上西

僕が書いたものでは、2050年以前に実現しそうな技術もありますし、2050年でも難しそうな技術もあります。例えば、IoB(Internet of Bodies/ヒトのインターネット)分野では、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)を体験できるウエアラブル機器はすでに開発されています。さらに、デバイスを体内に埋め込む機器も実現しています。脳に直接接続するIoB機器も研究が進んでいます。エッセイでは、脳内に直接接続して、念じるだけで情報のやりとりができる機器を登場させてみました。2050年でも実現が難しそうなのが、量子テレポーテーションです。ECサイトで注文すると、瞬時に商品が届くといった、まさにSFのような世界ですが、実現までにはまだ時間がかかりそうです。個人的に、あると楽しいと思うのは、調理をしてくれるロボットシェフですね。一人一人の健康や栄養バランスを考えながら、最適なおいしい料理を作ってくれるというものです。日本ではまだ、女性の家事負担が多いですが、それを軽減するものにもなると思います。

私が上西さんのエッセイの中で実現してほしいと思ったのは、まず自動運転ですね。私は車の運転が好きなのですが、高齢になればいつかは運転免許証を返納しなければならなくなります。東京に住んでいると車がなくてもそんなに困りませんが、地方に行くと移動手段がなくなってしまいます。上西さんのエッセイに描かれていたような、自動運転車やドローンタクシーなどが気軽に利用できる仕組みがあるといいですね。もう一つ実現してほしいのは、やはりエネルギー問題の解決につながる技術です。カーボンニュートラルは喫緊の問題ですので、上西さんが示した核融合発電が可能かどうかはさておき、何らかの取り組みが不可欠です。政府は2030年までに、温室効果ガスを13年比で46%削減を目指し50%削減の高みに向け努力する方針を示しています。2030年なんて、すぐそこですよね。当社もエネルギー問題についてはかなり力を入れて、いろいろな取り組みを行っていますが、本当に何とかしなければなりません。例えば日本企業がたくさんCO2を出しながら製品を作っていると言われれば、製品そのものが世界的に売れなくなってしまうことになりかねません。ただ、日本の消費者はそこまで考えてエネルギーを使ったり製品を買ったりしていませんので、消費者の意識も変えていく必要があります。

上西

よく日本の食料自給率の問題が議論されますが、同様に、エネルギーについても自給率を高める必要があると思います。EV(電気自動車)を普及させるためには電力が必要だということにも視点を向けるべきだと思います。

欧州で地政学的なリスクも高まっていますが、これにはエネルギー問題がかなり関係していると見られています。今や、エネルギーが国家の安全保障に密接に結びついていますので、課題の解決のためにも技術が必要になるでしょう。

メタバースはビジネスチャンスになり得るか

上西

先ほど柳社長から、人間の臓器を新しいものに再生し、さらに脳そのものも再生できる時代が来るという話がありました。そうすると人間の定義とは何なのかということになると思います。肉体を持つことでもなければ脳を持つことでもない。魂や意思だけになってしまうかもしれません。僕は、それはちょっと違うのではないかと思っています。現実世界で友人と会っておいしいものを食べることも大切だと思いますし、味覚や触覚などがVRやARで伝わるのだろうか?という疑問もあります。

こういったことは徐々に近づいていくと思います。例えば、おいしそうなにおいがすると感じるのは脳のどの部分なのか、風が心地いいと感じるのは、皮膚の神経をどう刺激したからなのか。これらを分析し、再現することによって、バーチャルであっても同じ感覚を得られるようになるかもしれません。もちろん現実と全く同じになるとは思いませんが、視覚や聴覚だけではなく、さまざまな感覚について研究が進んでいます。今後VRの技術が進んでいくことは確かでしょう。

上西

最近、メタバース(仮想空間)が注目されています。ビジネスそのものもメタバースの中で行われるようになるとも言われます。ただ、僕自身は機械工学の専攻ということもあって、どうしても現物のモノを作りたいという思いがあります。バーチャルなものは実体がないように感じるからです。その一方で、大学の授業もコロナ禍のため、テレビ会議システムで行われるようになっていて、オンラインが当たり前になっています。リアルなキャンパスに行く必要性も少なくなっています。

当社でもでもコロナ以降、コンサルタントの約7割が在宅勤務になり、それが当たり前になっています。新しい技術や様式はあっという間にスタンダードになります。私が就職したころはスマホもなく、インターネットもありませんでした。しかし今では、これらなしにビジネスや生活はできません。メタバースについても、何かのきっかけで一気に利用が広がる可能性がありますね。ただし、現状はまだ世代間によって受け止め方が異なるでしょう。先ほど上西さんから、目の前にある現物でないと実感がわかないという話もありましたが、私たちの世代も、バーチャルな世界で洋服を買ったり絵を買ったりするために多額のお金を払うといった感覚が理解できる人はまだ少ないです。例えば若い人の中には、戦闘ゲームで強くなるための強力な武器を購入するだけでなく、戦闘用に気に入った服を購入する人も少なからずいると聞きます。このあたりは、生まれたときからネットが身近にあったデジタルネーティブとシニア世代とでは感覚がだいぶ違うと思います。

上西

メタバースをビジネスに活用するのは時期尚早という感じでしょうか。

特定の分野に関してはニーズがあると思います。例えば観光旅行です。コロナ禍でなかなか旅行に行けないという状況ではありますが、仮にコロナが収束したとしても、雲海を空から見るといったことはなかなかできないでしょう。メタバースの世界であれば、ドローンで撮影した映像などを活用して普段なかなか見られないような光景を見ることもできます。世界の秘境を巡るといった体験もできるでしょう。ここで大事なのは、メタバースの世界は決して現実のリアルな世界の代替ではないことです。観光旅行であっても、これまでにない新しい価値観からスタートしていくのではないかと思います。このほか、教育や医療などの分野でも新しいメタバースを利用した新しいサービスが創出できそうです。

上西

現実とは違う世界ということですね。まさにメタ(超越した)バース(宇宙)ですね。

テレワークがいい例だと思います。恐らく、リアルな世界しか信じない人にとっては、テレワークが行われているという現象をいまだに理解できないでしょう。なお、テレワークはリアルの世界を代替することはできません。いくら画質を高めても、回線の速度を上げても、対面で会話しているのと同じにはなりません。それでも、テレワークにはリアルとは異なるさまざまなメリットがあります。新しい技術とはそういうものだと私は思います。メタバースもきっと、新しい技術として成長していくでしょう。

上西

市場の拡大にともなって、関連する法律なども整備されていくのでしょうか。2018年に米国で公開された映画に「レディ・プレイヤー1」という作品があります。監督はスティーヴン・スピルバーグです。近未来では世界が荒廃し、人類はVR世界に逃避しているのですが、VRの世界では人はアバターに姿を変えるので、本当はそれが誰なのかはわかりません。それはそれで課題もあると思います。VRの世界で買ったブランド品のバッグは本物なのかという問題もあります。

NFT(非代替性トークン)などを活用した信ぴょう性の保証などのニーズも高まってくるでしょう。当社自身が洋服や絵を売ったりすることは今のところ考えていませんが、NFTを利用できるプラットフォームの構築やメタバース内でのコンテンツ制作支援といった仕事は今後出てくるかもしれませんね。さらには、メタバース内でのビジネスをどう創出するかといったコンサルティングなども私たちの仕事になるかもしれません。

若い人たちには、好きなことを見つけて追及してほしい

上西

メタバースだけでなく、今後はますますデータが大事になると思います。私はエッセイの結びに、2050年の未来の社会では「データが湧く場所が大事である。石油の一滴は血の一滴から1ギガが血の一滴になった。」と書きました。「石油の一滴は血の一滴」は第一次世界大戦中にフランスのクレマンソー首相が言った言葉だそうです。これからは、データを持っている者が強く、持たざる者が弱いという時代になっていくように思います。先ほど柳さんが中国の話をされましたが、中国なら個人情報保護などを考慮せずに自由に国民の行動データなどを入手できます。そうすると自動運転車やAIの開発でも、日本は遅れを取ってしまうように思います。

データの重要性が増してくるのはその通りですが、最近ではGAFA(グーグル、アップル、旧フェイスブック〈現・メタ〉、アップル)など、データを独占しようとする企業に対する風当たりが強くなっています。私は、この傾向は正しいと思っています。というのも、データが他の資産と異なるのは、共有しても減らないことです。非常に面白い資産なのです。石油なら取り合いになりますが、データはお互いに見せ合って、一緒に利用できます。これからはこの「データの民主化」を進めていくべきだと思います。データを利用するけれど、お互いでうまく融通し、共有し合いながら、次の世界の製品なりを作っていくという方向に行くべきです。もちろんこれは1社だけではできません。データの所有権は各社がしっかり持ちながら、クラウドなどで情報を共有し、やり取りする仕組みを作っていく。一社独占型のGAFAでなくてもできることがたくさんあると思います。その価値に、日本の企業は気付いてほしいですね。

上西

僕は、GAFAのような企業がもっと日本で生まれてもいいのではないかと思っています。ご指摘のように、いろいろと問題もあるけれども、彼らはこれまでになかった新しいことに挑戦していますよね。そのような企業がたくさん出てくれば、新しい風も吹くし、若者の雇用にも貢献すると思います。ただ、僕自身としてはやはり、ハード寄りのモノづくりがやりたいのですが。

ハードとソフトの組み合わせは日本企業も強みを発揮できると思います。例えば災害救助の現場で活躍するロボットです。今でも、報道などを見ると、災害の現場では人や犬が自らを危険にさらしながら活動しています。そこでAIを搭載したロボットがあれば、危険な現場でも迅速に救助作業が行えると思います。人手不足が課題となっている介護・福祉の現場なども同様ですね。政府もこのような分野にもっと投資をしてもいいのではないでしょうか。今回、懸賞エッセイコンテストを実施し、応募作品を読ませていただいて、若い人たちの発想力に感心しました。これからを担う日本の若者に大いに期待しています。当社の社員にもよく、好きなことを見つけて追及してほしいと言っています。残念ながら日本ではまだ、大きい組織で上の指示に従っていればなんとかなると思っている人も少なくありません。2050年に活躍する方たちにはぜひ、目的意識、そして夢を持って、挑戦してほしいですね。上西さんも夢の実現に向け、頑張ってください。

上西

はい。ありがとうございます。

※ 対談は十分な距離を保ち、パーテーション設営など新型コロナ対策を徹底した上でマスク着用にて実施しました。

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