皆さま、新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
黄色と黒
今年も色の話から始めましょう。今年の干支にちなんで、「黄色×黒」です。
危険を知らせる色
黄色と黒の組み合わせは、非常に鮮明なコントラストになり、警告色と呼ばれます。黄色は有彩色の中で最も明るい色である一方、黒は最も暗い色なので、黄色が一層目立つのです。このため、黄色×黒は、踏切や工事現場の看板などで、危険を知らせるために使われます。
試しに、単独では目立つ赤やオレンジと黒を組み合わせても、さほど目立ちませんね。
また、自然界では、今年の干支である虎のほか、スズメバチ、蜘蛛など、強くて怖い生き物が「黄色×黒」の表皮をまとっています。このことも、「黄色×黒=リスク」というイメージを定着させているのだと思います。
虎と格言
虎は、様々な格言に登場します。「虎穴に入らずんば虎児を得ず」「虎の尾を踏む」など。ここでの虎は、「強いもの」「怖いもの」の象徴として使われます。同時に、虎は子供のために「千里往き千里還る」とされるように、子供を大切にすることでも知られています。強さと子煩悩、このギャップが面白いですね。
釜石の虎舞
虎といえば、故郷釜石のお祭りで見た虎舞を思い出します。「虎はどこだ、あー おっせー おっせー」という威勢良い掛け声と笛や鐘に合わせ、虎が勇ましく躍ります。踊りの途中、虎は笹をくわえて震えます(写真1)。「笹喰み」(ささばみ)という舞い方で、荒ぶる虎を表すものとされます。
パンダは笹を食べますが、なぜここでは虎と笹の取り合わせなのか?調べてみると、近松門左衛門作の人形浄瑠璃「国姓爺合戦」がルーツと言われています。国姓爺合戦には、中国人の父と日本人の母をもつ和藤内という人物が、中国の竹林で遭遇した虎を退治するシーンがあります。三陸の豪商が、江戸時代にそれを観劇して感動し、漁業の安全と豊漁を願うために地元に伝えたと言われています。確かに釜石祭りでの虎舞は、船に乗って海に出ていきます(写真2)。ルーツの「国姓爺合戦」にはないシーンですが、漁業が盛んな釜石にあわせてアレンジされたのでしょう。とても勇壮なエンディングです。
私がこの虎舞に教えられることは、伝統を継承することの重要性と、その本質を捉え、時代や風土に合わせてアレンジすることの必要性です。そのようなアレンジがないと、いずれ継承されなくなるリスクがあると思うからです。
おかげ様で創立30周年
弊社は昨年4月、創立30年を迎えました。それを契機に、「2050年の未来の社会/新しいカタチ」というテーマで、16~30歳の方々から懸賞エッセイを募集したところ、多くの秀作が寄せられました。本当にありがとうございました(受賞者は昨年11月4日に、弊社HPのお知らせで公表済み)。
私は寄せられたエッセイにインスパイアされて、未来の虎舞を想像してみました。考えついたのは虎型ロボット(図1)。これを「タイガーBee」と名付けました。現在のスマートスピーカー(PC+スマホ+カメラ)に収納と歩行・飛行機能を加えたようなもので、魔法瓶くらいの大きさです。
タイガーBeeは、音声入力のスマートPCとして機能するほか、様々なことができます。
① ダンスモード
自分で虎舞囃子の音楽を流し、足のモーターと背中の4枚羽を使って虎舞などのダンスを踊ることができます。虎舞中はデイスプレイに笹が表示されます。虎舞は地元の人々に代々伝承されていくと思いますが、故郷を離れていても、タイガーBeeの虎舞で元気をもらうことができます。
② Beeモード
太陽電池とスズメバチ型の4枚羽を備え、自力で飛行します。タイガーBee自体がPCで、収納もできるので、所有者はPCが入った重いリュックを背負う必要はありません。タイガーBeeが浮遊して所有者についてきます。暗い夜道を照らしたり、道案内もできます。Beeモードは、弊社懸賞エッセイで優秀賞に輝いた水上力さん著「ドローンの私的利活用ともたらされる情報社会」からもイメージを頂きました。
③ 邪気吸引モード
背中の中心には強力で細密な吸引機が格納されており、それが回転してウイルスを吸い込み無力化することができます(図2)。吸引機の図柄は、立命館大学・北岡明佳博士の「蛇の回転錯視」を参考に、モノクロで描きました。
釜石の虎舞とタイガーBee、いかがでしたでしょうか?昨年まではコロナ禍で虎舞を披露する機会が減っていたそうですが、今年は寅年。コロナ対策を続けながら、全国各地の虎舞が多くの方々にリアルに披露され、演じる方々も観る方々も一層輝いて健康になる年でありますように。
おわりに
「虎は千里往き千里還る」と言われます。この格言は空間的な比喩ですが、時間的な意味でもこの虎の格言のようになりたいものです。現在の情報・技術から未来の社会経済の姿を描き、そこからバックキャスティングして、クライアントの皆さまの課題に対するソリューションを提供する。弊社は、創業30年を契機に、今後ともそのようなコンサルティングを強化していく所存です。
本年もよろしくお願い申し上げます。