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2018年9月27日

「第2回 再生医療に関する社会意識調査」 再生医療に用いるヒト細胞流通のカギはドナー選定と提供条件の緩和
ヒト細胞提供への好意的な反応は前回調査(2016年度)より上昇傾向

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「再生医療に関する社会意識調査」調査結果

目次


調査概要

  • ⑴ 調査対象:20代以上の登録者
  • ⑵ 調査方法:非公開型インターネットアンケート
  • ⑶ 調査期間:2018年3月20日~3月26日
  • ⑷ 有効回答者数:1078人
  • ⑸ 回答者の年代
    • 【年代1】14歳以下
    • 【年代2】15~19歳
    • 【年代3】20~24歳
    • 【年代4】25~29歳
    • 【年代5】30~34歳
    • 【年代6】35~39歳
    • 【年代7】40~44歳
    • 【年代8】45~49歳
    • 【年代9】50~54歳
    • 【年代10】55~59歳
    • 【年代11】60~64歳
    • 【年代12】65~69歳
    • 【年代13】70歳以上

【調査結果の見方】

本調査においては各年代につき同数の標本を収集しており、実際の人口比率と異なる集団となっている。そのため、得られた回答内容に対して、2015年度国勢調査における人口比率に照らし合わせたウェイトバック集計をかけ、分析を実施している。なお、特に断りの無い限り全ての調査結果についてウェイトバック集計を行っている。

【補足】

(*1) NTT コム リサーチ
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が提供する、高品質で付加価値の高いインターネットリサーチ・サービスである。自社保有パネルとしては国内最大級のモニター基盤(2018年9月現在 217万会員)を保有するとともに、「モニターの品質」「調査票の品質」「アンケートシステムの品質」「回答結果の品質」の4つを柱とした「クオリティポリシー」に基づく徹底した品質確保を行い、信頼性の高い調査結果を提供するインターネットリサーチとして、多くの企業・団体に利用されている。


調査結果

1. 再生医療に関する認識

1.1. 再生医療に関する用語の認知度について

 下図に再生医療に関する用語の認知度を示した。2012年の京都大学の山中伸弥教授のノーベル医学・生理学賞の受賞により再生医療に関する報道が多くなされるようになったこともあり、「再生医療」について「専門知識がある」、「自分でネットなどで情報収集を行うなど、内容まで知っている」、「テレビや新聞などで見聞きしたことはあるが、内容までは知らない」をあわせると82.1%が少なくとも「再生医療」について聞いたことがあると回答しており、昨年度調査の80.7%からわずかではあるが増加していた。また受賞の決め手となった「iPS細胞」では86.6%が少なくとも聞いたことがあると回答しており、再生医療に関する用語の認知度としては最も高かった。

設問:次に挙げられる言葉に関して、どの程度知っていましたか(単回答)
設問:次に挙げられる言葉に関して、どの程度知っていましたか(単回答) 拡大

1.2. 再生医療の治療としての選択度について

 次いで、自身が患者になった時、再生医療を治療として選択するかどうかについて聞いた。医薬品や医療機器などの従来治療法が「ある場合」は70.8%、従来治療法が「ない場合」は74.4%が、再生医療を「積極的に選択する」、「医師の説明に納得すれば受ける」、「各種情報を自分で確かめて納得すれば受ける」のいずれかを選択しており、昨年度調査と同程度の数値であった。
 また、従来の治療法が「ある場合」と「ない場合」の両方で、「医師の説明に納得すれば受ける」と「各種情報を自分で確かめて納得すれば受ける」を合計すると50%以上となり、昨年度調査と大きな変化はなかった。「納得することができる情報が提供される」ことを条件に再生医療を選択する人が増えることから、患者に対する適切な情報提供が重要であると考えられる。
 本レポート中では示さないが、再生医療に関する情報をどのような方法で入手しているのかについて聞いた設問では、主に「テレビ番組」、「新聞記事」、「インターネット、SNS」から情報を入手しているという回答を得られている。また、「再生医療に関する情報が得られない」という回答も27.5%存在した。これらの結果より、病気にかかり治療法の選択を迫られた状態で冷静な判断を下すためにも、普段から再生医療に関する適切な情報提供がなされている必要性があると考えられる。

設問:ご自身が患者になったとご想定ください。再生医療を用いた治療法を選択しますか(単回答)
設問:ご自身が患者になったとご想定ください。再生医療を用いた治療法を選択しますか(単回答) 拡大

1.3. 再生医療を実施するための細胞提供への協力について

再生医療を医療として実現するためには、患者に治療として提供される生きた細胞を調達することが必要である。また、安全で高品質の再生医療を実現するためには、アカデミアや企業におけるヒトの細胞を使った安全性や有効性に関する研究開発が必須である。以上のように再生医療を実現するためには、生きた細胞を提供するドナー(提供者)の存在が必要不可欠であるものの、ドナー(提供者)を効率的に確保する施策について、現時点で有効な方法は確立されていない。
 今回の調査では、「治療目的」、「研究目的」のいずれの場合においても全体の60%程度が「細胞を提供してもよい」という回答が得られており、細胞を提供可能なドナー候補者は多数存在していることが分かった。経年変化をみると、今回の調査では「治療目的で使用する場合に提供してもよい」という回答が全体の61.5%、昨年度調査の56.9%から4.6ポイント増加していた。一方、「研究目的で使用する場合に提供してもよい」という回答が63.7%を示し、昨年度調査の59.3%から4.4ポイント増加していた。2017年にも再生医療やiPS細胞の研究開発の進展に関するニュースや記事が掲載されたことが理由と考えられる。

設問:提供した組織や細胞の利用の在り方について、提供に協力して良いと考えますか。(単回答)
設問:提供した組織や細胞の利用の在り方について、提供に協力して良いと考えますか。(単回答) 拡大

2. 再生医療治療に好意的な回答者の背景

2.1. 献血の経験と再生医療治療の選択との関係性

 治療としての再生医療の選択度について、どのような属性が再生医療の選択度に影響を及ぼしているのか調査を行った。その結果、複数回献血した経験がある場合、献血した経験が無い場合に比べて約20%程度、再生医療治療を選択する割合が増加しており、昨年度の調査と同様の傾向を示した。献血とは、自らの血液細胞を他人に対して提供するdonation(ドナー)行為であり、献血に対する親和性が高い場合は、再生医療の選択度が高くなる傾向があるものと考えられる。

設問:献血の経験と再生医療の選択性との関係(単回答)
設問:献血の経験と再生医療の選択性との関係(単回答) 拡大

2.2. 自分や家族が重病を得た経験と再生医療治療の選択との関係性

 同様に自分や家族、またはその両方が重病にかかった経験がある場合は、無い場合に比べて20%程度多く、再生医療治療を選択する割合が増加し、昨年度の調査と同様の傾向を示した。重病経験を通じて、輸血(他人の血液を受け入れる)などを経験することで再生医療の選択度が高くなる傾向があるものと考えられる。

設問:重病経験と再生医療の選択性との関係(単回答)
設問:重病経験と再生医療の選択性との関係(単回答) 拡大

2.3. 身体の一部の保管と再生医療治療の選択との関係性

 古くから日本では身体の一部を保管しておく習慣が存在している。代表的なものとして「乳歯や抜歯した歯」、「へその緒」、「乳幼児期の毛髪」などがある。これら身体の一部を保管している場合は、保管していない場合と比べて、約20%程度多く、再生医療治療を選択する割合が増加することが分かった。経年変化をみると、昨年度調査では保管している場合は、保管していない場合と比べて、約10%程度多く、本年度はその差が広がっている傾向があった。
 身体から切り離されても身体の一部として大切に扱う考え方が、生きた細胞を用いる再生医療の選択度に影響を与えていると考えられる。

設問:身体の一部保管の有無と再生医療の選択性との関係(単回答)
設問:身体の一部保管の有無と再生医療の選択性との関係(単回答) 拡大

3. 再生医療の実施のための細胞提供に好意的な回答者の背景

3.1. 献血の経験と細胞提供への協力度の関係性

 2.再生医療治療に好意的な回答者の背景では治療としての再生医療の選択度と属性(献血経験など)との関係性についての結果を示した。ここで再生医療を実するために必要な細胞提供の意向と属性との関係性についての調査結果を示す。
 献血経験と再生医療を実施するための細胞提供との関係性について、「治療目的」、「研究目的」いずれの場合も、献血回数が多くなるほど細胞提供に協力できると回答する割合が増加し、昨年度の調査と同様の傾向を示した。献血とは、自らの「血液細胞」を提供することであるため、献血に対する親和性と細胞提供に対する親和性には相関があることが想定される。
 細胞のドナー(提供者)を効率的に募集するために、献血の複数回経験者を対象としたリクルーティング活動が有効である可能性を示していると考えられる。

設問:献血の経験と細胞提供の関係(単回答)
設問:献血の経験と細胞提供の関係(単回答) 拡大

3.2. 自分や家族が重病を得た経験と細胞提供への協力度の関係性

 次いで、自分や家族の重病経験の有無と再生医療を実施するための細胞提供との関係性について、「治療目的」、「研究目的」いずれの場合も、重病経験がある場合のほうが、細胞提供に協力できると回答する割合が増加することが分かった。この結果は昨年度の調査と同様の傾向であった。

設問:重病経験の有無と細胞提供の関係(単回答)
設問:重病経験の有無と細胞提供の関係(単回答) 拡大

3.3. 身体の一部の保管と細胞提供への協力度との関係性

 次いで、身体の一部の保管の有無と細胞提供への協力度との関係性について調査した。「治療目的」、「研究目的」いずれの場合も、身体の一部を保管しているほうが、細胞提供に協力できると回答する割合が増加することが分かった。この結果は昨年度の調査と同様の傾向であった。身体の一部としては2.3と同様に、「乳歯や抜歯した歯」、「へその緒」、「乳幼児期の毛髪」を想定した。

設問:身体の一部の保管の有無と細胞提供の関係(単回答)
設問:身体の一部の保管の有無と細胞提供の関係(単回答) 拡大

4. 細胞提供の条件について

4.1. 細胞提供についての条件の重要度について

 細胞提供の可否の意思決定に及ぼす影響度について、「細胞提供時の移動の手間(訪問が必要なことの影響)」、「侵襲の度合い(侵襲性の影響)」や「採取細胞の利用範囲(他人が全てを使用してしまうことの影響)」という3つの提供条件で、影響度合いを聞いた。採取にあたって追加的に訪問する必要があることを重視する回答者が最も多く、50%以上が「おおいに影響がある」、「少し影響がある」を選択した。経年的にみると、「採取細胞の利用範囲(他人が全てを使用してしまうことの影響)」では36.5%が「おおいに影響がある」、「少し影響がある」を選択したが、昨年度調査の40.3%から3.8ポイント減少していた。

設問:細胞提供の条件と意思決定に及ぼす影響(単回答)
設問:細胞提供の条件と意思決定に及ぼす影響(単回答) 拡大

5. 細胞提供を促進するための工夫について

5.1. 細胞提供しない理由について

 「治療目的」、「研究目的」それぞれについて、細胞を提供したくないとした回答者がなぜ細胞を提供したくないと回答したのかについて理由を聞いた。その結果、「治療目的」、「研究目的」いずれの場合においても、「積極的に提供する理由がないから」に次いで、「使われ方などが不明であり、不安を感じるから」が多かった。「治療目的」では26.2%、「研究目的」では26.4%が「不安」を回答として挙げている。この結果は昨年度の調査と同様の傾向であった。

設問:細胞提供をしたくない理由(単回答)
設問:細胞提供をしたくない理由(単回答) 拡大

5.2. 採取・取扱機関による不安の払しょくについて

 細胞を提供する際に、提供した組織や細胞を取り扱ったり、もしくは提供に際して相談やドナー(提供者)登録を行う機関としてどのような機関であれば安心なのか聞いた。病院または公的機関が実施することで安心できるという回答が多く、「病院」が45.9%、「公的機関」が44.6%となっており、昨年度の調査と同様の傾向であった。「病院」、「公的機関」が説明・採取・取り扱うことで安心感が高まることが期待される。

設問:提供細胞の取り扱い、相談・登録機関として安心できるもの(単回答)
設問:提供細胞の取り扱い、相談・登録機関として安心できるもの(単回答) 拡大