- リスク性商品の購入経験者は全体の約4割にとどまる
株式や投資信託等のリスク性商品※をこれまでに購入した経験があるかどうか確認したところ、購入経験率は全体の42.7%にとどまり、半数以上の個人がリスク性商品を未だ購入したことがないという結果となった。【図1】
なぜリスク性商品を購入しないのか、その理由を尋ねたところ、「購入するための余裕資金が少ない」が48.0%で最も高く、次に「リスクを取ってまで資産運用する必要がない」(39.5%)、「商品が難しくてよくわからない」(37.6%)が続いた。【図6】
※リスク性商品 : |
価格変動や為替等の諸要因により、リターンに変動の可能性がある商品。
本調査では、具体的に以下の金融商品をリスク性商品と定義した。
外貨預金・外貨MMF/社債/外国債/国内投資信託/海外投資信託/国内株式/
FX(外国為替証拠金取引)/コモディティ(原油、穀物、金 等)/
投資型保険(個人年金保険、変額年金保険 等)/その他リスク性商品 |
- 全般的に金融理論は理解しているが、行動が伴わない傾向
金融リテラシーの要素として考えられる「金融理論」、「商品知識」、「取引行動」について回答者の理解度合や実践度合を評価したところ、「金融理論」が最も高く(58.3%が「理解している」と回答)、続いて「商品知識」(42.2%)、「取引行動」(37.8%)という結果となった。【図8】
3要素の中で最も評価が低い「取引行動」の内訳を見ると、「商品を売買する際には、売買の判断に必要となる情報を収集する」の実践度は高い(52.8%)一方、「ポートフォリオの組換えや売買のタイミングを適切に判断する」、「金融機関の商品・サービスを定期的に確認・比較する」の実践度が低く、それぞれ21.2%、29.9%という結果となった。【図11】
- 高リテラシー層は、必要な情報を主体的に収集し、用途に応じて金融機関を使い分ける
「金融理論」、「商品知識」、「取引行動」の3要素を元に、一定の前提に基づき金融リテラシーのレベルを3段階に設定※したところ、高リテラシー層(12.7%)、中リテラシー層(29.4%)、低リテラシー層(58.0%)という分布となった。【図12】
各リテラシーレベルにおける属性面・行動面等の特徴は以下の通りとなった。
[高リテラシー層] |
運用関心が最も高く(83.7%が関心あり)、金融資産額も最も多い(平均1,912万円)。インターネット(66.7%)、新聞・雑誌(59.3%)、テレビ・ラジオ(34.3%)等、様々なソースから情報収集している。用途に応じて金融機関を使い分ける人が多く(64.3%が使い分け)、決済では都市銀行・地方銀行(65.9%)、資産形成では証券会社(31.0%)が利用されている。 |
[中リテラシー層] |
50歳以上が中心(47.5%)で、金融資産額は比較的多い(平均1,492万円)。約半数(54.2%)が金融機関を使い分けており、決済では都市銀行・地方銀行(65.9%)が、資産形成では都市銀行・地方銀行(40.1%)、インターネット専業銀行(9.7%)が利用されている。 |
[低リテラシー層] |
主婦層が中心(31.0%)で、金融資産額は高・中リテラシー層と比べるとかなり少なく(平均679万円)、運用関心も低い(65.3%が関心なし)。あらゆる取引を一つの金融機関で行う傾向が強く(63.6%が同一)、主に地方銀行(決済:24.2%、資産形成:17.3%)、ゆうちょ銀行(決済:16.3%、資産形成:19.5%)が利用されている。 |
※ 金融リテラシーのレベル設定方法については、調査概要の補足(*3) を参照。
- 低リテラシー層の多くは、資産の大部分を単一のリスク性商品で運用
リスク性商品保有者における「資産全体に占めるリスク性資産の割合」※を見たところ、「30%以下」は53.6%、「40~60%」は30.4%、「70%以上」は16.0%となった。【図25】
これを金融リテラシー別で比較してみると、低リテラシー層は資産全体に占めるリスク性資産の割合が相対的に高く、資産の70%以上をリスク性資産で運用する割合が20.0%を占めている(中リテラシー、高リテラシー層における、資産の70%以上をリスク性資産で運用する割合は、それぞれ13.9%、16.0%)。【図26】
一方、低リテラシー層のリスク性商品の保有種類は平均1.7商品、また保有するリスク性商品を1種類のみとする割合が半数超(60.0%)を占めるなど、特定のリスク性商品に集中する傾向がうかがえる。(中リテラシー、高リテラシー層における保有リスク性商品数は、それぞれ2.1商品、2.5商品)。【図27】
高リテラシー層は安全資産を含めた多様な商品に分散したポートフォリオを組む一方、低リテラシー層は、資産の大部分を少ない種類のリスク性商品で運用する、偏ったポートフォリオを組む傾向にあることがわかった。
※ 一の位を四捨五入した値で回答
- 低リテラシー層のリスク性商品購入経験者のうち、3人に1人は内容を理解せずにリスク性商品を購入
各リスク性商品の購入経験者が、当該商品についてどの程度内容を理解しているのかを確認したところ、商品ごとの理解率は、外貨預金・外貨MMF(86.4%)、投資信託(86.4%)、株式(94.0%)、国債・公社債(90.4%)という結果となった。この点、取引経験者の大部分は、当該取引をきっかけに商品に関する知識を習得していると推察される。【図29】
しかしながら、金融リテラシー別で比較してみると、高リテラシー層、中リテラシー層の理解率は平均99.0%、97.2%であるのに対し、低リテラシー層の理解率は67.1%にとどまり、3人に1人は内容を理解せずにリスク性商品を購入していることがわかった。【図30】
- 高リテラシー層は今後も運用継続、低リテラシー層は今後運用を中止する傾向
2005年~2010年に資産運用を行っていた人の運用成績は、世界的な金融危機の影響を受けたことにより、プラスの成績を収めたのは全体のわずか14.2%で、平均ではマイナス19.7%という結果となった。
リテラシー別の平均運用成績は、いずれもマイナス15%以上であり、特に30%以上の損失が発生した人の割合は、高リテラシー層:32.3%、中リテラシー層:33.5%、低リテラシー層:34.1%で大差なく、リテラシーの高低に関係なく同程度の損失が発生している結果となった。【図31】
今後の資産運用意向について、高リテラシー層は18.2%が「今後リスク性資産を増やす」と回答しているのに対し、低リテラシー層は「今後リスク性資産を増やす」意向が6.6%にとどまり、逆に18.7%が「これ以上損失を出したくないため、リスク性資産を減らす」と回答、今後の資産運用意向は、リテラシーレベルにより幾分異なる結果となった。【図32】